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2004年4月号

出席者:笹原 志賀 小野 林田 杉尾 矢野 (書記)酒井

今回は、「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」、「ラブ・アクチュアリー」「この世の外へ クラブ進駐軍」そして「嗤う伊右衛門」です。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還

【データ】2003年 アメリカ 3時間23分 配給:日本ヘラルド映画 松竹
監督:ピーター・ジャクソン 製作:バリー・M・オズボーン フラン・ウォルシュ ピーター・ジャクソン 製作総指揮:マーク・オーデスキー ボブ・ワインスタイン ハーヴェイ・ワインスタイン ロバート・シェイ マイケル・リン 原作:J・R・R・トールキン 脚本:フラン・ウォルシュ フィリッパ・ボウエン ピーター・ジャクソン 撮影:アンドリュー・レスニー 美術:グラント・メイジャー 衣装デザイン:ナイラ・ディクソン リチャード・テイラー 音楽:ハワード・ショア スペシャルメイクアップ・SFX・クリーチャー・アーマー・ミニチュア:リチャード・テイラー 特殊効果スーパーバイザー:ジム・リギエル コンセプチュアル・デザイナー:アラン・リー ジョン・ハウ
出演:イライジャ・ウッド イアン・マッケラン リヴ・タイラー ヴィゴ・モーテンセン ショーン・アスティン ケイト・ブランシェット

今年度のアカデミー賞11部門に輝いた名作のはずですが(?)。熱狂的に支持している横山さんがいなくて残念です。参加者の内、笹原、酒井、矢野、志賀、小野の5人が見ていました。

志 賀 長く感じました。戦うシーンはよかったです。フロドが蜘蛛にやられるシーンはエロチックでした。最後のイラストはよかったです。もう一回観たいとは思いません。

矢 野 長くはなかったです。楽しかったです。お姫様が象を倒すところがよかったです。子供とまたいきたいです。

笹 原 長く感じました。戦いが多いのはわかっていたのですが、あそこまで長いとしんどかったです。1が大好きなのですが、2はあまり、3は少し持ち直したという感じでした。私は、戦いものが苦手なので1が好きです。でも長いですよ。原作に忠実でした。駄目です。

酒 井 まずは、無事3作が完成して良かったです。9時間におよぶ話で前2作の復習するのが大変でした。でも、そのおかげで、退屈せずに楽しむことが出来ました。3作とも水準の高い作品にできあがっていると思います。この作品だけを評価するのは難しいので結局、9時間におよぶ3作を評価することになります。僕はこのシリーズ気に入っています。スターウオーズやマトリックスよりもよっぽど優れていると思いますけど。ハリウッドの作品と異なり気品があります。それと、役者の感情の露出があまりないので、物語に集中することができます。最後は、なかなか終わらないですね。でも、最後のイラストは良かったです。

笹 原 実は、原作も指輪を捨ててからなかなか終わらないのですよ。最後の本の半分以上を占めています。それから、2が駄目なのは、木が会話をしはじめてからです。3では、亡霊が出てきてなんかしらけてしまった。

酒 井 僕は、2でガンダルフが復活してがっかりしました。1でガンダルフが死んで旅の仲間は大いに泣いたのに、あれは何だったんだろう。

小 野 楽しめました。2作目は3度みました。好きではなくて寝てしまったのです。やっぱり、長いストーリーですが、まだまだまだまだ終わらないのかと思いました。ラストシーンも楽しめました。作品賞おめでとうございます。僕は「ミスティック・リバー」に取ってもらいたかったです。映像的には素晴らしいです。

酒 井 指輪を捨てられる人はいいですよね。僕なんか、とてもーーー

DVDのバージョンもあるとの事なので、話題はいろいろと尽きませんでした。それにしても、登場人物が多く、頭に地図をいれておかないと理解できない等、この作品を本当に理解するにはいっぱい勉強しなければいけないとの事です。3作のうちどの作品が一番かとの話もでましたが、これは1本にした方がいい作品なので結論がでませんでした。


ラブ・アクチュアリー

【データ】2003年 イギリス・アメリカ 2時間15分 
監督:リチャード・カーティス 製作:チィム・ビ?ヴァン エリック・フェルナー ダンカン・ケンワーシー 製作総指揮:モヘメド・アル=ファイド リチャード・カーティス 脚本:リチャード・カーティス 撮影:マイケル・コールター 音楽:クレイグ・アームストロング 編集:ニク・ムーア
出演:ヒュー・グラント リーアム・ニールソン コリン・ファース ローラ・リニー エマ・トンプソン キーラ・ナイトレイ ローワン・アトキンソン ロドリコ・サントロ トーマス・サングスター ビル・ナイ ビリー・ボブ・ソーントン

本当は、映画ファンには素敵なクリスマスプレゼントになっていた作品なのですが。配給会社のセンスのなさで2月公開です。林田、笹原、杉尾、酒井、小野の5人がそれぞれこの作品の愛について語ってくれました。

林 田 大好きなジャンルです。物語がうまく入っています。楽しくって愛が大切だということはよくわかりました。いつもいつも恋愛をしていきたいと思わせます。作り方もよかったです。すべてが良かった。イギリスなまりがもてる話もよかったです。イギリス映画はしゃれています。上品さがよかったです。

志 賀 みてません。できたらオスカーぐらいでやってほしかった。

笹 原 私もすきな映画です。すべてのエピソードが気に入っています。おしゃれな作品ですね。ローワ・アトキンソンの使い方がうまいですね。全編に出演するときっと映画が潰れちゃうけど、あの場面だけというのは。リックマンの夫婦の話とかよくわかります。キーラ・ナイトレイの友人の花嫁を好きになるエピソードもよく理解できます。僕の体験談から、幼稚園の運動会である女性ばっかりとっていることがありました。最高の映画でした。

杉 尾 ほとんど林田さんがいいました。愛があふれていていい映画です。ロック歌手が愛を告白するところが感動しました。ビーン、しつこく包装するところがおもしろかったです。人を愛するのに言葉はいらないのがよくわかりました。

酒 井 イギリス映画の良いところが出ていましてね。最近、ストーリーが9つ(8つ?)が同時に進行する映画というのは珍しいです。でもこの作品編集がうまかったですよね。すべてのストーリーが散漫にならずにうまく収束していました。監督の腕前はたいしたものですね。でも、出来ればこの作品クリスマスに観たかったですね。公開が1月遅れなら、努力して同時公開にしてほしかった。とにかく、愛があふれていていい映画でした。

小 野 僕もこの映画大好きでした。イギリス映画はいいなと思いました。イギリスの俳優総出演です。どのエピソードも好きですが、ロック歌手の話がよかったです。アラン・リックマンの親子のエピソードも。イギリスはイラクの問題でアメリカの言いなりになっているので、あのエピソードはイギリス人の心を本当にあらわしているのでは。

この作品、皆さん大好な映画だったようです。早くも今年のベストテン確定です。


この世の外へ クラブ進駐軍

【データ】2004年 2時間3分 配給:松竹
監督:阪本順治 企画・原案:KИHO 企画アドバイザー:内野二朗 プロデューサー:椎井友紀子 アソシエイト・プロデューサー:相原裕美 音楽:立川直樹 撮影:笠松則通 美術:原田満生 衣装:岩崎文男
出演:萩原聖人 オダギリジョー MITCH 松岡俊介 村上淳 前田亜季 高橋かおり 真木蔵人 池内万作 大杉漣 田中哲司 根岸季衣 風間舞子 田鍋謙一郎 中沢青六 徳井優 長曽我部蓉子 つぐみ 阿部美寿穂 蜷川みほ 川屋せっちん 小倉一郎 光石研 哀川翔

笹原、林田、酒井、杉尾の4人が観ていました。

林 田 あの時代に、浮浪児になった弟、あの世代です。昔がよかったというのはきらいです。でも、あの時代に郷愁というか、その点が映画に出ていました。アメリカ人の描き方が少しダサイです。みなぎっているところがよく現れていなした。この作品は意外でした。坂本監督の系図から離れているので。主演の4人は格好良かったです。

笹 原 坂本監督の新作で期待していました。出だしから乗れました。萩原雅人はよかったです。バンドマンの交流がテンポよく描かれていました。話のもっていき方もおもしろかったですが、最後少しまとめすぎたかなと思いました。全体的には画面にも張りがあって、観てて気持ちがいい作品です。高く評価します。

杉 尾 少し、物足りなかったです。悪くはないけど、今ひとつ入り込めなかった。誰に感情移入していいか分からなかったです。人物がさらりとなぞっていました。もう少し深みがほしかったです。エンドタイトルに自分の年を感じました。小さな居酒屋でのエピソードがおもしろかったです。哀川翔はもう少し声が低い方がよいのでは。なんか軽い感じがしました。

酒 井 坂本監督の系図とはかなり離れていたと思います。この監督のイメージは、「どついたるねん」「顔」「ぼくんち」といった関西弁丸出しですが、こんな作品も撮れるのだなと驚いています。世代的に僕と同じなのに、戦後のあの焼け跡の場面の雰囲気が出ているのはすごいですね。この作品を作った意図はあまり分からないのですが、今の覇気の無い若者に戦後は貧しいけどもっと覇気があったことを示したかったのと、イラクの戦争に対する批判を彼なりに朝鮮戦争にダブらせて行っているのかもしれません。この試みがうまくいったかは疑問ですが、ちょっと、エピソードが多すぎて消化不良気味です。僕は、最後のエンドクレジットが気に入りました。

笹 原 「ぼくんち」はだめでした。「KT」も今回と同系列の作品だと思います。松岡俊介がうまかったです。哀川翔と大杉連も存在感がありました。それから外人の2人もよかったです。ダニーボーイのところはあまり悪いとは思わなかったのですが、浮浪児のエピソードは駄目でした。すこし、エピソードが盛り込みすぎです。それから僕はフィクションだから最後のシーンはいらないと思います。

あと、坂本監督のこれまでの作品とか、宗教の問題とか愛国心とかいろいろな話題が出てきました。


嗤う伊右衛門

【データ】2004年 2時間8分 配給:東宝
監督:蜷川幸雄 エグゼクティブ・プロデューサー:角川歴彦 企画:江川信也 プロデューサー:中川好久 道祖土健 椿宜和 前田茂司 原作:京極夏彦 脚本:筒井ともみ 音楽:宇崎竜童 撮影:藤石修 美術:中澤克巳
出演:唐沢寿明 小雪 香川照之 池内博之 六平直政 松尾玲尾 清水沙映 MAKOTO 井川比佐志 新川将人 妹尾正文 大門伍朗 冨岡弘 谷口高史 浜口和之 藤村志保 椎名桔平

笹原、林田、杉尾、小野が観ていました。解説をしてくださる横山さんが欠席でどうなることやら。

林 田 理解していません。本当の良さとかあらすじとか。よく最後までわかりませんでした。どろどろの割には小雪は、勇ましくてどろどろではなかったです。

笹 原 「青の炎」が悪かったので心配したのですが、この作品がよかったです。唐沢はおとなしくてよかったのと、小雪もよかったです。話はおもしろかったのは筒井とみの脚本が良かったからでしょうか。

杉 尾 雰囲気も話も大変好きでした。一流の舞台劇をみているようで、このおどろおどろしい部分が好きでした。全体の作りが気に入りました。伊右衛門が子供を抱いて、怒りの目になったところがすごかったです。小雪も香川照之もよかったです。顔の皮をはぐ場面はみれませんでした。どろっとしたものが好き私にはでぴったしでした。

小 野 結構好きです。蜷川監督としては、四谷怪談を扱うのは2度目なんですが、京極の原作も好きだったので、なかなかよく映画にしてくれたかなと思います。キネマ旬報の対談で蜷川監督はヴィスコンティに言及していて、「晩年の彼の室内劇的になっているのは不満である。映画はもっと映画的な可能性を追求すべきである」とか言っていましたけど、この作品は室内劇的でした。かわいいところがあって、よかったのではないでしょうか(時間がないので要点を得られないまま帰られました)。

林田さんの疑問に答えられる人はいなくてだんだんクエッションの輪が広がっていきました。


今月の一本

林 田 「アバウト・シュミット」 おもしろかった。

志 賀 JポップのCDの販売規制(海外からの)

矢 野 「シービスケット」

笹 原 「赤い月」意外によかったです。

杉 尾 「ぼくんち」「シービスケット」

酒 井 「赤目四十八瀧心中未遂」「ヴァイブレータ」

小 野 「ジョゼと虎と魚たち」

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