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2003年10月号

出席: 笹原 酒井 杉尾 野口 矢野 横山 林田(書記)

今年は9月に入って真夏のような毎日に見舞われている宮崎。こころなしか、みなお疲れの表情でしたが、そこは1987の会員。やはり始まりのゴングとともに 生き生きと語って頂きました。


HERO

2002年 中国=アメリカ映画 1時間37分
監督 チャン・イーモウ
出演 ジェット・リ− トニー・レオン マギ−・チャン ドニー・イェン チャン・ツィイー

笹 原 チャン・イーモウ監督の新作と言うことと、あと錚々たるメンバーと言うことで楽しみに期待して見ました。でも、ストーリーが真面目過ぎて少し疲れたかな?という感じがしました。それぞれ役者はいいのですが、若干話が教訓めいていて、そこがちょっとがっかりしました。特にワイヤーアクションにも少し飽きがきたかなと言う感じもありました。でも、この前、中国に詳しい人に聞いた話では、湖を飛ぶところは書物にもああ言う風に書いてあってそっくりだったと言っていました。伝説にそういうのがあるんですね。ただ衣裳はきれいで、色の使い方とか素晴らしかったですね。ただ、私としては「グリーン・デスティニ−」とかの方が好きですね。比べると・・・ちょっとね。

野 口 私も凄く映像がきれいで、オープニングの霞がかかったようブルーに大きなお城があって、人が顔だけ浮き上がるようなシーンがすごくきれいだなと思って、その後、主人公が階段を登って行くシーンだとか、構図が面白いなと思って引き込まれて見てたんですね。後でみたら、カメラがクリストファ−・ドイルだと知って、やはりこの人はカメラワークが凄いなと思って見ました。で、後回想ごとに、衣裳とか色彩が変わって、それがきれいだった分、笹原さんがおっしゃったように真面目に終わってしまって、もう2〜3回、回想シーンがあっても良かったと思いました。見終わった後の感想は、小学校の時に学校で見た道徳映画のようで、ちょっと残念です。

酒 井 一言で言うと非常に鮮やかな作品でしたね。赤系統の色が印象的でした。この監督は昔、デビュー作の「紅いコ−リャン」という作品で赤の色を物凄く鮮明に使ったのですけど、そのイメージを持ち続けていて見事な作品だと思いました。この色の使い方、それから撮り方だけを見ても非常にハイレベルな作品だと思ます。ワイヤーアクションといい、色の使い方といい、カメラワークといい、物凄くレベルは高いんですね。その分どうしても、お話の方が劣って見えるんです。「羅生門」的な回想シーンでなくって・・・・事実でだーっと持って行った方がより説得力が増したんではないかと思います。肝心の話の部分が霞んで見えたと思うんですね。30億かけた映画なんですから、もっと実力を見せて頂きたかった。

杉 尾 期待しないで行ったのですが、ま、期待しない通りの映画でした。やっぱり私は「グリーン・デスティ二ー」の方が好きだったかな。色もきれいで、音楽もズンズンと体の奥に響いて良かったです。中国って暗いイメージがするのに、色の使い方できれいでした。ドニー・イェンの剣のシーンが緊張して良かったかな。囲碁をしながら瞑想するシーンも面白かった。ただ、お話に深みがないから途中で飽きが来たかな。絵を見るだけで終わったと言う感じで、退屈はしなかったです。

林 田 トニー・レオンが私はどうしても好きにはなれなくて、あの人さえ出ていなければと思うくらいなんですけど、いい映画にたくさん出てますよね。「花様年華」にも「ブェノスアイレス」にも出てますよね。映画自体はそんなに期待もしなかったのですが、楽しむ分には楽しめました。いろんな場面でやっぱり、日本と中国は似てるなあと思いました。あのたくさんの兵士は本当にいたんですか? CGでごまかしてるのかなと思ってたのですが、本当にあの人数いたのですか? それだったらやっぱり凄いですね。

杉 尾 イーモウ監督ですけど、「初恋の来た道」のような小さな作品も作れるのにこんな大きな作品もつくれるんですね。

笹 原 第一作の「紅いコ−リャン」あれに一番似てます。最初に戻った感じですね。

酒 井 形にこだわり過ぎていますね。良い悪いは別にして、計算し尽くされた感じですね。人工的というか。

杉 尾 人工的ではあるのだけど、それはそれでいいと思ったけど。

林 田 秦の始皇帝を憎む気持ちがこっちに伝わって来なかった。あ、マギー・チャンを忘れてた・・・・

杉 尾 そうよ、どうして マギー・チャンがトに−・レオンを殺さなくてはならなかったか、分からんね。

林 田 やはり嫉妬よ。もっと歴史の勉強をしなくては・・・

野 口 加賀さんがいたら・・・・肝心な時にいないんだから。


過去のない男

2002年 フィンランド映画 1時間37分
監督:アキ・カウリスマキ
出演:マルック・ペルトラ カティ・オウティネン

酒 井 実はこの監督の作品は初めてなんですけど、フィンランドの映画ということであまり期待はしてなかったのですが、見終わった後の感触がですね、じわ−っとしみ出して来てあったかくなって、ほのぼのとして強い印象とかはなくて、徐々に徐々に「良い映画を見たな−」って言う気がする不思議な映画ですよね。地味な感じで、貧乏だけど、非常に楽天的なんですけど、そこがこの映画の良さなんですね。美男も美女も出て来ないのでその分かえってリアリティーがあって、フィンランドという国に行ってみたいという気がする、これと言って強い印象はないんだけど、少しは人に親切にしようかという気になるそんな映画でした。

笹 原 酒井さんと同じで私も見終わった後で幸せを感じた映画は久しぶりでした。アキ・カウリスマキ監督は有名なのに私も初めてでした。その国独自の音楽が心地よくて、主人公が自分が誰なのか後半分かるのですが、そこがきちんと描かれていて、奥さんにも会って、そしてまた恋人の所に戻ってくるのがね、笑いながらほろっと来る映画でした。

野 口 すごく地味な映画なんだけど、良い映画だなーと思いました。主人公がすごく災難に見舞われている筈なのに、物凄く楽観的で、自分のためになることを、ひとつひとつやって行けば何とかなるよ、みたいな感じでひとつひとつクリアーして、「あー何とかなるもんだねー」っていう感じがして良かったです。周りの人々も、受け止め方も粋な感じがしていいなあと思いました。役者さんもかっこいい人はいないのですが、印象に残っているのが救世軍の恋人になった女性で、「ム−ミン」のヘムレンさんに似てるなーと、フィンランドにはこういう顔の女性がいるんだなーと思いました。

林 田 私はもう、大満足の映画でした。主人公の男性の姿勢がいつもピンと背筋を伸ばしてるでしょ。もう、それだけで何だかやたらとおかしくって笑ってしまいました。あの二人のラブストーリーがやっぱりほろっときて、女性がひとりでラジオの音楽を聞きながらベットに潜り込むシーンがあったけど「寂しいんだな−」って、何か温かいものを求めているんだなと気持ちが伝わってきて、せっかくできた恋人が帰って来なかったらどうしようって、ハラハラどきどきでした。で、彼が奥さんと別れてまた帰って来た時はほんとに良かったって思いました。日本では、もうこんな物語はできないなーって、他人への親切も怖くて出来ない時代だし、そう言う意味でフィンランドは、ほんとに素朴で良い国だなーと、行ってみたいなーと思いました。それから、日本酒が出てくるシーンもおかしかったですね。大好きな映画でした。

酒 井 離婚が成立して、ほっとして、またもとに戻る列車の中で寿司というところがいい(笑)。何であそこで寿司を食うのかわからなかったけど、日本人としては嬉しいですよね。

林 田 日本酒でしたね。音楽が日本の歌だったでしょ。びっくりしました。

笹 原 クレイジー・ケンバンドのね。それが良く合ってたしね。二人ともお互いに寡黙で、しゃべらなくても分っていると言った感じでね。銀行強盗のエピソードもきちんと解決したし、律儀に何もかも最後までちゃんとするところが良かった。見終わってすっきりしたし・・・

酒 井 金かけずに映画はできるなあって。

林 田 あの女の人は、彼が帰って来た時は嬉しかったでしょうね〜。気持ちが良く伝わって来た。すごく純情だったですね。

笹 原 そうそう。


今月の一本

酒 井 「ファム・ファタール」 デ・パルマに敬意を表して

杉 尾 「踊る大捜査線」

笹 原 「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」 これは拾いものでした。ギリシャにはまってしまいました。

矢 野 「踊る大捜査線」

野 口 「キャッツ・アンド・ドッグス」

林 田 「WATARIDORI」 いろんなことを考えさせられる映画でした。

横 山 「シティ・オブ・ゴッド」

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