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シネマ1987online

ドリーム

女性たちの謙虚な闘い

1960年代の米ソ冷戦下、熾烈(しれつ)な宇宙開発競争で後れを取ったアメリカの有人飛行計画を人知れず支え、多大な功績を残した黒人女性の活躍を描く。

計算手として集められたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー(オクタビア・スペンサー)、メアリー(ジャネール・モネイ)は人種差別や男女の偏見を類いまれな能力と粘り強さで打ち破りながら、次第に時代のルールに変革を起こしていく。理不尽な慣習に対して激高するのではなく、知と理で立ち向かう女性たちの謙虚な闘いが、壮大な宇宙計画を背景に勝利するさまは爽快だ。

言葉で差別を否定しても、染み付いた考えは簡単には変わらない。ドロシーがトイレで白人女性に投げるセリフがそれを明確に物語る。メアリーが白人専用の学校に入るため裁判所へ請願するシーンで、「自分は前例を作り後世に示したい」という強い意志のセリフは感動的だ。暗黒の時代に灯をともしていった多くの先人たちの思いは実を結んだのか。問いかけながら映画は、ソウル音楽に乗って軽快に進む。

ケビン・コスナーほか、脇を固める実力派の存在も大きい。監督はセオドア・メルフィ。(2017年11月23日・杉尾久)

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