出席者:笹原、杉尾、矢野、加賀、酒井(正) 書記:鬼束
杉尾 ずいぶん前に見たので忘れてしまった、覚えてない。覚えてないけど、ラッセル・クロウが、あんなに年寄りなのかと思ってびっくりして、突然年取ったのかと思ったけど、あれは役作りだそうで。(笑)自然な老け方をしてました。やっぱり大きな力に一人で挑んでいくのは、かなり勇気がいるしリスクも大きいけど、それだけやるだけの価値はあるんだなあと思った。ジャーナリストのアル・パチーノは、ものすごくかっこよくて、『セント・オブ・ウーマン夢の香り』くらいからA・パチーノすごい好きで、中年の魅力っていうか。とにかく、渋い男の世界がよく表れていたと思います。この映画を見て、タバコがどれだけアメリカで嫌われてるんだなと、日本と違って徹底してるなというのがその要素にもなっているのかなと思いました。実話よね。
矢野 途中暴露されるところがあるじゃないですか、ラッセル・クロウの万引きとか何とかを逆に暴かれて、そういうとこがあるときに、結局最後はそうじゃなかったってことになったんですか? その暴かれる時に、「けっ! 何こいつ」と思って自分もその人を信じられなくなって、マスコミに自分が乗せられたの、映画の中の流れで。そして、でも結局違うということなったでしょ、あれでこう自分がほら信じ切れなかった自分がね恥ずかしくなったですね。最後は落ち着いて真実がちゃんとこうなったんだけどもね、映画の中でその一般ピープルといっしょにね乗せられそうになってしまった自分がですよ。こうやって普通の人たちが字だけを読みながらそうなっているんだろうなっていうね、活字だけでは分からない部分がいっぱいあるんだろうなって。だから、ニュースもそうですよね、作られたニュースっていうか、真実はあるんだけどもつくられてこうなってるというのがね。
笹原 真ん中寝てしまったんで、最初と最後しか見てない。
鬼束 僕も途中寝てしまって、細かいストーリーはあまり覚えてない。地味でしたよね。映像が最初から決まっていれば気合いが入るんだけど、この監督のは『ヒート』のときもそうだったけど、出だしは大したことないショットから入って、終わりのクライマックスになるに連れてどんどんよくなるから。そういう見方をしないといけないのかなと思います。これでも、終わりの方のA・パチーノのショットとかかっこよかったもんね。
笹原 予告編を見てたんだけど、何も目新しいものがなく淡々としていて。
〈ここで、オーストラリア出張で出席できなかった酒井(正)さんから、感想が書面で届いていましたので、笹原さんが代読されました>
酒井(正) 「今月見た映画の中では一番の出来です。少し長い映画でしたが、あっという間に時間が過ぎました。ラッセル・クロウは、いい味を出していたと思います。すべて実名で出てくるので、びっくりしました。どこぞの国のr金融腐蝕列島』と大きく違いますね。演出も冴えており、いろんな点で満足できました」
矢野 ニコチンの吸収を早くするというすごく専門的な話があったんですよ。あれ闘いた時こわかった。夫に見せたい映画ですね。(笑)
杉尾 あの後、大学の先生になったし、もうひとりの人は、力があるからどこかの記者がなにかになってた。妥協せずに、突き進むとこがいいよね。凄いとは思わないけど、淡々と底力がある、男の人の映画でした。
矢野 SFでしたよね。宇宙の中で、夫婦で乗ったパイロットがいたでしょ、飛んでってひっかかるかなと思ったけど計算違いでひっかからなくて、そこでお別れしなけれぱならなくなったんですけども、あそこのところが別にストーリーとはあまり関係ないけど、衝撃的なところ、カパっと開くところがあるじゃないですか。宇宙って寒いんだなって初めて知りましたけど。言葉を使わないで、宇宙とか映像で説明するじゃないですか、あそこはいいなあと思いましたね。文字とか数字とかそういう手段じゃなくて。映像で伝える手段を使ってるのが面白いなあと思いましたけど。
笹原 デ・パルマがSFをやるというので、非常に楽しみにしてまして。ティム・ロビンスが、あそこで亡くなるとは思わなかった。奥さんとの別れの場面がぴっくりしましたね。最後に、やっぱり矢野さんが言った、人類がどうやって生まれたかというのを画面でね、宇宙人が火星人が説明してくれるところが凄かったですねえ。なるほどなって、すごい私は感動したんですけども。あとで横山博彦さんから、別に大したことじゃないわ、こんなのSFでいくらでもあったと言われて。(笑)そうかなあって。DNAのモデルでね、いつか人聞が来るだろうと予測してね。全体的に好感持てるいい映画で大好きです。
鬼束 僕は寝てしまいまして、今の話を聞いてたら、ビデオになったらもう1回見てもいいかなって思いました。
酒井(正) 「途中まで良かったです。リアリティーがあって、数年後にこういう形で、火星に行くことができるかもと、思わせるところが良いですね。さて、問題は、後半部分です。なんか陳腐になってきたように思います。火星人が作ったモニュメント(基地)もなんかどこかで観たような物だったし、もう一つ何か欲しかった」
笹原 主役のゲーリー・シニーズが悪い奴かなと思ったら、いい人で。少し違和感があって、前作とか悪い役が多かったから。
杉尾 『インサイダー』よりも前に見たので。印象に残ってるのは、ラストでさわやかな涙を流したんだと思います、確か。すごく気持ちがよかったと思う。別に学があるわけでもなく、そういう女の人がどんどんどんどん大企業相手に訴訟を起こしていって、同じクロムか何かの中毒で体が悪くなってる人たちの家を歩いて、いろんなのを取ってくるんだけど、その人たちと同じ目線に立っていっしょになって話せるので、みんなから信頼を得て、徐々に大きなパワーになっていって、最後にはアメリカで史上最大の賠償金を勝ち取るっていうところがすごくかっこよかったし。弁護士事務所の人もどんどん丸めこんでいって、胸がスカッとするような、女の人がかっこいい映画でした。ジュリア・ロバーツに子供が3人いるんだけども、一人一人証言を取って署名を集めるんだけども、ものすごくハードなスケジュールをこなしててくたびれてるところで、いっしょに同棲してた男の人もたまんなくなって出ていって、子供もいつもいっしょにいてくれたのに最近いっしょにいてくれないって少しすねてたんだけども。あの場面が私涙が出たね、署名を男の子が見ながら、体の悪い女の子のところで、この子は僕と同じ歳なのって言ったのかな。そしたらそうよって言って、そのお母さんも悪いのよって言って、そうかって言った時に初めてお母さんがどういうことに対してがんばってるかっていうことを理解した場面だったような感じで。その時、やっぱりほろっときました。女性が輝いていたのが印象に残っています。
矢野 企業側の弁護士が交渉に来て、裁判じゃなくて和解金で片をつける方向で進めていって。最後、J・ロバーツがぱあ一って言いまくって、向こうがスッと帰るところがあるじゃないですか、ああいうとこがすごかったですよね。足で稼ぐ情報量とですよ、自分の全部の体を使って情報を集めるパワーっていうのは凄いなあと思いました。ああいう人がいないとできないことでしょうし。あそこで働いてたっていうおじさんがいたからラッキーだった。泣き寝入りするところを彼女によって、あそこまでできるんだっていう可能性をね、ひとつ教えてくれるような映画だったなあと思います。最後、ボーナスで200万ドルでしたっけ、いくらかなと数えたら2億で、お!2億! と思って、すごいボーナスだなと思って。桁違いのお金ですけど、他人のためにあそこまでできる女性っていうのはすごいなあと思いました。
杉尾 自分に子供がいたっていうのも、強かったんじゃないやろか。子供も苦しんでた、っていうところも。
矢野 普通だったら何もできないって思うところをよね、あそこまで行動できるエネルギーっていうか、ま、できる人とできない人が当然いると思うんだけども、すごいなあと思いましたね。痛快な感じで。既に仕事をしている事実を作って入り込むあのパワーというかですね。子供がいたのも、生きていかないといけないという、給料を前借りするところとかすごいなあって思いました。
杉尾 いっしょにいたバイクに乗ってた男の人もいてくれてよかったよね。
酒井(正) 「期待してなかったので良かったです。でも、あんまり印象に残っていません。やっぱり、もう少し敵(工場側)が、強くないと面白くないですね。悪役が弱すぎます」
笹原 事実やっとよね。事実だからあまり言えないんだけども、何かちょっとね納得いかないところがあって。でも、本当のことやからね。本当にやったっちゃからすごいなあとは思いますけどね。あの女の人、ジュリア・ロバーツがやったからじゃなくて、ミス・ウィチタ州できれいだった、それは彼女がうまくいった条件のひとつだったと思うんですよ。ま、男性そういうの弱いし、だってすごい胸当してさ、それもひとつのほら、道具じゃないけど使ってたとこもあったし。それと、さっき言った、いっしょに同棲してた人とかの犠牲のもとに成り立っているというところが、ちょっと俺は、それもちょっと気になったしね。誰かがそれには子供の面倒見たりね。
杉尾 それは当たり前。
笹原 一人でやったようにするのは変だなと思ったんですけどね。
〜ジャーン!一大事。ここで録音テープが電池切れのため止まってしまい、録音されてるのはここまででした。これからあとは、書記のメモできたものでご勘弁下さい。尚、次の『クロスファイア』は、やり直して書記がメモするか電池を買ってきてやり直しても良かったのですが、書記はもう手書きする気力がなく、電池購入のひらめきもなかったので、みんなに要点を書いてもらいました〜
弁護士とかいうのを知らないであんなにできたのかなと、弁護士さんの助けもあったし。
矢野 彼女の、文字とかじゃなくて心の中に入っていくのが。
笹原 もちょっとこの人はないのかというのはありました。女の人の映画ですね。
酒井(正) 「原作は面白かったと、いろんな人から伺いました。映画は? こんなものかしら。特に印象は残っていなかったです。火の玉が出てきて、「ガメラ」を思い出したのは私だけでしょうか」
矢野 面白かったです。途中ちょっとわかりにくくなったけど。青木淳子役の矢田亜希子さんが美しい。多田さん役の男の人は、もうちょっとしっかり演技して!という感じてした。木戸浩一役の吉沢悠君がかっこいいなあって。邦画史の中で一番強い女の子? 女性のような気がします。顔がふくらむところが嫌だなと思いました。雪がパチパチッてはじけるところがきれいでした。
笹原 映画を見る前にメイキングとかを見て、もう見たなと思ったけど、映画はすばらしかった。この緊張感は、今年一番。主役の矢田亜希子がいいし、話のつながりというか持っていき方がいいなと思いました。永島敏行が悪役というのは、少し弱いなど思ったけど。演出、脚本、撮影、音楽、パーフェクトでした。
加賀 久々に「パワー」のある邦画でした。原作におとらず、面白くスゴかった。悪名の永島君がもう一つでしたね。桃井さんは、良かった。
鬼束 原作もその前の短編「燔祭」も読んでるのですが、両方いっしょにしたストーリーになっていて、少し詰め込み過ぎだと思いました。少女との超能力対決なんか原作にはないし、終わりのほうが長くて、少し寝てしまった。ガーディアンの淳子への反応がまるっきり違う意図だったという展開はなかったと思うけど。原作のほうがすっきりしていて、映画を見て改めて原作の良さを感じました。
笹原 『2番目に幸せなこと』父親としての気持ちは分かったのですが、ゲイじゃないのでその気持ちは分かりませんでした。
矢野 『サイダーハウス・ルール』と『ザ・ハリケーン』も良かった。
杉尾 東野圭吾の本『パラレルワールド・ラブストーリー』
鬼束 『サイダーハウス・ルール』
酒井 『ギルバート・グレイプ』先日、衛星放送でやってて最後まで観てしまいました。やっぱり良かったです。この「家族愛にあふれる映画」の監督の暖かいまなざし。「アメリカン・ビューティー」と正反対です。