It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

北のカナリアたち

古風な味わい 感動呼ぶ力作

日本最後の秘境と呼ばれる利尻・礼文島でロケした話題作。原作は湊かなえの「往復書簡」で、阪本順治が監督している。

かつて北海道の離島で小学校教師をしていた川島はる(吉永小百合)。今は図書館司書をしているが、分校の教え子6人のうちの1人が殺人事件の容疑者となっていることを聞く。はるは真相を知るため、教え子たちを訪ね歩いていく。

歌がうまかった教え子たち。だが、いつしか「歌を忘れたカナリア」になっていた。それはなぜなのか。大事なものを救えなかった思い。その心の闇を、はる自身を含む個々人が抱えている。その暗い心が体感温度マイナス30度の北国の寒風になぶられていく。

冬をとらえた木村大作の撮影がいい。一転して花咲き誇る夏もよく、そこで歌われる子供たちの合唱が胸に響く。「二十四の瞳」や「舞踏会の手帖」をほうふつさせる古風な味わいが感動を呼ぶ力作である。(2012年11月22日・小野)

TOP