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2001年1月号

2000年12月7日 ファロスにて
 出席者:加賀 鬼束 笹原  川越 矢野 杉尾 (書記)酒井

2回目の書記をやりました。今回は7名の参加がありました。対象作品は、3本で熱 のこもった合評会レポートをお送りしたいと思います。

スペース・カウボーイ

【データ】2000年 アメリカ 2時間10分
監督:クリント・イーストウッド 脚本:ケン・カウフマン ハワード・クラウスナー 撮影:ジャック・N・グリーン 音楽:レニー・ニーハウス 視覚効果監修:マイケル・オーウェンズ
出演:クリント・イーストウッド トミー・リー・ジョーンズ ドナルド・サザーランド ジェームズ・ガーナー ジェイムズ・クロムウェル

参加者の内、鬼束、笹原、矢野、杉尾、酒井の5人が見ていました。映画の前半と後半で、評価が分かれました。後半の宇宙に出てからは、だいたい好評だったようでが、前半の昔の仲間集めと宇宙に行くためのトレーニングの部分は評価が分かれました。

笹原 大体僕は、イーストウッドの映画は好きではないです。良かったのは、「マジソン郡の橋」ぐらい。前回のイーストウッドの「ツルー・クライム」はひどかった。だから、あまり期待はしていなかった。映画の前半は、あまり良くなかった。しかし後半の宇宙のシーンは良かったです。イーストウッドは、この宇宙のシーンをやりたかったのではないでしょうか。特に核弾頭を見つけたところで「こんな物があったよ」と叫ぶシーンと、月でのシーンは印象的でした。まずまずの合格点です。

鬼束 爺さん4人が宇宙に行けるわけがない。もっと訓練をしないと説得力が乏しい。2回寝てしまった。しかし、特撮は、迫力がありました。とても72歳の監督とは思えない。役場の日高さんが観て「ものすごく良かったよ」と誉めていたので、もう1回観てきました。やっぱり、前半が眠たかった。トミー・リー・ジョーンズが犠牲になる理由がわからない。結論としてダメです。

矢野 4人の老人たちが面白かったです。検査でパスするはずがないのに、宇宙にいかせるところが面白い。途中、若い人が気絶したりして、若い者はダメなのに爺さんががんばったなと言う印象です。全体に良かったですよ。

杉尾 今日観てきました。オープニングから良かったです。話に吸い込まれました。現代になって、4人そろってNASAを歩いている所がカッコ良かったです。いかにもアメリカ的です。とらぶったとき、イーストウッドが「俺が残る」と言わなかったのは何故なんでしょう。トミー・リー・ジョーンズが最後に月に行ってどうだったのかしら。

酒井 前半と後半で映画の作りが違うので2本分楽しめました。前半のシーンは、明らかに「ライト・スタッフ」のパロディーです。すこし荒っぽいような気がしました。後半はサスペンスです。作り方も丁寧でした。アメリカ映画的な楽天性があります。

笹原 前半は、予想どうりで意外性がない。もう少し工夫が必要だったのでは。後半は良かったです。

酒井 核弾頭が出てくるシーンで「ロシアはこんなもの作りやがって」と叫ぶところが、少し鼻につく。アメリカが絶対正しいという態度は好きではない。

杉尾 イースドウッドだけ、腹筋があって鍛えていた。

あと、話は宇宙空間での、引力の話とか、本当にあの状態で月まで飛んでいけるのかとか、話題はつきませんでした。


グリーン・デスティニー

【データ】2000年 中国=アメリカ 2時間 監督:アン・リー 原作:ワン・ドゥルー「臥虎藏龍」 脚色:ジェームズ・シェイマス ワン・ホエリン ツァイ・クォジュン 撮影:ピーター・パオ アクション監督:ユエン・ウーピン 美術・衣装:ティン・イップ 音楽:タン・ドゥン チェロ演奏:ヨーヨー・マ エンドタイトルソング:ココ・リー
出演:チョウ・ユンファ ミシェル・ヨー チャン・ツィイー チャン・チェン ラ ン・シャン チェン・ペイペイ リー・ファーツォン

参加者全員が観ていました。概ね好評だったようです。

鬼束 久しぶりのカンフー映画でした。あれだけふんだんな女性のアクションは初めて観ました。女性の動きは曲線的でカンフーアクションは美しかったです。ユンファの「愛があれば、死んでも魂は寂しくない」というセリフもよかったし、ミシェル・ヨーがチャンに言う「どんな道を歩もうとも自分の心に正直に」も共感を覚えました。滝に登るシーンも、どうやって撮ったのかしらと思いました。さらに、もう一回見に行きました。ワイヤーに頼っているシーンが、いろいろ分かったけれども許せるレベルでした。良かったのでサントラも買いました。

矢野 全体として、自然の美しさというか、竹林のしなやかなしなりとカンフーの動きが美しくて感動しました。原作の一部とのことなので原作を読んでみたいと思いました。男性だけではなくて、女性もカンフーの精神を受け継いでいく所が印象的でした。大好きな映画でした。

杉尾 私も面白かったです(これを2回繰り返した)。動きがものすごくシャープで、動きに魅せられました。女性2人が戦うシーンも動きが早くてワイヤーで吊ってるのも、まったく気にならなかった。屋根や水の上を飛んでいくシーンは中国4000年の歴史を感じさせました。憧れました。「美しくて強い」 この言葉がぴったりです。音楽も良かったです。CDが回って来るかしら(と鬼束さんの方を見る)。

酒井 格調が高い映画でした。東洋的な雰囲気が良かったです。全体に詩的な雰囲気が漂っていました。話は古くさくて、昔の邦画の時代劇にもこんな話があったことを思い出しました。今の日本人ではこんな話で映画は作らないだろうなと言う 感じの作品でした。期待してなかったので好かったです。

加賀 テーマが宝さがしというか、失われた剣を取り戻すという話に惹かれて見に行きました。チョウ・ユンファが主演だけれも、実際はそうではなくて、若い女性と、もう一人のユンファを慕っている女性が主演で、それぞれの生き方の違いがこの映画の主題になっていると思います。良かったです。アクションについては、壁や竹の上に登ったりしたシーンで、ワイヤーアクションが鼻につきましたが、全体的には良かったです。映像がきれいでした。特に印象に残っているのは、竹林の白壁の家の中でユンファと女性が2人で立っていて、大きく切り取った窓の向こうに竹林が見えるのですが、その鮮やかさがすばらしかったです。ラストも良い終わり方でした。

笹原 良い意味で、中国の古典となり得る映画です。監督が「ウエデュング・バンケット」のアン・リーでしたから期待はしたのですが、カンフー映画に少し偏見がありましたので、予想以上に良かったです。最初の方の屋根の戦いが「すごいな」と思いました。チョウ・ユンファが良かったですね。存在感がありました。

加賀 チョウ・ユンファのべん髪は初めてでしたね。

鬼束 カンフー映画のラブストーリーは初めででしょう。カンフー映画の新しい可能性を示しています。

川越 何がおもしろいのか分からない。ぜんぜん面白くない。たしかに、映画は綺麗で、パーツで観ると、良いところもあるが、くそ生意気な馬鹿な小娘の話ではないか。 決して美人でもないし(この点については男性陣から異議あり)。

あと、いろいろと、中国の武芸者の風俗や、映画の出来は良かったのに当たらないのは、宣伝不足とかの話題がでました。


ボーイズ・ドント・クライ

【データ】1999年 アメリカ 1時間59分 20世紀フォックス映画配給 監督:キンバリー・ピアース 脚本:キンバリー・ピアース アンディ・ビーネン 音楽スーパーバイザー:ランドール・ポスター 音楽:ネーサン・ラーソン
出演:ヒラリー・スワンク クロエ・セヴィニー ピーター・サースガード ブレンダン・セクストン三世 アリソン・フォーランド 

この映画を観た感想は、皆さん「ショック」を受けたようです。

加賀 どう評価して良いかわからない。映画は良かったです。1993年の話ですけど、雰囲気が古く感じました。

笹原 ストーリーは知っていました。しかし、字で読んだのと大きく違いました。ヒラリー・スワンクを自分で女だと思い込ませて見てないと分からないぐらい男になってました。クロエ・セヴィニーも存在感がありました。最後は大変ショックでした。こんなショックな映画は久しぶりでした。彼女の描き方は丁寧だったと思います。また、撮影がよく考えていて凝っていたと思います。

鬼束 仕事の後で観ました。性障害の女の子を描いているのですが、あれで死んでしまったのでは、すこし分かりにくいと思います。主人公の長い人生を描く必要があったと思います。少し長く感じました。主人公のキャラクターは強く印象に残っています。

矢野 エレベーターで杉尾さんと合ったのですが、2人とも呆然と重い雰囲気に包まれました。主人公が思いを寄せていた女の子の心が主人公に向いていくところが印象的でした。喜ぶ表情が素晴らしかったと思います。偏見に対してどの様に向かい合っていくか考えさせられました。

杉尾 ショックで何も言えませんでした。おしゃれな映画と思って行きましたので、ギャップが激しかった。偏見に屈せずに生きていく姿に感動しました。映画だから客観的に見ているけれども、自分に降りかかって来た場合どうするかものすごく難しいです。重いそして切ない映画です。見終わって数日間は、一人になるとこの映画の色々なシーンが浮かんできます。それだけ、印象に残っています。

酒井 見終わった後、衝撃で何も言えませんでした。タイトルをみると、「ボーイズ・ドント・クライ」ですよね。ボーイズは複数形なんですよね。主人公は1人ですよね。この映画は、このような環境に置かれているすべての人たちを指して使っているのではないでしょうか。タイトルから想像すると、偏見にも負けずに生きて行こうという希望を込めているのではないかと思ったのだけれども、実際は、偏見に 負けで死ぬしかないという絶望感しかなかった。この作品について、横山さんや鬼束さんは、もう少し主人公の育った境遇から描いた方が良かったと、言っているのですが、たしかにそう思います。この映画に出てくるのは、みんな社会からはみ出した人間(社会的弱者)ばっかりですよね。でも、その中でも、彼(彼女)は受けいられなかった。その点に大きな問題を抱えていると思います。

その後、暗い雰囲気で、皆さんため息をつかながら、議論が続きました。


今月の一本

鬼束 中島みゆき『短編集』 新しいCDです。

加賀 石井ひさいち『女には向かない職業2』 藤原先生の高校時代の話と学校を辞めて小説家になった話

矢野 NHKの番組でタイトルは分からないけど『企業家を育成する大学の話』です。

笹原 『顔』

杉尾 『ハリケーン』 矢野さんのおかげです。デンゼル・ワシントンは熱演でした。

川越 ビデオ版『チャーリーズ・エンジェル』 中学生の頃を思い出した。ファラ・フォーセットはどこへ行ったのかしら。

酒井 中島みゆき『短編集』 こんどの中島みゆきは、「穏やか」という言葉がぴったりのアルバムです。ひさしぶりに良いアルバムです。

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