例会リポートのトップへ

2001年3月号

出席者:酒井 笹原 杉尾 書記:加賀

13デイズ

【データ】“Thirteen Days” 2000年 アメリカ 2時間25分 日本ヘラルド映画配給
監督:ロジャー・ドナルドソン 製作:アーミアン・バーンスタイン 脚本:デヴィッド・セルフ 撮影:アンジェイ・バートコウィアク 音楽:トレバー・ジョーンズ
出演:ケヴィン・コスナー ブルース・グリーンウッド スティーブン・カルプ ディラン・ベイカー マイケル・フェアマン フランク・ウッド 
【ストーリー】一触即発のキューバ危機を乗り越えたケネディ兄弟と側近たちの13日間を描くサスペンスドラマ。

酒井 観て1カ月以上になると思うんですけど、いまだにある程度印象が残っているということは、僕はある意味では優れた映画じゃないかなと思う。2時間20分という、ちょっと長めの作品なんですけど、そんなに退屈せずにあっという間に観ることができたというのは、非常によかったと思うんですけど。何が一番よかったかというと、いつものケヴィン・コスナーが脇役にまわったということが僕はあの映画がリアリティをもってるというか、そういうところが評価できると思います。撮り方も非常にドキュメンタリータッチで撮ってますし、ケネディの兄弟の性格というか、そういうのが本当にこういうことが起こったに違いないというふうな感じに観客をあたえるようなところ、それにドキュメンタリーに近いようなところがあの映画の成功したところだと思うんですよ。それからそんなに無駄がなくって時間的な経過でどんどん追っかけていくというところが、評価できるところなんです。そういうとこですから、たとえば女の人が出てくるとか、あんまりそういうのは無いんですけど、そういうある意味では渋い映画だということだと思います。
 ちょっと説明がわからなかったのは、キューバ危機が起こる前にケネディはビックス湾でカストロを倒そうとして失敗しているんですよね、そこの経緯がちよっとわかんないですよ。それからキューバに対する話がですね、ちょっとそこの前振りの段階が理解できてないと突然ミサイルが配備され、さてどうなるという話から始まってもですね、それまでの経偉が全然僕らにはわからないもんだから、なぜキューパがあそこにミサイルを配備したんだというところが、ちょっとわかんなかったですね。これはやっぱり我々日本人ですから、アメリカ人は歴史で学んでるかもわかんないし、そこがちよっとひっかかったとこです。もうちょっとたとえば最初の部分でほんの30秒でいいですから、作戦が失敗したようなところを見せてもらってそして飛行機が飛んで、要するにミサイルが配備されてるぞというような、イントロダクションみたいなところがあれば、よりもう少し解りやすかったんじゃないかと思います。いずれにしても立派な作品だと思います。

笹原 キューバ危機は世界史とかで知ってたつもりなんですが、全然知ってなかったっていうのがよく解りました、ほんと勉強になる映画で。わかってることだし、結果もわかってるのに手に汗握るっていうのは、演出カだなと思って、いっぺん話が終わったかと思ったらそうじやなかったととか、すごくよくできたドラマで、でも実際にあったことだというのが不思議な感じでした。さっき酒井さんが言ったようにケヴィン・コスナーが表に出ないていうか脇役っていうとこが良かったなという感じはしました。

加賀 ドキュメンタリーでキューバ危機は何度か見たことはあるけど、こうやってドラマにしてくれるとまたわかりやすくてよかったですね。2時間20分もあると途中で時計を見てしまうんですが、今回はそんなこともなく楽しめました。ケネディ兄弟が良く描かれていてソビエトとの駆け引きもはらはらしながら見ました。最初のあたりでけっこう難しいこと言ってたんで、字幕を読んで理解しながら画面を見るのが大変だった。でもなかなか上質で良い作品だった。

酒井 ケヴィン・コスナーが表に出てくると、どうしても芝居をしているという感じがしてだんだんリアリティがなくなってくるですよね。だからケヴィン・コスナーっていうと「ダンス・ウイズ・ウルプズ」とか「フィールド・オブ・ドリームス」のイメージが強すぎますから、一歩引いた形ていうのがあの映画の成功したところじゃないかと思うんですけど。

笹原 ケヴィン・コスナーがやった役の人は、まだ生きてるんですか?

酒井 もう死んでます。

笹原 ということは、実際にあった会話というのはわからないですよね。

酒井 原作者はケヴィン・コスナーが演じたオドネルの息子と友達で、それを通じてインタピューができた。ですからかなりリアリティのある部分というか、あまり知られてなかった部分も含まれているてことなんだということです。


バトル・ロワイアル

【ストーリー】全国の中学3年生の中から、無作為に選ばれた1クラスを最後の1人になるまで殺し合いをさせる、高見広春の同名小説の映画化。

酒井 観て3週間くらいになります、なぜ3週目ということを一番最初に言ったかというと最初観たときと今とではかなり印象が違ってきています。ほんとはもう一回観る機会があると良かったんですけども、ちょっと今都城とか延岡まで行く時間がないので、残念ながら一番最初の印象だけで述べさせてもらいます。一番最初観た雰囲気というのは、非常に面白くって興奮してて非常に褒めてたんですよね。あの映画を観たときにまずビートたけしの先生の感覚とか今風で、70才の監督があんな新鮮な映画を撮れるのかと、非常に驚いたんです。それと何やら知らないけど、どんどん中学生が殺しあって死んでいくと、そういうふうなシーンを見ることによって、もしかして死に対する意味とかそれとか友情とか、そういうふうな人生において非常に重要なもの、深い意味合いをいっぱい語ろうとしてるんじゃないかという気がしたんです。それに例の大人たちのだらしない態度、そしてこのラストシーンですね、ナイフを持って都会を駆け抜けていくという、そういうのを見てこれは非常にメッセージ性が強いんじゃないかと思って、ずっと考えてたんですね。
 で考えてこれは一体何を言いたいんだろう、一体どうなんだろうということを考えた結果、実は何もないじゃないかと言うことが解ったんです、つまりそういうふうな素振りを見せてるだけで何も語ってはいない、ただそういうふりを見せてるだけなんですよ。それでようするに勝手に僕らは勘違いしてるんじゃないかと。ということでやっぱり結論的にまわってみると、ようするに今までの「仁義なき戦い」とまったく変わってないんじゃないかというところに僕の結論はおちついたんですよ、ですからそういうふうな仮面をいっばいかぶってるような映画なんですね。だからある意味では騙されたような感じなんですけど、本質的には何も変わってないし、深作の感覚が一番最初新鮮と思ったんですけど実は非常に老獪だったと、さすが70才の監督だと考え方が変わったんですよ。そういうふうにけなしてるような言い方ですけど、まだ非常に評価はしてます。インパクトも強いですし、素晴らしい作品だと思うんですね、撮り方も非常に面白いですし。ただやっぱりいろんなあらがあるし、長い小説を2時間のコンパクトにまとめたという話ですから、どうしても描き切れないところがあったんじゃないかなという気はしてます。

笹原 私は最初に観たときに実はそう思ったんですよ、深作は設定を変えてるだけで自分がやりたい映画をやってるだけだって思ったから、2回観に行ったんですよ。これは前も言いましたけど、単純な痛快娯楽活劇なんですよ。ただ中学生とか殺し合いとか原作の設定を借りてるだけなんですよ、そういう意味でですね。私はあえて不遜なことを言いますが、おもしろかったと。もっと中身を言いたかったんですけど、細かく言うと「仁義なき戦い」に戻ったなという批評が多かったけども、私に言わせれば「仁義なき戦い」よりもっと前なんですよ。その前の部分に戻ったんですよ、そういう感じはしました。ただ撮り方は「仁義なき戦い」と変わらんとこあるから、こないだ中瀬君が言ったように「一緒じゃないか」と言うけどさ、そのとうりなんですけど。一番深作がのってる時代に、きれいに戻ってしまったなっていうのがおもしろかった理由だと思います。映画の入り込みは、たけしの存在感とビデオのお姉さんのキャラで救われてる。これは原作には出てこないんですよ、だからその辺がうまいなと思った。
 それと白眉は、灯台の銃撃戦と相馬光子の最後です。これは2回観ましたけど2回とも素晴らしいです。それと音楽、クラシックの使い方ですね。映画の中では、川田(山本太郎)と桐山(安榛政信)そして相馬光子(柴咲コウ)が圧倒的な演技をしてますね。七原の父親の自殺とか、レストランで会うとかは原作にないんですけど、これはいらなかったと思います。それからラストのたけしの死に際ね、あれはちょっとふざけすぎ。そこはたけしの映画じゃないんだから深作もちょっとやりすぎたなという感じはしました。ちょっとわからなかったところは、三村がウィルスでコンピュータに入りますよね。でコンピュータが混乱して、そのあとどうなったのていうのが描ききれてない。実はそのあと原作を読んだんですが、原作は素晴らしい。映画は42人描ききれてない、はしょってるとこもあるんだけど、原作は一人一人組から描いてある。それがまた素晴らしいんですけど、でもね映画はあれだけ短くても、だいたい観ただけでよめたからね。そこはやっぱりすごいなと思った。短い時間でキャラをある程度描き分けてるというのは演出カやなと思いました。

加賀 原作も「仁義なき戦い」も観てないんですが、アクション映画としてはおもしろいですね。けど結局は監督が今の世相をうまく利用して作ったくらいにしかみえなかった。今回賛否両論あったけど、批判する人の気持ちもわからないでもないかな。前作の「おもちゃ」も良い映画だったけど、じいさんが若い女性を描いてるみたいな感じがいなめず、いまひとつだった。でもそれなりに楽しめはしました。

杉尾 言いたいこともだんだん薄れてきましたが、あまりにも時間が経ちすぎて。映画の感想じゃなくなってしまうの、どんどん自分が突き詰めていくと、その映画がどうだって言うことじゃなくって、全般的なそういうものに対するちょっとした抵抗感という話になっていくんですよ。「バトル・ロワイアル」の作品に対しての話からどんどん離れていくんですよ、自分がそれについて考えてると、だから最後でお順いしますと言ったんですけど。記憶をたどって正直一番最初に誰からも何も聞かないときに、見終わった後の感想は“ケッ”て言うか、確かにビデオのお姉さんが出てくるとこは面白かった。でもよくある表し方だなあとは思ったんですよ。そのギャップを作って笑わせる部分とか、面白かったんだけど。でもそんなに新鮮ではなかったのかなあ、あのとき観たときはね。みんなが殺しあっていく部分も、何だか子供の…子供映画でよくあるじゃないですか、戦争映画みたいな、あんなのとあんまり変わらない、大差無いというか。恋愛事もちょこちょこ入ってくるけども、感情移入ができないものだから幼稚に見えるんですよ、男の子と女の子が交わす言葉が。あの辺で醒めるというか、みんながすごいと言った灯台の部分も、たったあのくらいのことでそんなに疑うものかしらっていうような感じでした。ものすごく考えさせられたけど最終的には、一番最初に自分が立ち戻れば、見た直後は何のあれもなかったかかなって、感じかな。


<今月の1本>

酒井 クリムゾン・リパー

笹原 ファイナル・デスティネーション

杉尾 東野圭吾の「悪意」

加賀 クリムゾン・リパー

[BACK]