例会リポートのトップへ

2003年11月号

出席者:♂ 加賀 酒井 笹原 横山 ♀ 富高 林田 矢野  杉尾(書記)

閉ざされた森

監督:ジョン・マクティアナン
出演:ジョン・トラボルタ コニー・ニールセン サミュエル・L・ジャクソン他

酒 井 はっきり言って、どんでん返しの繰り返しで疲れました。最後の終わり方が、あまりに和気あいあいとしすぎてあれが、ちょっと白けましたね。それまでは、なかなかぐいぐいと良いせんいっていたんですけど…。あの暗〜い中の雰囲気でっていうのが、僕はあまり好きではないんです。俳優も地味な人ばかりだし。なんか後から考えて、ストーリーがこれでいいのかなって…、あまりにも都合良すぎるんじゃないかなと思うんですよね。確かに、ドキドキわくわくする展開は良いんですけど…、やっぱり、あのラストがねぇ。ちょっと期待はずれという感じでした。

林 田 見ている間は、ものすごく面白くって物語に引きずれ込まれ、ぼんやりする暇もないくらいでした。途中、何が本当なのか、自分でも理解出来なくなって、これは、嘘と思った事が、また、次の時は違っていて…。う〜ん、結局あの『8』というグループは最初から、医者や、大佐をねらって仕組んだ罠だったわけ?(加賀:そういうことですよ。)それじゃ、あの毒殺された人は、本当の事を言っているはずですよね……、う〜ん(…と考え込む)、ということで、なぁ〜んか解らないんですよぉ。そして、最後にトラボルタが、彼女と意味ありげに笑って別れ、横断歩道をわたっていく場面では、絶対、トラボルタは悪いヤツだったんだって思ったのに、いい人だったりして…あれ、って思いました。やっぱり、つじつまを合わせようと思っても合わないところはあると思う。…すみません。

笹 原 私も見ている間はですね、二転三転して面白かったし、戦場での話でミステリーっていうのが珍しいなと思ったんですけど。最後、あんな形で悪の勝利で終わられると、これでいいのかなと納得が出来ないですね。(この時点で、笹原さんは『8』とは悪のグループと認識していました。)ちょっと、すっきりしないですよ。

加 賀 途中までは、面白かったんでよ。話がどう進むかワクワクしていたんですけど。助かった人が、本当は白人ではなく黒人だったとか?…そんなこと、基地の人だったらすぐに解ることだと思うし。そんなすぐ分かる矛盾から始まって、その後、どんでん返しの繰り返しがずっと続くでしょ、そうなると、もう、僕の中で名前と顔が一致しなくなって、何が何やら解らなくなっている内に、もう、ラストになっていて……、正直言って、そんな意味で面白くなかったです。ビデオか、本を読むと面白いかもしれないですね。でも、もともと司令官が、悪いことやってんのに、わざわざ捜査官を雇うってこと事態おかしいよね。

杉 尾 私ゃぁ、面白かったね、凄く!〈笑〉。この際、辻つまのあわない細かいところは、どうでもいいです。〈笑〉面白く緊張感を持続しながら最後まで見ることが出来た、これは、もう、それだけで、お金払った価値はあると思います。こういう話が、実際にあり得るかというとそれは難しいというのはわかるけど、ただ、謎解き感覚で映像を楽しむという意味では、最後まで、トラボルタにだまされて、やられたって感じに満足感がありました。最後、ハッピーエンドだったというのは……、捜査官のあの彼女の気持ちになったら、腹立つ…ですね、やっぱ。そうか、んじゃ、あの時ラストで、トラボルタの横っ面の一発でもはり倒してくれれば、少しはすっきりしたかもね〈笑〉。

酒 井 ね、そうでしょ、ラストがあまりにもね…〈笑〉。この映画のずるいところは、観客に細かいところを考える暇をあたえず、テンポで押し通してしまうところですよ。

杉 尾 それでいいんじゃないですか。

笹 原 いやぁ、やっぱりミステリーは、そこら辺の話の辻つまがきっちり合ってないとね。

この後は、皆、期待はずれだといいながらも、ああダこうダとえらく盛り上がったのであります。


座頭市

監督:北野 武
出演:ビートたけし 浅野 忠信 ガダルカナル・タカ 柄本 明 その他

笹 原 最近の武の映画も低迷していたんで、あまり期待していなかったんですけど、今回は、いろんな意味でエンターテイメントにやってくれたんだなと思いました。ま、そういった意味では、非常に嬉しかったんですけど…。特に音楽の使い方は、最初に農具を使って音を出しながら、だんだんと最後のダンスシーンに繋げていくというところとかいいです。本来の勝新の座頭市と違う本当に情け容赦ないという武の座頭市との違いが楽しめましたね。話も役者も良く、面白かったので、私としては今のところ邦画では第1位と思っています。ベネチア映画祭で監督賞を取ったのも納得しました。ギャグがやり過ぎかなと思う部分もあったんですけど、それは仕方がないのでしょう。

加 賀 黒澤明の「用心棒」のかわりに座頭市をもってきたという感じで面白かったですよ。 決して途中で痛めつけられることなく、もの凄く強い座頭市で…気持ちいいですね。監督のアイデアだと思うけど、殺陣(たて)に工夫があって…。冒頭のシーンの、やくざが刀を抜くとき自分の隣に立っていた見方を誤って切ってしまうところとか。浅野忠信が、刀の鍔の音をさせながら、フェイントかけて短刀の方を抜いて使うところとか、目の見えない相手に対する工夫がよく考えてあるなと感心しました。あと、話の中でよくある手法だけど、フラッシュバックすることで、一人一人の過去を観客に見せて解るように描いていくところも上手かったですね。今回は、死ぬのはみんな登場人物の中で悪い人ばかりで、良い人達は、だれも死なないので安心して見ていられました。

酒 井 今回は、あんまり難しくなくて、わかりやすくエンターテイメントに徹しているところが良かったと思います。そうは言いながらも、武の映画の個性が充分に出ていたので良かったですね。武らしさが随所に出ていて、そんなに悪いと思うところもなく、僕もこれは成功作だと思います。ダンスのところなんか、ストーリーとどう関係あるのかなと思うけど、これは武のサービスかなと思います。そう考えると、なんかどうーも、予告編の時あの部分が強調されていて、ミュージカルになっているんじゃないかと想像していたんですけど、そうではなかったですね。
 笑ったのは、座頭市が、めくらのまねをしているだけだったという…ところ??(杉尾:え?ホントは見えていたの?…)(誰か:目は開くけど、やっぱり見えないんじゃないの…)んんん、僕は、逆に、目が見えてる時に見えないものが、眼をつぶると見えてくるというようなところを、武が曖昧に表現したんだと思います。(これについては、意見が分かれて、見えてる見えていないで、盛り上がりました。)
 あんな風に、ツボを押さえて肩の凝らない作品で、100%武の自分自身をだすのではなく、ある程度セーブするというのが最近の作品に欠けていましたよね。そういう部分が出てきたので、ますますレベルが上がったという感じがします。映画の本質というのは、やっぱり見ていて楽しいくなければいけない。その点、武の映画というのは視野狭窄の部分があったと思うんだけど、そんなところがなくなってきたというのが、評価できるところだと思います。次回作に期待します。

横 山(遅れて飛び込んできた横山さん、まだ、息の収まらないところにマイクを向けました。)はぁ、ああ、っとですねぇ…、まあまあ、面白かったです。僕は、基本的には、あまり武の映画は好きではないのですけど、今回はその中では、良い方なのではと思います。ガダルカナル・タカが良かったですよね。ま、あれを見られただけでも、良かったかなと思います。あと、殺陣(たて)は、CG使って血もドバドバって出て…ん、良いです。あと、世間で評判高いですけど、それほどでもないと思いますね。ベネチア映画祭は、ちょっと武に甘いかなと思いました。
 浪人夫婦の話は、非常に中途半端で、あれは奥さんはいらなかったんじゃないかと思いましたね。どうせ黒澤を引用するのであれば、シンプルな殺し屋で良かったんではないかと思います。

杉 尾 武の映画は、「キッズリターン」以外はあまり好きではありません。でも、作品の中に、ひとつひとつ切り取ったら絵になる好きなカットがあります。座頭市は、私の中では、勝新の完成度が高くて、大好きなので、それを武がどんなふうに仕立てているのか、少し期待したんですけど、やっぱ、基本的に武のバイオレンスに共感できないので、だめです。そんなに賞をあげるほどすばらしい映画だとは思えなかった。ただ、軽くみることは出来、笑いました。冒頭のギャグも、残酷なのに思わず笑ってしまったし…。音楽に合わせて、農夫がクワを降るところは、同じところばかり耕してして、ちょっといらいらしました。(笑)意図がちがうんですけどね。ラストに座頭市がけつまずいて、「めぇ開いてても、見えねぇもんは見えねぇんだけどなぁ」というところのタイミングが絶妙で、笑いながら終わりました。まあまあです。

この後、座頭市の眼は、本当に見えないのか、石灯籠をすぱっと切ってしまうのはやりすぎじゃないか、とか柄本の存在感は相変わらずだとか、多くの意見が出て、またまた大変盛り上がったのでありました。


今月の一本

林 田 「晩鐘」乃南アサ著の小説です。「風紋」の続編。ずいぶん分厚い本を、一週間くらいで読みました。“怒り”をあれだけ鮮やかに表現できるというのは凄いと思います。

富 高 「トーク・トゥ・ハー」東京で見てきました。とても感動しました。映画を見るとき、面白かったぁっていう気持ちが大切だなぁと思います。

笹 原 「シベリア超特急3」今までの作品と比べると、大変良い出来だと思いました。

横 山 「ロボコン」凄く良いというわけではないのですが、長澤まさみが良いです。

加 賀 「モンク」アメリカのTVシリーズです。神経質な探偵が出て活躍します。

酒 井 「ロボコン」お薦めって感じより、半お薦めって感じです。「SWAT」など、見ているのですがいまいちです。来月に期待します。

杉 尾 「ロボコン」これしか見ていない。なんといっても伊藤淳史くんと荒川良々くんがいいです。

矢 野 「阪神を変えた男 監督・星野仙一」テレビでありました。

[BACK]