参加者笹原、加賀、鬼束、杉尾、酒井(正)、矢野、藤本;書記
監督:阪本順治 脚本、阪本順治、宇野イサム
酒井 あんまり期待して無かったんですけど、非常に面白かったです。恐らく今年見た邦画の中では3本の指に入る傑作だと思います。まず何が素晴らしいといって、主人公の藤山直美の演技が非常に上手くって、最初の暗い雰囲気から、旅を経ることによって、だんだん社会性を獲得して、非常に生き生きとした顔になっていく所が印象的でした。共演している人もそれぞれに非常に演技が上手くて、はまり役で、ほとんど僕は文句を付けるところが無い程面白かったと思います。
加賀 一応面白いという風に聞いて行ったんで、凄い期待して行ったんですが、その期待どうりの中々良い作品でした。最初、今おっしゃいましたけど、暗いクリーニング店の2階のミシンに向かってるおばさんから、ずっと旅をするにしたがって、所々のエピソードがあって、だんだん魅力ある女性になっていく感じが凄く良かったですね。脇も凄く良くて、殆ど半分は脇で生きている様な感じの映画だったという様な感じがします。あと阪神大震災とかの絡ませ方とか上手く作ってあって良かったなと思いました。最後の泳いで渡るシーンは、あれしか無いと思いながらも、以外さに驚きましたけれども。
鬼束 傑作。オールタイムベスト1−とおもっていたが、帰って少々、岸部一徳って何の役だったっけと思い出したら、あの首吊ってたシーンの首吊りの様子が何か気になってはっきりしない。あとは大楠道代が非常にいいし、「遠くを見ずに、近くを見るんや。」と言うシーンは、何て言うかなあ、一度本気で考えたことが有る人にはたまらなく良い台詞だ。チラシを見ながら主人公が、佐藤にラブコールする台詞も、相手に負担をかけない良い台詞だったなあと思った。「笑いすぎ」のシーンは笑えるし、NHKのTVでこのシーンだけ見て笑ってたから、2回目だったんだけど何回見ても可笑しいシーンだ。ラストも、泳いででも逃げるいうのが可笑しいし、嬉しいし。と…感想がいつのまにか大阪弁になっている。
笹原 やっぱ、藤山直美の存在感が大きくて、この映画は殺人の話なんだけども、最後まで見せてくれたなという感じがしました。さっき皆も言った、脇が良いんですよね。大楠さんも勿論なんだけども、阪本順治がこの後に撮った「新・仁義なき戦い。」を先に見さしてもらった後なんで、同じ配役撮るから、佐藤浩市・岸部一徳、出るんだけども、『顔』の方がずっと三人とも生き生きしてるんですよ。それが非常に印象に残りました。これは傑作だと思ったのは、ホームページにも書いたんですけど、主人公の心象風景を如何に描くかというのが、その映画の大きな点であって、この映画も藤山直美が最初にサファリパークの様な所に行ったところとか、あとは牧瀬里穂が何回か出てきて死んだ映画ね、鏡の後ろから出てくるところ、あの辺が非常に上手いなと思った。ゆったりとしたストーリーの中に、そういうポイントを押さえてあるなというのが非常に印象的でした。
杉尾 まあまあ、物凄く期待して行ったので、まあまあ面白かったです。藤山直美と牧瀬里穂がどうしても姉妹に見えなくて、腹違いやろか思う位似てなかったかな。笹原さんも言われたけど、一日ずっとミシンばかり踏んでたんだろうけど、その中で色んな空想をしてて、踏んでた生地の柄ですよねあれ、動物のそれを見ながら楽しい空想をするていう部分に、この人の本来は明るいという部分が少しはあるんじゃないかなという部分を見せてくれた様な感じがするんですけど。藤山直美だからこそ、この映画がこれだけ見応えが有ったのかなていうのは思いました。何かそのもの、藤山直美じゃないと出来ない様な感じで、妹と喧嘩して赤い靴下カバーだけで飛び出していくところの格好とか、あの太り具合とかね、とても憎めなくて、愛しい感じですよね。あそこまで罵倒されて、つい殺しちゃったんだけど、その後逃げながらどんどん変わって行く所は、見てて、少しずつ魅力的になって行くなというのが良く出てたと思います。
あと、追っ手て言うんじゃ無いけど、警察の手が近づいて来た時に、あの駆け出して逃げて行くところの後ろ姿が印象的でね、あれも面白かったです。それと勘九郎がああいう役で出て来たのが新鮮で、あのシーンは凄い印象的でした。この監督さんのは「ビリケン」と「どついたるねん」とこれしか見て無いんですけど、「どついたるねん」も最後がきちんとこうなるていうふうに見せずに、中途半端で終わっちゃってて、これも泳いでるシーンで終わっちゃってて、その後は見てる人の空想を掻き立てるていうか、そこら辺の作り方が、見終わった後はちょっと物足りなかったんだけど、後で考えてるとそれがかえって良かったかなっていう感じもしました。まあまあの、藤山直美を見るにはとっても良い映画かなって、笑えるし、ちょっと切ない部分も有るし、良かったです。
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
酒井 非常に映画の作りとして僕は優れた映画だと思うんですけど、好きか嫌いかっていわれると、あんまり好きな映画じゃ無いですね。なんであんまり好きじゃ無いかと言うと、先ずミュージカルなんですけど、僕はミュージカルっていうのは、深刻な話じゃ無くて、楽しい話でないと、ミュージカルのイメージが湧かないんですよね。非常に独断と偏見かも分かりませんけども、ミュージカルと言うとドラマしながら急に歌い出して、人が踊りだすていう、こういう感じはどうも楽しい話しで無いととても出来なくてこの暗ーい、皆が、殺人も絡んで話しですね。急に裁判所で人がですね、タップダンスを踊ったりというのは、ちょっと僕のイメージとはかけ離れててですね。。あと、映画の撮り方は非常に良いんですけど。自然光で撮ったんですか? あのタッチはむしろ好きな方じゃ無いんですよね。あれがよけい映画を暗くしてる原因じゃないかなと思うんですけどミージカルていうとどうかな?てイメージが有るんですけど。非常に貧乏臭くて、深刻な話を取り上げてて、どっちかと言うと非常に解釈に困るんですけども、映画の優れた所は大いに認めるんですけど、あんまり僕は好きじゃ無かったなーという感じはしてます。
鬼束 出だしで寝ちゃったんですよ。何か話があまり無い様な所だった様な気がして、一生懸命頑張ったんですけど寝てしまって、で目が覚めたのが工場でのミュージカルシーンですね。あすこから"おっ!"と本気になってきて、あとはクライマックスまでちゃんと見れました。絞首刑場に行くんですけど、あそこでの歌は、ちょっと引いて見ると、好い加減にせえよと言ってもみたくなる。展開のテンポが乏しいというか、もちょっとテンポがあれば楽しく?見れたかな。時代的にはアメリカで絞首刑だったから昔の話だったんですよね。もう少しちゃんと調べたら無罪に分かりそうな罪だった。物音たたく音とか裁判所のスケッチする鉛筆の音とかからリズムを感じてダンスを連想するという、設定は良かったと思うんですよね。連想という事でやったんで。
あとカトリーヌ・ドヌープがどうも何か俗っぽくて僕は馴染んでないなと、あの中では思いました。J・M・パームは『グランプルー』以来久しぶりで見て、あー役者やってたんだと思った。ドキュメンタリータッチを監督が意図したとチラシに書いてあった様な気がしたんですけど。カメラが動くんですよ。あれ見づらくてですね。あんまりしない方が良かったんじゃ無いかな。さっき酒井さんが話されて思ったんですけど、ミュージカルて今まで明るいのていうのがあったけど、こういう暗いというか、まじめな話でもやれるかもしれなく、この作品はあんまり僕も成功してるとは思わないんですけど、そういう方法でもやれる可能性は有るかもしれないと思いました。これから先ですね。
笹原 正月の一発日で、これを見まして、2001年の幕開け、21世紀の幕開けに。私たまたま水曜日3日に見たんで、皆見た女の人達が多かったんです。見終わってエレベーターに乗ったら、皆同じ様な意見で、正月から見る映画じゃないよな、来る必要なかった。皆おなじような意見でした。たぶんあの10人見たら、9人位はだめだと思うよ。ただほら、カンヌ映画祭でグランプリ取ったていう非常に評価された監督なんで、ああいう映画もあって良いと思うけど、何もその松竹の大きな映画館でかけなくても、もっと地味な所でやる様な映画じゃないかなーという気もする。ミュージカルはミュージカルなんだけども、実験的な映画だしねーとおもってね。さっきの『顔』じゃ無いけど、同じ様に主人公が殺人するという夢想癖があって、それがミュージカルですけどね。何か映画の形が全然違うなーと思いながら、話を聞いてたんですけど。あんまり言う事は無いんですけど。昨日『奇跡の海』もTVでやってたんで、あれもおと年ベストテンに入った様な映画で評価された、同じ様な話やなーと思ってね。鉄道のところは、デジタルカメラを100台使って撮ったというんだけど、そこまでしなくても良かった様な気がするんだけども。裁判所でタップダンスを踊るのは、ジョエル・プレーという有名な人ですよね。それがじゃあどーしたのと言われれば、こういう映画もあると言う事で、いいんじゃないですか。
杉尾 今受験生をかかえてるお友達が、何か気分転換がしたいから、凄く感動出来るハンカチ持って行ける様な映画ないって言ったから、あるある絶対ハンカチが要るらしいよって言って、凄い賞も取ってるし、お奨めやと思うと言って、誘って行きました。そして見てる途中から、何て言ってあやまろう、どうしょうどうしょうとか思って見てたんですけど、まあ後で言ったら、案の定自分が息子に対する愛情とかで重なっちゃう部分が沢山あって物凄く滅入りましたって言われて、だけどみなけりゃ良かったという事ではなくって、それは見て良かったーて言ってました。いつもいつも映画見る人じゃ無いですけどね。で、私は非常に期待して行ったんですけど、カメラが動くもんで気分が悪くなって、吐きそうな酔うというかそんな感じで、前半は入り込もう入り込もうと思って見てたけど、なかなか入り込め無くて、お金が盗まれたあたりからかな、入り込めたのは。ミュージカルの部分なんだけれども、話が途中で切れるんですよ。せっかく入り込もうとしてる部分でミュージカルが始まると話がそこで止まっちゃうもんだから。最初のミュージカルの部分はまどろっこしくて、彼女が隣で「ハー」て溜め息を付くもんだから、そればかりが気になってあれだったんですけど。
でも頑張ってる映画だなとは思いました。独特の雰囲気があって、ビョークがあの人独特のを出してたなと思いました。良かったと思いました。最後の絞首刑にあう部分は涙が出て立てない位衝撃的でしたね。見てられない、いつやられると思うと見てられなくって、最後結局死んじゃったわけだけど、そういうので言葉もなく。彼女に謝ろうとすると涙が出そうになるんですよ。暫く違う話しをして、喫茶店で、でもう一回その話を言った時に、少し落ちついたら何で助けれんかったんちゃろか、息子の目を治したいからというのもあるけど、やっぱり自分も生きたいじゃ無いですか。それ程の事あれかなーて思うと、ちょっとリアリティーにかけるよねーって。何とかなったはずやとにねって、無理やり死んじゃったねーていう感じがありますよね。だって、いじれば良いじゃないその死刑が確定する前に、裁判の時にいじればいいっちゃわ。殺さんで良いわー。ビョークの魅力は出てたという感じ。目が見えない役だったでしょ、全然違和感がないんですよね、目開いてて、見えない演技をするけど、演技にみえない、本当に見えないんじゃないかというかんじ。
この後、暗い映画とか感情移入出来ない映画等々の話しで、意見はけっこう出て盛り上がりましたが、省略させていただきます。
酒井 『サーディン・ディズ』
加賀 『オーロラの彼方に』
矢野 『バトル・ロワイァル』
鬼束 CDウォレス・ルー二一の「ノー・ルーム・フォー・アギュメント」
笹原 『バトル・ロワイァル』
杉尾 本上原隆著の「喜びは悲しみの後に」
藤本 CDザ・ビートルズの「ザ・ビートルズ1」