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2000年1月号(153号)

参加者:臼井・鬼束・加賀・川越・笹原・杉尾 書記:笹原

【警告】今回の合評会の中で「シックス・センス」の『秘密』の部分を話しています。今から見る予定の人は見てから読んで下さい。

シックス・センス

監督 M・ナイト・シャマラン 主演 ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント(子役)

鬼束 この映画にはある「秘密」があリます。と最初に字幕が出ます。私は全然(秘密を)知らないで見たので面白かった。知らないで見た方がいいですよ。でももう1回見ようとは思わなかった。秘密は最後までわからなかった。

杉尾 私は最初の方でそうじゃないかな、と思った。見ている間は、少年が悩んでいる物語の方にはいりこんで、彼が生きていないという事が気に掛かって邪魔になるということはありませんでした。彼が他の人と話しているので,思いすごしかなとも思った。ただ用意してある食事が1人分だったりするところで、おかしいなと思いつつ、少年と彼の話にはいりこんでしまい、死んでいるかどうかはどっちでもいいと思いながら見ていて、ラストで種明かしがあった時に、あ〜やっぱりと思った。
 その時に、ちょっと待て、これはあらさがしせにゃいかんと思って、もう一度見に行きました。そしたら、あらがなかったんですネ。奥さんとも話していないし,少年の母親とも話していない。彼が話しているのは少年だけ。でも、そんなことはどうでもいい。彼が小児精神科医として、幽霊が見えるという特別な力があるだけで悩む少年の気持ちをほぐして助けていく部分が面白かった。

臼井 何もあれへんけど、見始めて1時間くらいでわかってもうた。で、あとはしょうもない映画やった。というか,最初から,何かが違うと思うた。

笹原 最初は退屈だった。彼が銃で撃たれた後の話がなかなか進まないなと思った。さっき、杉尾さんが言ったように、語が興味深くて、最初の字幕にあった「秘密」のことはすっかり忘れていた。最後に、あ!これが「秘密」なんだと思った。つまり最後までわからなかった。私が一番だまされたのは、レストランの食事のシーン。彼女が待っていて、彼が後から来て話をする(実は一方的にしゃべっている)所ですっかりだまされた。もう一度見て確認したい。でも、最初に、へたにあんな字幕を出さないほうが良かったのではないか。

臼井 探偵小説なんちゃう?トリックがわかった時点でもうあきまへんな「将軍の娘」も「秘密」もおんなじや。

杉尾 1回目観た時、事故で渋滞している時に車の中で、少年が母親に打ち明ける所でほろっときた。で、2回目はどうかな、と思っていたら、やはり同じ場面でほろっときた。なんでですかね?

笹原 あそこの場面は予告篇でいやという程見せられたので、やっとこの場面にきたか、という感じてした。

杉尾 あの場面でせつなくなって2回目も泣いてしまった。私は、霊感があって幽霊が見えるという部分は、そういうシチュェイションとして作ったっていう感じでしか見なかった。2回見たのはどんな感じだったかを確認したくて見にいったのであって、映画の内容がどうのということとか、秘密があったから良かった、というわけではなかった。

鬼束 僕ね、最初寝てました(笑)。退屈だったんでしょうね。話の内容は 2回目見た時にわかった。

杉尾 私は幽霊が出る前の方が面白かった。少年と彼がどういう風にわかリ あってゆくか、という所に興味があって、前半の方がドラマとして面 白かった。

笹原 少年が母親に言えなくておこられるところは、つらくて観ていられな かった。こういう時、子供は言えないんですよね。

川越 ところで、彼の死因は何?(川越さんはこの映画を見ていない)

笹原 彼の昔の患者が家に侵入してきて、彼を逆恨み(?)して、彼は撃た れてしまう。撃たれたところでフェイドアウトして1年後に飛ぶ。わ かった人は、ここでわかったらしいね。

杉尾 なんで1年が必要だったのだろうか。

川越 やっぱり、ちゃんとした幽霊になるのに修行期間が必要だったんじゃ ない(笑)。

(ここで、開かないドアはどの部屋のドアだったのかという話が出るが結論 はでなかった)

臼井 何がおもろいのかわかれへん。30分くらいでよかったんちゃう? 少年の卑屈そうな眉毛と垂れたような目が映画をさらうんやね。今にも泣きそうな目をしとる。あいつ、顔で得しとるで。でも死人って、あちこちいてると思いますよ。人類が記録に残して3千年たつわけやから。それこそ死人だらけでぎゅうぎゅう詰めやと思いますわ。

笹原 少年には、やり残したことのある人だけが見えたんじゃないですか。

臼井 それやったら、広島とか行ったら、うじゃうじゃ死人がいるんちゃい まっか。世の中、成仏する人間の方が少ないんちがいます?彼が少年に言う、死人と仲良うなりなさい、という解決では、恨み言われるだけでっせ。あほちゃうか。設定に無理があるとは言わへんけど。もっとようけ死人がいてもいいんちゃうかな。ほかの人には見えへんわけやからね。

杉尾 エキストラの死人がいっぱいいるとか(笑)。

川越 少年は彼が死人て分かってるの?

臼井 わかってまっせ。そやから「目の前にいる」なんちゅうこと言うとる。

杉尾 頭を撃ち抜かれた人は頭に穴があいたままなのに、どうして、彼だけ がきれいな体なんでしょうか。

笹原 最後に、自分が死人と気付いて、背中を見ると、穴があいているので 驚くんですよね。もっと早く気が付きそうなもんやけど。

川越 貫通したって銃創が残るよ。

杉尾 自分が死人と気付いた時点で、それがわかる。本当は肉体なんてなか ったんだから。

臼井 あそこで当然のようにタイミングよく音楽がなるわけや。あれには笑 ううてしもた。

(ここで大作の予告編が多すぎてうんざりする。「ターザン」など2パター ンありそれぞれ見飽きた、という話で盛り上がる)

臼井 最後の1点に向かう映画のような気がした。それが、つまんないんですよ。観てていろんな要素とか映画の細かい細部みたいなものが僕には見えなかったんですよ。そやから、今、話を聞けば聞くほど、なんやあれは伏線やったんやと。伏線ぐらい誰かてはれますから。映画はそんな伏線はってはいけない、というのがぼくの持論なので。それと恐怖に関する感覚がちょっとずれてる。

※遅れて来た加賀さんのコメント
加賀 「秘密」は指輪が落ちるでわかりませんでした。映画はとても面白 かった。最後まで監督の術中にはまってしまった。


黒い家

監督 森田芳光 主演 大竹しのぶ、内野聖陽、西村雅彦、小林薫

鬼束 原作読んでたんですけど、映画は別物として見た。原作も最後の方で それはないやろ、という所があった。映画はそんなに悪くはなかった

杉尾 まあまあ面白かったです。ただ小林薫が迫力不足でした。菰田幸子のイメージはもうちょっと声の低い、ぶよぶよっとしていて買物かごさげて包丁持ったような人を考えていたので、頭の上から声を出す大竹しのぶには初め抵抗があったけど、途中からはそれに慣れてきたのですが、怖いよりも可笑しかったですね。最後のボウリングのところは迫力があった。ボウリングの玉を何個持ってきたのかと思った。ボウリングの玉を(2階?)のトイレまでどうやって投げたのか、考えたら可笑しくてたまらなかった。笑わせていただきました。

笹原 私は原作を読んでいないのですが、原作を読んだ人が皆、面白いと言っていたので、期待して見に行ったら、全然面白くなかったです。なぜ面白くなかったのか考えてみたら、主役の内野があまリにもオドオドした演技で、のんぴリしているのにコえれなかったからではないかと思う。しかもクライマックスの大竹しのぶとの対決が見物なのに、のんびリしていて、お前早く逃げろよ、と言いたくなった。原作はどこがそんなに面白かったの?

鬼束 原作は主役が内野君みたいにオドオドしていない。

笹原 という事は、監督の意図やね。

杉尾 私、石橋の蓮ちゃんがずっと見れたのが良かった。

(ここで大竹しのぶの演技はやリすぎか、という話題で盛り上がる)

臼井 大竹しのぶは過剰演技ちゃう?

杉尾 でも、この映画に普通の人は出てこない。

笹原 前作「39」も一緒なんだけど、森田監督は、撮影から凝りすぎ、ま ともに映せばいいのにと思った。

(ここで加賀さんが遅れて入ってくる)

加賀 監督がやろうとしていることはよくわかった。(他の人の演技と比べ て)かえって小林薫の普通の演技が目立たなかった。

杉尾 ちょうど「秘密」を見た後だったので、いい人に見えた(笑)

加賀 大竹しのぶはおっばい出しても全然色気がなかった。

杉尾 あれ、作り物ですよ。でも、あの演技は凄かった。

笹原 そういえば「生きたい」の大竹しのぶも凄かった。躁と鬱が交互に出る役ができるのは彼女ぐらいでしょう。

臼井 森田芳光も「39」の路線をどこまで突き詰めれば、許されるかっちゅう実験をしとると思う。これが評判悪ければそこまでやね。


梟の城

監督 篠田正治 主演中井貴一、鶴田真由、上川隆也、葉月里緒菜

川越 原作は良かったので、それを映画でどういう風に描くかと思って見た ら、やっぱりダメだった。原作から取捨選択して脚本にして映画化するのだから、その取捨選択ができてない!

加賀 原作に忠実に映画化しているよね。

川越 原作のそれぞれの章でハイライトみたいなところがあるが、ただそれ をつないだだけだもん。つながりができてない。

加賀 それなりに良かった。

笹原 篠田監督が描こうとしたことは、1つは事実に即した忍者を描こうと した。とんぼ返りとかするのはおかしいと。もう1つは我が道を行く 中井貴一の忍者と、サラりーマン風の上川隆也の対比ですよね。

(昔の工藤栄一監督の「臭の城」の話が続く)

臼井 凄い映画をたくさん撮っているけど、工藤栄一がまだ生きているから 評価されないんでしょうね(笑〉。

笹原 CGの使い方はうまくない。でも話は最後まで面白かった。

加賀 僕も面白かった。

臼井 この映画見なくて正解だったかも知れない。

(ここで、大島渚の「御法度」に期待する話になる)

笹原 マコ・イワマツの秀吉がうまかった。

加賀 あんなうまい秀吉は初めて見た。ぴったしだった。

笹原 小萩役の鶴田真由もよかった。

加賀 原作では21才で、もう年頃すぎたとか悩んでいる。

川越 21才で悩んでいるんやったら、私なんかどうなるん?

笹原 それ以前の問題。

川越 人から言われたくないわ!(笑)

【今月の1本】

川越 「バッファロー'66」

鬼束 「バッファロー'66」

臼井 「タイムトラベラー」

加賀 「将軍の娘エリザベス・キャンベル」

笹原 「将軍の娘エリザベス・キャンベル」

今回、一部の発言に対し誇張して再録した部分があったことをお詫びいたし ます。

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