It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

新キャラクターの真希波・マリ・イラストリアスがヱヴァ仮設5号機で第3使徒と戦うオープニングを見て、これは完全新作かと思ったが、見終わってみれば、テレビシリーズをスケールアップさせた語り直しという印象に収まる。「序」を作る際に語られたリビルドという言葉が今回はなく、スタッフは「破」について(既存の物語の)「破壊」を意図したそうだけれど、細部は変わっていても大筋は変わらないのでそれほど破壊された印象はないのだ。その印象は主にクライマックスが第19話「男の戦い」になっていることから来る。

テレビシリーズを見ていてショックを受けた「男の戦い」は、「ウォーン」と吠えながら使徒をガツガツとむさぼり食うヱヴァ初号機の姿と、装甲ではなく拘束具というヱヴァの驚くべき秘密が明かされる。このショックはそのままヱヴァ全体のイメージにつながった。「男の戦い」は名作という評価が定まっているそうだが、その通りだと思う。

第8話から19話までを映画化した「破」はクライマックスにこのショッキングなシーンを据え、そこをテレビシリーズからスケールアップすることで、成立している。正直に言えば、そこに至るまでの構成の単調さと、この展開を描くなら、別の語り口があったはずという思いは見ていて消えず、評判ほどの傑作とは思えなかった。しかし、個人的に20話以降を主に物理的な理由で見ていない(最後の2話を除く)ので、次の「急」ならぬ「Q」への期待は高まった。

驚いたのは突然、「太陽を盗んだ男」のテーマが流れたこと。シンジやアスカや綾波の日常を描くシーンに流れるこの音楽は絵コンテとイメージボードを担当した樋口真嗣の趣味なのだという。他の「365歩のマーチ」や「今日の日はさようなら」「翼をください」「恋の季節」「ふりむかないで」という60年代から70年代にかけての歌の数々は庵野秀明の趣味なのか。ついでにミサトの携帯の着信音が「ウルトラマン」の科学特捜隊の無線着信音と同じなのも庵野の趣味なのだろう。「今日の日はさようなら」と「翼をください」は使い方としては戦闘シーンの意味に妙に合いすぎている気がしてそれほど感心しなかった。

感心はしなかったのだけれど、どうもこういう音楽の使い方に触れると、同世代感というのがむくむくと頭をもたげてしまう。僕がヱヴァに惹かれるのはウルトラマンや怪獣映画に熱中した同世代が作っている作品という部分を感じるからかもしれない。すごく感心する部分はないのだけれど、ほほえましさを感じてしまう。「Q」のタイトルも「ウルトラQ」から来ているのではと勘ぐりたくなるのだ。

ところで、「破」を見る前に「序」をDVDで見ていて思ったのは第3新東京市のビルが生えてくる描写はアレックス・プロヤス「ダークシティ」(1998年)に影響を与えているのではないかということ。「ダークシティ」は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の影響が顕著だったが、プロヤスはSF好きなので、ヱヴァの影響もあり得るかもしれない。

TOP