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2001年9月号

2000年8月2日 アンジュールにて
出席者:加賀 鬼束 笹原 林田 杉尾 (書記)酒井

今回は、この夏のサマームービーから2本「A.I.」と「千と千尋の神隠し」です。2本とも大ヒットを続けております。テープから掘り起こしたのですが、録音レベルが低すぎたために、聞き取りにくい部分がありましたので、適当にアレンジしています。間違っていたらごめんなさい。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

A.I.

参加者の内、鬼束、笹原、杉尾、林田、酒井の5人が見ていました。扱っているテー マが重いために、いままでのスピルバーグの作品のようにいかなかったみたいです。 それにしても、やっぱりオスメントはうまいという点は一致していたようです。

鬼 束 途中で寝てしまいました。それから、退席してもう一度入って見ました。でも、又寝てしまいました。一回なら再入場出来るんですよね(一同感心、誰もそんなことは知らなかった)。でも、少し勇気がいりますけど。映画の内容は良かったですよ。問題は長さです。少し長いかなと思います。ロボットのジャンクパークは、「スター・ウォーズ」シリーズにあったような気がするし、夢のように水中を行く乗り物のシーンは、「マトリックス」で説明があったものをやさしくアレンジしたような気がします。あと、照明の使い方で、ジャンクパークのところも面白いし、異星人へのところで照明を過剰に使って体の線を細く見せたりしています。スピルバーグはやっぱりすごいです。最後のところもわかっているんだけど、涙が出てきました。久しぶりにみて映画は疲れました。あと、オスメント君はうまいですね。

笹 原 母親が最初にインプットしたせいでいつまでたっても母親を追い求めるというところがかわいそうでした。これはロボットの意思ではないですから。見終わってから、むなしい気持ちになりました。その点では、あまり人に薦められません。おもしろいかと聞かれて何とも答えようがないです。映像とかはすばらしいと思いました。特にニューヨークの水没しているシーンなんかはすばらしいです。

杉 尾 会社の友人、2人を誘っていきました。思っていたよりも違って、この作品重くって、なかなか楽しめなかったです。映像は良くできていて、オスメント君の演技が巧すぎてリアリティーがあって、それゆえにテーマが重くのしかかってきて楽しめませんでした。最後はどうやって終わらせるのかなと思ったら、2000年後が出てきて、この部分はそれで完結しているから、全体的にしっくりいってないような気がします。ジャンクショーの部分なんかも目をそむけたかったです。人間の都合で醜いロボットを壊したり、かわいいロボットは助けたりと腹立たしかったです。

林 田 知り合いに、すごく切なくて、重い映画だと聞かされて見に行きました。母親に愛してもらえなかったロボットの話だけれども、今日本で、母親に愛してもらえない子供って増えてるような気がします。そういう子供ってつらいだろうと思います。どうしてあそこで捨てるのか理解できなかったです。もちろん物(ロボット)と思っているからだと思いますけど。自分の子供が死んでいないのにロボットをもらうことも間違っていると思います。公園で捨てられたシーンがないと、後が出来ないのか理解に苦しみます。最後は、つらいのだけどほっとしました。最後は、眠ってしまうというのがよかったと思います。いやなシーンがいっぱいありました。

酒 井 この作品非常に評価が難しいと思います。10年後におそらく今と違う評価になっている可能性が高いと思います。スピルバーグの映画ではこの作品はかなり異色だと思っています。久しぶりにSFに返るので多くの人が、「E.T.」の世界を想像したんですがまったく違っていました。この作品は今までスピルバーグの作品にない、なまめかしさがあったと思います。これをどう見るか、それはこれからスピルバーグが作る作品に注目したいと思います。映像的には、ものすごく印象に残るシーンがありました。たとえば、母親がオスメント君を捨てるシーンは、母親の気持ちが映像を通じて観客が苦しくなるほど伝わってきました。この作品でスピルバーグは、人間の醜い部分を出すことができました。たしかに、すこし、アンバランスで、洗練度が足りないと思いますが、スピルバーグの今後が楽しみです。

鬼 束 ジャンクパークのめちゃくちゃ壊すシーンは「1941」にもあったような気がします。

笹 原 でも、あの作品に不快感はなかった。

杉 尾 オスメント君にインプットした時の表情の変わりようが凄かった。

酒 井 この作品、日本では大ヒットしているけど、アメリカでは4週目で興行成績トップ10から落ちました。その意味では、失敗作でしょうね。

笹 原 リピーターが来る映画ではない。

この作品、話すほどオスメント君の演技のうまさとテーマの暗さが話題になりました。


千と千尋の神隠し

参加者のうち、鬼束、笹原、林田、酒井が熱く語ってくれました。みなさんの評価は概ね好評でした。

鬼 束 今日見ました。人が多くて暑くてうるさくて寝ませんでした。観客がすごく多かったです。良かったですよ。弱気の女の子が、いろいろ体験していくうちに強くなっていく。しかし、最後でも、強気な女の子になりきっていない点が良かったです。今までの作品のオマージュ(この言葉は使いたくないのですが)があって、たとえば僕の好きな真っ黒クロスケが活躍してたり。「生あります」ってのが出てきて「居酒屋ゆうれい」を思い浮かべました。宮崎監督のアニメには、浮遊感(ふわふわしてるところ)があるんですが、それがこの作品には無かったです。龍が飛んでいるところもしっかり飛んでいた。それで疾走感が出ていたと思います。龍になったハクに千が乗っているシーンは、まんが「日本昔話」のタイトルと「ネバーエンディング・ストーリー」を思い出しました。

林 田 私は、アニメというものをどこまで理解しているかわからないのですが(と断ってから)、でも、宮崎駿の作品は、ビデオでほとんど見てますけど。今回の作品はすごく面白かったです。どこがおもしろいかはっきりと理由はいえないのですが、おもしろい、おもしろいで最後までいってしまいました。お湯屋の風景とか、お父さんの食べっぷりとか、カオナシとか、不思議の国のアリスのような世界です。主人公の女の子に共感しました。

笹 原 実は少し見逃したシーンがあるのですが、それを踏まえて話をします。ちょっと期待してたのと違ったので、戸惑いながら見ていたのですが、最後にカタルシスを持ってきたのでほっとしました。彼女がお世話になっていた人のためにがんばるという最後でよかったと思いました。あと、僕はあのお湯屋のシーンにはついていけなかったのですが。でも、評価できる作品なので、もう一度きちんと見てみたいです。

酒 井 子供だけにみせるのはもったいないです。この作品の方法論は、すこし厭らしくて、西洋、東洋、昔、今のイメージを全部ごちゃ混ぜにして出しています。これによって見る人は、懐かしさや温かみを覚えるように計算されています。ストーリーよりもあの作品が持つ独特の雰囲気に引かれた人が多かったのでないでしょうか。アニメでここまで作ることができたのは凄いと思います。これまでの宮崎駿の作品で一番評価(一番受けている)できるのは「となりのトトロ」だと、僕は思っていますが、この作品は今までの宮崎アニメの集大成です。特に印象的なシーンとして、海の中を走る電車で旅をするところがあるのですが、僕はアニメでこれだけ表現できるのかと感心しました。おそらくアニメ史上に残るシーンだと思います。

鬼 束 列車のシーンは猫バスとか、「銀河鉄道の夜」に通じるところがありますね。

酒 井 実はこの作品のイメージはオリジナルな物はなくて全部拝借しています。この作品の良いところは、アニメでしか表現できないものをうまく表現している点です。

鬼 束 車が走るシーンは「カリオストロの城」と同じだった。

笹 原 僕も「天空の城 ラピュタ」を見たときこれはアニメでしか表現できないと思った。今回の作品もそれを感じた。

酒 井 けなす人がいなくてつまらない(笑い)

笹 原 「もののけ姫」は良くなかったという人はいましたけど。

多くの人 やめるやめると宮崎監督はいつも言っているけど。

笹 原 ほんとうに宮崎駿が作りたいのはむしろ「もののけ」の路線なんですけど。

このあと、延々に、宮崎アニメについての議論と、どこまでヒットするのかという話が続きました。

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