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2002年3月号

出席:笹原 鬼塚 酒井 藤本 杉尾 野口 林田
いよいよ林田、今号書記デビュー致しました。不安いっぱいだというのに今回は問題作ばかり4本も取り上げることになってドキドキです。その上みなさん、よくおしゃべりになりました。正確に出来上がりますかどうか、未熟な点はご容赦下さい。

ゴジラ モスラ キングキドラ 大怪獣総攻撃

2001年 1時間45分 配給:東宝 監督:金子修介 出演:新山千春 宇崎竜童 小林正寛 佐野史郎 仁科貴 南果歩 大和田伸也 村井国夫 渡辺裕之 葛山信悟 中原丈雄 布川敏和 津川雅彦

鬼 束 よかったです。特撮がすごく良く世来ていて、怪獣と逃げまどう人間が同じ所にいて.....ベストテン号に書いていますので....詳しくは読んで下さい。篠原の起用については、キャラクターから言うと、あれくらいやられて調度いいかな(笑い)って思いました。

野 口 面白かったです。私が前に覚えているゴジラ映画はぜんぜんとろ臭くて今いち乗らなかったけど、今度はぜんぜんストーリーがハッキリ描かれているし、バラゴンが可愛いくてバラゴン頑張れと言う気持ちも含めて面白かったです。

笹 原 割と評判が良くて期待して観たのでしたが、すごくいいと言う訳では無いし、悪くも無いといった感じでした。ゴジラシリーズにガメラの監督・金子修介がどこまでやれるのかと期待してみたのですが、三つの怪獣が登場することで画面が間延びしてしまう感じを私は受けました。それを何とかまとめたのは良かったのですが、どうしてもガメラシリーズと比べてしまうと、その凄さは見られませんでした。

酒 井 久しぶりにゴジラ映画を観ました。ひとこと、その印象はゴジラはちと少し太り過ぎではないか、という気がしました。そのせいか、光線だけでやっつけて、あまり怪獣同士のプロレスをやっていなかった。ゴジラが水の中から出てくる時ゴジラの大きさ恐ろしさをワーっと出していますよね。それが一番印象に残りました。時々ゴジラの大きさが伸び縮みするんですね。そのようなところが、ハリウッド映画にくらべてリアルさに欠けていたかなと思いました。最後にゴジラをやっつけるところは、ピノキオになってしまって、あまりにも信じられないような結末でそこらが不満が残りましたが、あれだけ多くの怪獣を出してまとめて行くのは大変でしょうし、それなりに愉しめたのではないかと思います。

その後ゴジラは何故日本に、それも何故東京に向かうのか、と白熱した議論になりましたが結論は出ず「大都会を破壊する面白さでしょう..」ということに一応納まりました。


シュレック

2001年 アメリカ 1時間31分 配給:UIP 
監督:アンドリュー・アダムソン ヴィッキー・ジェンソン 製作:ジェフリー・カッツェンバーグ アーロン・ワーナー ジョン・H・ウィリアム 製作総指揮:ペニー・フィンケルマン・コックス サンドラ・ラピンス
声の出演(日本語版):マイク・マイヤーズ(浜田雅功) キャメロン・ディアス(荏原紀香) エディ・マーフィ(山寺宏一) ジョン・リスゴー(伊武雅刀)

林 田 私はこの手の映画は苦手な部類にはいります。子ども向けなのか、大人向けなのかもあまり分かりませんし、第一あのシュレックの顔自体が嫌いです。この映画を良かったと言われる方の意見を聞きたいくらいです。

酒 井 技術的に今までのあの種の映画にしては格段進歩しています。いろんなパロディをいっぱい織りまぜながら、私たちが想像するのは、シュレックとお姫さまが美男美女になって、めでたし、めでたしで終わるのでしょうが、それが見事に裏切られる所が意外性が有って良かったのではないかとおもうのですが...うん、パロディがいろんな所に出て来て面白かった。

笹 原 これを課題作にしたのは、ラストの処理ね、あの辺りをみんながどのように受け止めたのかなと、つまりシュレックが美男になって美しいお姫さまと結婚してめでたしめでたしで終わる方が普通ですよね。でも、そうならなかった。シュレックのものすごく下品だけどリアルでね、話の性質上やはりシュレックの顔はああならざるを得なかったと思いますよ。ロバのドンキー、フィオナ姫も非常に個性的で今までと違う描きかたでしたよね。上手いなあと思いました。

野 口 シュレックなんですけど、これがヒーローじゃないですか。それが世をすねて「おれたちバケモノだから人は怖がるだろう」という大前提があるわけですよね。ラストでその大前提が覆ると言うところが一番の見どころではないんじゃないかなと思うんですよ。自然に無理なく粗筋を追ってて....「何でもいいんだよー」みたいなことを上手いこと言い切れた面白い映画だったんじゃないかと、そんなことを子どもの方が素直に感じられるのではないかと思いました。

鬼 塚 あんまり面白く無かったんですよね。そんなに悪くも無かったけど、ラストは二人がきれいになるのかな? と思ったり、全然別のものになるのかなと思ったり、そしたら結局醜いままで、それで良かったのかなって思いました。字幕で観たので、エデイー・マーフィーのドンキーは話の間が上手いですね。彼はやはり、コメディアンだなーと思いました。

笹 原 ファークアード卿の声のジョン・リスゴーもそっくりでしたね。

酒 井 僕は吹き替え版でみましたからね。字幕の方も観たかったですね。

鬼 束 最後の「二人は酷く幸せに暮らしました」というところがなかなかいつもと違って良かった。

笹 原 面白かったんだけど、これでいいのかな..と言うところもあってね。それがなんなのか自分でもわからなくって...本来なら二人はめでたしめでたしで終わるところがそうではなかった。ここがどうなのかなと聞きたかったんですね。

酒 井 アメリカでは大ヒットしたんですよ。シュレックの下品さが受けたんですね。

*顔は下品だけど心はやさしい怪物シュレックの恋を描いたCGアニメーションでした。


山の郵便配達

1999年 中国 1時間33分 配給:東宝東和
監督:フォン・ジェンチイ

笹 原 物凄く評判のいい映画だったので見ました。父親と息子の関係がほのぼのとしていて母親の話、いろんな人との出会いが凄く良く描かれていると思いました。非常に淡々としていて、「よかったな...」とその程度の感じでした。すみません。

野 口 無作為の映画のきれいさと言うのは凄く感じました。ラストシーンが物凄く印象に残っているんですが、なんでそんなに印象に残ったかは...分からないんですよ。見て、あ、なんてきれいな映画なんだ! と言う以外に言えない状態なんですね。

鬼 束 悪い映画ではないけど、あんまり面白くはなかったなあ。悪い映画では無いんですよ。普遍の映画ですね。最近悪い映画が多すぎるのですね。野口さんの言われた作為の無いと言う言葉は、僕も感じたんですよ。犬に演技のさせ過ぎかな、ハリウッド映画のようで。景色はすごくきれいで、旅行好きな人だったら行ってみたいと思うでしょうね。

酒 井 私は昨年度の映画では「トラフィック」よりもこの映画が好きでナンバーワンに推したいと思います。で、何でいいかと言うと、結局ものすごく自然体に撮って演出を感じさせない演出なんですね。これが素晴らしい。あんな平坦な話で、最後まで1時間半の映画をよく作れるなと思うんですね。川を渡るところと、手紙が風でとぶところぐらいが山場で、それ以外は全く演技を感じさせないような自然な感じで撮っているんですね。物すごい演出力を感じました。唯一残念なのはこの犬なんですね。犬が上手すぎて演技をしているのが分かるんです。またシェパードが中国のあんな山の中にいるのか? とかね。所々電波塔やバスを写して、こういうふうな世界は中国でもだんだんと無くなってきていて、ノスタルジックな部分も出している。1980年代の昔の良き時代を非常に無意識的に出していて、上手いなあと思いましたね。こういう映画はもう、日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも作れないでしょね。土臭いアジアにしか出来ない映画だと思って、そう言う意味で昨年のナンバーワンの映画に推したいなと思いますね。それと、山に行けばああいう美人に逢えるのではないかと...(笑い)

林 田 私も、「1980年代、20年くらい前の中国だな」と思って見ました。景色の美しさに見とれました。犬のことはそんなに気にはならなかったんですけど、やはり、シェパードは似合わなかった、雑種がいいよね。父と息子の物語はこのような美しく感動的なものが多いけど、母と娘では美しくはなれないかなあなんて、ことも感じました。大好きな映画でした。

野 口 酒井さんのノスタルジックと言う言葉を聞いて、ラストシーンのことが分かりました。息子が小さかった頃から、犬はお父さんに付いて行っていたんですね。と言うことは、犬は年を取っている訳ですね。その、年とった犬が今度は長男に付いて行く..そのうち長男は一人で配達に行くようになる..と言うことが含まれていたんですね。

酒 井 ラジオでジャズを聞くシーンに最初違和感を感じたのですが、中国にも、もうこの時代アメリカの文化が入っていたということ、そしていつの時代も、どこの国でも若者は新しいものを取り入れるものだと感じましたね。

鬼 束 音をよくする(金属音を消す)ために、茶わんをラジオにかぶせたでしょう? あれはよかった。

アンジュール差し入れのお漬け物を頂きながら、次々と話がはずみ、和気あいあいと、全員何かしら心がなごみ、この映画の「やさしさ」のせいかなと、うれしくなりましたが、次に控えし、日本映画の「リリイ・シュシュのすべて」でどう雰囲気が変化しますか?


リリイ・シュシュのすべて

2001年 2時間26分 配給:ロックウェルアイズ
監督:岩井俊二 製作:ロックウェルアイズ 脚本:岩井俊二 撮影:篠田昇 音楽:小林武史 出演:市原隼人 忍成修吾 伊藤歩 蒼井優 大沢たかお 稲森いずみ

笹 原 あの、先程「山の郵便配達」で私が申し訳ないと言ったのは、「リリイ・シュシュ」を見て、すごい衝撃を受けてずっとそれを引っ張ってたものですから、「山の郵便配達」は全然私の頭にのこっていません。逆に見たら良かったのですが.....実は、気になるところがあって、1週間後にもう一度見ました。2回目を見て、良く分かりました。中学生のいじめを描いているんですが、主人公の蓮見君、須田さん、星野君、久野さんと、この4人の描き方がすごく上手い。非常に哀しい映画でした。岩井俊二の描いている絵柄も素晴らしいのですが、この後半のいじめの問題、援助交際、レイプの問題とか、非常に考えさせられる問題でショックを受けました。

野 口 映画を見終わった後、「今の子どもは...ショックですね」と声をかけられたのですが、今の子どもというか、そう言う所に焦点はないんじゃ無いかと思っています。全体的に見てこう...なんて言ったらいいんでしょう? 必死さがいろいろ伝わって来て、とにかく痛かったかなあ...自分の中学生時代に引き戻される感じで全編とおして、退屈ではありませんでした。

鬼 束 伊藤歩がスキンヘッドにして来た時はショックで岩井監督のいじめへの怒りを感じました。ホームページにも書きましたがゴダールを意識しました。そう言う意味でも、若い人に見て欲しいなあと言う気がするんですけど。(監督は)色のにじみ過ぎ、水滴、光りの使い方、めちゃくちゃ意識的にやってて、それがカッコ良すぎるくらいにカッコいいんですよね。

杉 尾 とにかく大変辛い作品だと思いました。自分の中で感情の常識からは考えられなくて、理解出来ないですよね。星野君がどうしてあそこまで変わったのか私にも分からない。星野君が沖縄の体験から、あんなになったとは思えない。それまでもいい子に見えていたけど本当はいい子ではなかったのではないか。家業の倒産だとか、親との関係なのでしょうね。こんなふうに流れて行く自分を変えたいと思っていたと思うんですよ。インターネットの中ではいいんですよね。自分を修正するのはどんなにか難しいことかと思いました。津田さんも援助交際とかしてるんだけど、純粋なところがあってその純粋さをぱっと青空に飛び下りて、白いソックスと足だけがすごく印象的で、良く表していたと思いました。無垢な感じを象徴していました。

酒 井 好きな映画かと聞かれると必ずしもそうではなくて、もう一度見たいかと聞かれたら、ちょっと遠慮したいなと思う映画です。かなり出来はいい方だと思いますけど、あの映画の主題に共感を覚えない。同じような子どもを描いた「GO」とは全く異なるベクトルを向いているような話で、感情的な起伏が殆ど描かれてなくて淡々ときて、主人公が唯一心を開いているのがインターネットの文章だけなんですね。僕には理解できないんだけど、コンピューターの中だけでしか会話ができない。非常に可哀想だけど、現実的にいるんじゃないかと....普通の子どもが普通にあんなふうになって行くという、背筋がぞーっとする作品なんですよ。キーワードになっているのがエーテルと言われる言葉だと思うんですね。良く分からないけど、感覚的なものがずーっときて、最後は殺してしまうしかないかなという感じがするんですね。こういう言い方は失礼だけど、これ以上この映画と自分自信が向き合うのを避けたいような、対話をしたくないようなそんな気分になるような作品なんですよ。作品の出来とか何とかではなくて。そこで、あまりにも大人の存在の希薄さなんですね..私達大人の責任なんだけれども、気持ちのいい作品じゃないですね。これが正直な感想です。

林 田 主人公が高校生ならもう少しは良かったんですけど.....今の世の中だんだん17才の殺人が14才になってきていることも考えるとこの映画の主人公たちも中学生になってしまうのかなと思いました。自分のことを思い出しても、絶対10代には戻りたくない嫌な年令ですから(30代なら戻ってももいいかな?)それを見せつけられて、昔なら何も起こらずにすんだことが、今はこんなふうに殺人にまで進んでしまうのかなと、子どもたちに同情しました。大人がまったくあの映画では何の役にも立たない。若い教師の力のなさを痛感しました。星野君が最後の最後までとことん悪くて、どうして途中で踏み止まることが出来なかったのか....監督にそこのところを聞きたいくらいです。やはり、私は知っているつもりでも、現実の中学生のことを知らないのでしょうか。

野 口 「死にかける」ということは、「こんなに簡単に人間って死んじゃうのかな」って反対に命の軽さのほうに目が向いてしまうのかなって思いました。

杉 尾 生まれて14年で普通に生きて来て(星野君が)あそこまで崩れてしまうものなのかなって思いました。コンサートのチケットを捨てられて、雄一君が星野君を刺した気持ちは良く分った。45年間生きた中で(まだ44才だけど..笑う)理解出来ない感覚です。

笹 原 「リリイ・シュシュ」に惚れ込んで、ホームベージまで作って、チケットを手にいれてそれであそこまでされたらもう、殺すしかない。そのように演出もしてるんですよ。

酒 井 あれだけ虐めてしまうと相手を人間と見ていないから、あそこまで行くのは理解出来ないことではないですよ。子ども同士、共通の価値観がないんですね。「個人の意見を尊重する」という戦後の教育が根付き始めたんです。

笹 原 いじめに関して言えば、うちの子どもは今中2なんですけど、もちろん殺人やレイプはないですよ、でも、もっと深い所でもっと恐いいじめがあるんですよ。表面はみんないい子なのにですよ。岩井俊二は下手くそなんですが、非常に印象に残りました。あんな悲惨な映画なのに映像と音楽が素晴らしいんですね。そのアンバランスが素晴らしい! 一応、岩井俊二はこの映画を自分の遺作だと言っていますね。だから次回作はどうなるか分かりません。

酒 井 次は天国の話でしょう(笑)

*とにかく、辛く、難しい問題作なので、全員それぞれに少なからずショックを受けたようでした。討論も白熱、混線して、まとめるのに苦労しました。自分の発言内容のニュアンスが異なっていると、思われる方もあるかと思います。ごめんなさい。私たち大人は、ただ傍観しているだけでなく、現代の子どもたちに何らかのアクションを試みかけないといけないのでしょうか?


今月の1本

笹 原 「地獄の黙示録 特別完全版」見て良かった! 前に見た時の「何故?」が良く分かります

鬼 束 「廊下は静かに! サツキ荘の初夏」カクスコの演劇。

酒 井 「オー・ブラザー」とってもいけてる作品です。見て楽し<なってきます。音楽も最高です。

野 口 「12人の怒れる男」人の顔と態度と心情をあげつらって視る映画。面白かったです。

杉 尾 「御家人斬九郎」実は、映画はなにも見ていないのでテレビです。渡辺謙と岸田今日子のコンビが絶妙で、もの凄く元気がでます。

藤 本 「スパイ・ゲーム」

林 田 「ウインザーの陽気な女房たち」無名塾の舞台。仲代達矢はじめ全員迫力があって大満足しました。

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