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2004年3月号

出席者:♂ 臼井、加賀、酒井、笹原、横山、♀ 杉尾、矢野、飯田、林田(書記)

半落ち

 原作: 横山秀夫 監督:佐々部清 出演 寺尾聡 原田美枝子 柴田恭平

酒 井 小説を読んでそれから映画を見ました。やっぱり小説の方が面白いかなと言う気がします。小説にはミステリーの良さが出ているのですけれど映画は人情物というか泣けるものに脚色されていました。梶が二日間放浪してその後で自殺してもいいんじゃないか?小説にはそこが分かるのですが、映画は説明不足ではないか?と思います。映画の出来は悪くはなくて、しっかりとした演出でした。小説をを読んじゃったので物足りなく感じたのですが、おそらくキネマ旬報のベストテンではいいところに入る作品だと思います。平均点以上でしたけども、もうひとつ何かが足りなかったような気がします。

笹 原 映画を見たときにあまりよく分からないところがあったのですが、昨日原作を読んでみて、やはり酒井さんの言われたように肝心なところが抜けて、はしょってあるような気がして、だから感動まで到らなかったのかなと言う気がしました。新聞社の人を原作では男性だったのを映画では女性にして、上司といろいろあるようになっていましたが、そんなことはしなくて男性のままの方が良かったと思う。 最後の刑務所の監視の話が原作では感動したので、何でここを省いたのだろうなあというのがありました。映画も悪くは無かったけど、もうちょっと何か描き方があったのではないかと言う気がしました。役者もみな頑張っていましたね。

杉 尾 ずいぶん前に見たのでもう忘れちゃった..私は原作と映画は全然違うなと思って見ました。原作は大きな圧力に屈して真実を突き詰めることを断念していく過程を丁寧にそれぞれの立場で書かれていたと思うのですが、映画はどちらかというと感情的な部分がメインにしてあって、柴田恭兵も軽い感じで、これでは泣かないぞと思ってたんですけど、やっぱり最後ははめられてしまって、樹木希林が法定で証言するあたりがらどっーときました。上手かったなと思います。

酒 井 50才までしかドナー登録が出来ないという部分が描いていない。ハガキを待つところが抜けてる。あそこが一番大切な訳で...何故そこで思いとどまって自首をしという説得力がないんですよ。

笹 原 そうなんですよ。私は、原作を読んでなくて映画を見たんですよ。だけど肝心なと抜けてるから何の感動もなかった。原作を読んでやっとよく分かった。

杉 尾 だから、映画はアルツハイマーの部分に重点を置いてあって、アルツハイマーに自分がかかったら、自分が壊れて行くときに、どこまでを命と思うか、どこまで生きていたらいいのか、という部分を盛り上げてあったからズーンと来んですよ。裁判のシーンとか、私は素直に感動したんですよね。

笹 原 裁判のシーンは原作と一緒でしたよね。私はただ「空白の二日間」というのがずーっと気になるんですよね。本を読んでなるほどと思うのはやはりよくないと思うんですよ。原作と違っていてもなるほどと思わせないとね。昨年の「OUT」のようにね。映画独自の世界を作って来ないとね。

杉 尾 映画に独自の世界は無かった?

笹 原 無かった。

酒 井 映画では裁判のシーンにクライマックスを持ってきているんですが、ちょっとくさいなと思うんですよ。今思えば...

杉 尾 映画はドナーの話が軽く扱われていたですね。自分の身内がこの病気になった時の周りの苦しみとかがぐっときたのよね。

ここで横山さん遅れて登場

横 山 えーっと、原作はあまり好きではなかったですが、でも原作のキャラクターに比べると映画は弱いかなという気がしました。かなりはしょってましたね。クライマックスは盛り上がって僕は嫌いじゃないです。ちょっと大げさな感じはしますけど。原田美枝子が良かった。結構評判のいい映画なんですが、評判ほどではないなと言う気がしました。

酒 井 教訓、歌舞伎町に行ったときはティッシュは受け取らない。誤解のもと。

全員 (大きく頷く)

ミスティック・リバー

監督 クリント・イーストウッド 出演 ショーン・ペン, ティム・ロビンス, ケビン・ベーコン 

酒 井 イーストウッドの映画では非常に良くできた作品で、3本の指に入るのではないかと思います。出演者も非常に上手くって演技面に不満は全くありません。質の高作品だと思うのですけれども、扱っている内容があまり好きではありません。もう 一回見ようかという気にはなれない作品です。難しいですね。優れているところは認めますが「好きか?」と聞かれるとちょっと...こういうまとめ方しか出来ないですね。

矢 野 どんな作品かなと思いながら見ました。幼なじみがだんだん信じられなくなって、とうとう一線を越えていくところとか、奥さんがそれを肯定するところとかですね。現実の生活を抱えて生きていかなければならないという...なんて言ったらいいか。その程度で...

横 山 しっかりしている作品だとは思いますが...冷たい雰囲気の中で話が進むなと思いました。主役の3人もそれぞれ上手いのですが、最後に分かる犯人の動機が許せなくて、それならばあの人たちではなくてもいいのではなかったか、と言う気がしました。イーストウッドはこう言う映画も撮れるんだなと思いました。

笹 原 みなさんの言った通り、映画の出来はしっかりしているし、役者もそろっているしきちんと作られていることは認めるのですが、私は全然生理的に合わない映画ですね。盛り上げていって、最後に悲惨な結末という盛り上げ方は嫌いですね。そこまで嫌がらせをするかと言う気がしますね。もう一回見たんですがやっぱりだめですね。イーストウッドの映画は今までも殆ど駄目ですね。臼井さんはイースト・ウッド大好きだそうですけど。

杉 尾 面白かったです。もう一回見てもいいくらいです。(笑)もう一回話が分かったうえで、噛みしめて考えてじっくり見たいと言う意味です。「わー良かった!もう一度見たーい」と言うのではなくてね。ティム・ロビンスも凄かったから渡辺謙が賞取れなくても仕方ないかな。

酒 井 最後のパレードのシーンですよ。あそこまであんな風に撮れるかってねー。

笹 原 あんな可哀想な話....あんまりだよね。だって正義が勝たないで悪が勝つのが当た り前みたいで。

ここで臼井さん現れる。

臼 井 ここにいるのは、ミスティック・リバーが好きな人ばかりではないんでしょう? と言うか、あの映画は分かりあえない人とは生涯僕は分かりあえないと..ま、誰にでも分かって欲しくない映画です。それでいいんだと思います。笹原さんがこの映画が大嫌いだと何かにコメントを出されていた、それは全面的に楽しいと、え、今日は笹原さんを擁護するために僕は来ました。やたらな人に分かってもらうと困ると言う映画でして、分かんない人には分からなくて言いと言う映画でした。見終わった後にすぐ生涯のベストワンではないかと錯覚したほど僕は好きな映画でした。物語ではなしに、映画は同時に起こっていることに弱いのですがそれが明らかにな っている映画だと思うのですが。この映画に出演の3人はみな監督経験者ですが、その3人を主人公たちに据えてこういう映画を撮った意図はそういうところにあると思います。(中略)空の色に沿った形で演出も....え〜と、語り尽くすと大変なことになるんで、物語に関しては僕はあんな人生は送っておりませんし、そういうこともあるのかなと言うくらいです。分からなかった人は2回3回見られたほうが、、でもこれも好き嫌いですから、分からなかった人は生涯分からなくても言い、ま、そんなところです。これは一種のゴッドファザーですよ。

酒 井 これ以上の映画が撮れると思いますか?イーストウッドに?

臼井 年くってから彼は凄いことをやり始めているんでやるでしょう。取りあえずこの映画3回見ました。

この合評会の後でこの映画を見たのですが、みなさんのおっしゃること一々ごもっともで、特に臼井さんの発言は参考になりました。途中「ついて行けるかな?」と心配に思ったのですが何とか最後まで見ることが出来たのはひとえに臼井さんの発言によるもので、大いに感謝しています。(林田)


今月の一本

林 田 「永遠のマリア・カラス」今年はまだこれしか見てません。

杉 尾 「シービスケット」感動しました。

笹 原 「六月の蛇」一年以上待たされました。日本映画です。

横 山 「愛してる、愛してない」ビデオでみました。アメリのオードリー・トトゥです。

矢 野 「クレヨンしんちゃん」

酒 井 「女はみんな生きている」

臼 井 「ハイスクール白書 優等生ギャルには気をつけろ」

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