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2003年7月号

出席者:加賀 笹原 ?林田 杉尾 野口 矢野 富高(特別参加) (書記)酒井

今回は、「ボウリング・フォー・コロンバイン」、「棒たおし!」そして「X-MEN2」です。林田さんのお友達で人吉に住んでいる富高さんを交えて会話が弾みました。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

ボウリング・フォー・コロンバイン

【データ】2002年 カナダ 120分 配給:ギャガ・コミュニケーションズ
監督・製作・脚本:マイケル・ムーア 製作総指揮:ウォルフラム・ティッチー 製作:チャールズ・ビショップ ジム・チャルネッキ マイケル・ドノバン キャサリン・グリン
登場人物:マイケル・ムーア チャールトン・ヘストン マリリン・マンソン ジョージ・W・ブッシュ ビル・クリントン クリス・ロック

参加者の内、笹原、野口、酒井、加賀、林田、矢野、杉尾の7人が見ていました。

野 口 9.11以降という言い方を良くするのですが、それ以前からアメリカはあまり好きではありませんでした。何なんだろうこの人たち(アメリカ人)と思いながら過ごしていたので、この作品を観てこの未熟な人たちが何で戦争をしているのだろうという結果になりました。

林 田 この作品を観てアメリカが世界の警察だということに反発を感じています。9.11の時、ビルが倒れるのを見て「当たり前だわ」と最初に思ったぐらいアメリカのやり方におかしいなと思っていたので、この作品で監督の意志が良く伝わってきました。一番疑問に思ったのは「なぜ、アメリカだけが」という事です。「アメリカが銃を持っているから」と簡単に思いましたが、「銃を持っているから事件が起こった」のではなく、「政治、経済、人種差別等の色々な問題が殺人を増やしている」ということが理解出来ました。この監督が、これが悪いあれが悪いと既成概念を羅列するのでなくて、これらに疑問を投げかけて、自分の足でその疑問を解決しようとする姿勢に感動しました。

矢 野 凄く感動しました。「恐怖が消費に走らせる」のくだりでの、マリリン・マンソンのインタビューがすごく説得力がありました。マリリン・マンソンの「音楽」が責められて「ボウリング」をすることが責められなかったところも端的に表していました。高校生がKマートに銃弾の販売を中止させたところも、映画を作りながら一方では周りを替えていく監督の行動力はすばらしいと思いました。アメリカ悩んでいるところがいっぱい出てきて考えさせられました。

笹 原 自分の主張したい事をドキュメンタリーにするとき、直球ではなくて変化球で持っていった方が分かりやすいと思いました。マイケル・ムーアはうまい手法を使っていると思います。最後のチャールトン・ヘストンのシーンなんかは、マイケル・ムーアのペースでインタビューが進行しており、ヘストンは言いたいことも有っただろうけどうまくやられたなと言う感じがしました。アメリカは色々問題を抱えているけれども、それを内部からどこまで告発できるかというのがこれからの課題であると思います。

杉 尾 何を言って良いか分からないです。単に銃を持つことが許されているだけで殺人が起きると言うことではないことがよく解ります。Kマートに行って学生たちが行動を起こせば変わるのだと思いました。少し長かったです。おそらくこの問題は自分の事として受け止めていないからでしょうか。

加 賀 ドキュメンタリーを映画で見るのは初めてです。よくテレビでアメリカの銃乱射事件の話を耳にしますけど、「アメリカってなんでバカなんだろう」と思います。でもそれを納得させてくれる監督の力量はすごいと思いました。アメリカの銃社会の歴史をアニメーションをうまく使って説明しているところは勉強になりました。僕はあと1時間ぐらい長くても退屈せずに見ることが出来たと思います。チャールトン・ヘストンがあそこまでつつかれるとかわいそうだなと思ったりしました。つい最近、チャールトン・ヘストンがライフル協会の会長を辞任したのはこの映画のせいでしょうか。最近見た映画の中では少し癖があるけど、良い作品でした。

酒 井 この作品ドキュメンタリーですけど、よく見ると監督のマイケル・ムーアが先にシナリオを書いてそのシナリオのとうりに映像を貼り付けたような感じがします。ですから、観客は、マイケル・ムーアの「なぜ、アメリカで銃による殺人が続発するのか」という論文を映像付きで観ていることになります。その点では、BBCとかNHKのドキュメンタリーとは全く異なるものです。かなり主観が入ったドキュメンタリーなので、アンフェアーなところもあるのですが、その点に皆さんが言及しないのは、マイケル・ムーアの主張が説得力あるためだと思います。でも、少し鼻につくところもあります。たとえば、チャールトン・ヘストンの家に行ったとき、銃で犠牲になった少女の写真を置いてくるところがありますよね。あれはいくらなんでもやりすぎのような気がします。でも、とにかく、この作品で僕のドキュメンタリーに対する考え方が変わったのは事実です。

林 田 チャールトン・ヘストンの後ろ姿がかわいそうでした。勇ましいイメージがあったものですから。銃を持たないと自分の身を守れないと思っている人がアメリカにはまだ多いのでしょうかね。

加 賀 仮説で、メディアで不安をかき立てるのが一因であると、映画では説明していましたね。

その他、銃社会の恐ろしさや、アメリカの問題点から、野口さんのアメリカ行きの話まで、議論が及びました。


棒たおし!

【データ】2003年 1時間35分 配給:東京テアトル パル企画
監督:前田哲 製作:武政克彦 張江肇 竹中功 松下晴彦 鈴木ワタル 企画:橋口一成 プロデューサー:尾越浩文 木谷奈津子 吉田晴彦 榎本憲男 大橋孝史 ラインプロデューサー:松岡周作 脚本:松本稔 音楽:谷川賢作 撮影:高瀬比呂志 美術・装飾:龍田哲児 衣装デザイン:小川久美子
出演:谷内伸也 金子恭平 古屋敬多 鍵本輝 中土居宏宜 平愛梨 平田満 松田美由紀 滝裕可里 北村悠 沢詩奈々子 三浦友和

次は、宮崎だけの話題作です。出来が良ければ良いのですが。参加者の内、笹原、林田と酒井が熱く語ってくれました。

林 田 何にも言うことないです。笹原さんが出ていなかったら観に行かなかったです。それなのに出ているシーンを見つけることは出来なかった。でも、もう一度観るにはアホらしくて観る気にならなかった。青春映画にしては幼稚でした。演技も何か学生の文化祭のみたいな感じで良さが分からなかったです。でも、宮崎が映ったのは良かったです。

笹 原 正直な事を言うと、最初シナリオを読んだ時に「これをどのようにして映画にするのかな」と心配しました。でも、周りの人はシナリオを誉めていましたけど。それから監督の力量も心配していました(前作は最悪でしたから)。映画に関わって、映画の撮り方とか見ていて出来た作品は思ったより良かったです。でも、僕の感想も林田さんとほぼ同じですけど、この作品を誉める人もいますよ。宮崎でロケをやる必然性はないですね。

酒 井 集中して映画を観ていなかったのですが、僕は期待していた以上の作品になっていたような気がします。これは最初期待していなかった分だけ得点がプラスと言うことです。ありきたりな話ですが、個性が無いところが個性です。

杉 尾 酒井さんが宮日で誉めていたので、友達が見に行くと言っています。

酒 井 良く読んでもらうとあんまり誉めてないですよ。話が若者論になっています。最近のこの種の作品にしては正統な撮り方をしています。

笹 原 でも、正統な撮り方をするには監督の力量は必要です。この作品にはそれが無かった。

ご当地の作品と言うことで、誉めたいのですが、なかかなそういう訳にもいかず、今年最大の問題作の様でした。


X-MEN2

【データ】2003年 アメリカ 2時間16分 配給:20世紀フォックス
監督:ブライアン・シンガー 製作:ローレン・シュラー・ドナー ラルフ・ウィンター 製作総指揮:アヴィ・アラドラ スタン・リー トム・デサント ブライアン・シンガー 脚本:マイケル・ドアティ ダン・ハリス ストーリー:ブライアン・シンガー デヴィッド・ハイター ザック・ペン 撮影:ニュートン・トーマス・シーゲル プロダクション・デザイン:ガイ・ヘンドリックス・ディアス 音楽:ジョン・オットマン 特殊効果スーパーバイザー:マイケル・フィンク 特殊メーキャップデザイン:ゴードン・スミス 衣装デザイン:ルイーズ・ミンゲンバック
出演:パトリック・スチュワート ヒュー・ジャックマン イアン・マッケラン ハル・ベリー ファムケ・ヤンセン ジェームズ・マーズデン レベッカ・ローミン=ステイモス ブライアン・コックス アラン・カミング ブルース・デイビソン アンナ・パキン ケリー・フー アーロン・スタンフォード ケイティ・スチュワート ショーン・アシュモア キー・ウォン ダニエル・クドモア

笹原、矢野、加賀、酒井が観ていました。話が途中でマトリックスに変わってしまった。

笹 原 この手の作品はあまり好きではないです。1は大嫌いでした。2の方の後半は面白かったですが、前半は相変わらずでした。でも、1と比較すると、2の方が良かったです。

矢 野 たいへん面白かったです。1も好きでした。この作品から仮面ライダーを想像しました。子供たちもX-MENが好きです。2も意味深な所もありまして・・・。3も楽しみです。

加 賀 1は観ていないので、人間関係を手探りで探りました。でも、面白かったですよ。でも、批評するような作品ではないですね。3が出来たら、暇だったら見に行くという程度です。

酒 井 僕は楽しめましたよ。1はミュータント同士の戦いでよく解らないところがありましたが、2の方は人間対ミュータントという構図で分かりやすかったです。この作品から政治的なメッセージを受け取りまして、これは反戦映画と感じました。この映画の主題「ミュータントも人間も共に共存する」という点は、今のイラク戦争に通じる物があるのかもしれません。映画としては楽しめました。

笹 原 ハル・ベリーは良かったですよ。

酒 井 実は、僕もこの作品その週観る映画が無かったから観たわけです。期待していた訳では無かった。でも、アメリカでもかなり長く興行ベストテンに食い込んでいますよね。マトリクスみたいではないです。

矢 野 直ぐにマトリックスが出てきたからアクションが霞んでしまった。

あと、マトリックスとの比較になりました。何かマトリックスの評判が良くないようで・・・。 マトリックスの話はまた今度ということで・・・


今月の一本

林 田 『めぐりあう時間たち』私でなくては分からない??

野 口 『キスキスバンバン』面白かったです。はまりました。

笹 原 『アバウト・シュミット』最近では一番の作品です。みなさん見て下さい。

杉 尾 『陽はまた昇る』プロジェクトXでも取り上げられた題材です。一生懸命さが良かったです。ビデオでも観て下さい。ちなみに、中島みゆきは出ていません。

酒 井 『ぼくんち』坂本順治の世界です。

矢 野 『ボウリング・ファー・コロンバイン』

加 賀 『めぐりあう時間たち』

富 高 『めぐりあう時間たち』

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