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2001年6月号

出席者:川越、酒井、笹原、杉尾、土持   書記:鬼束 特別付録:書記の少し長めのぼやき

今回は、あ〜ひっさしぶりの奇特な、違−う!貴重な初見学の人、土持さんが参加されて、ヒートアップ寸前、国会論戦にも迫ろうかという大熱舌戦が展開されたのでした。ちょっとオーバーかな?まあ、それに近いところまで盛り上がって参りましたここのところの合評会、どうしちゃったんでしょ? それにつけても、土持氏は、今日久しぶりにやってきた川越野生地さんにも早速出会えて超!ラッキー!!?? それでは、はじまりはじまり〜

ハンニバル

(…沈黙は、爆笑で破られる。)

2001年 アメリカ 2時間11分 出演:アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア レイ・リオッタ ジャンカルロ・ジャンニーニ ゲイリー・オールドマン 監督:リドリー・スコット 脚本:スティーブン・ザイリアン 撮影:ジョン・マシソン 音楽:ハンス・ジマー 原作:トマス・ハリス

川 越 あまりにも期待しすぎて見に行ったせいか、もっのすごく不満!

一同  (笑)

川 越 かなり不満!何か、リドリー・スコットバージョンの<ハンニバル>って感じですよね。全然トマス・ハリスじゃないっていう、その辺がすごい不満。 だいたい、イタリア篇とアメリカ篇ていうか場面が二つに分かれるじゃないですか。で、フィレンツェのシーンのほうは、結構ちょっとこうT・ハリスの歎美な、歎美だけどちょっと怖いようなそんな感じが出てたなあとは思うけれども、パッティ(J・ジャンニーニ)が、あまりにも唐突、いきなり出て来過ぎ。何の脈絡もなく出てきた。とにかく出方が唐突、いきなり出てきた。何でこの人いきなり出てきたのって思ってしまった。フィレンツェのシーンではその辺が不満と言えば不満。 アメリカに場面が移ってからは、不満の一言。どれもこれも何もかもすべて不満。全然、駄目。あまりにも何か、時間的制約があるから、それはあのレクターさんとクラリスの気持ちのやり取りとか、そんな原作どおりにいかないのは分かるけれども、あそこまで端折るかなあって思いましたね。その辺がものすっごい不満。 ラストも全っ然違うし。それと、あの脳味噌食べるところがあるじゃないですか。あれはね、どちゅことない。何だ、これぐらいかって。あそこは、まあ原作どおりなんだけど、そこだけ原作どおりにして何だこいつって思ってしまった。こいつっていうのは、R・スコットのことですね。

笹 原 ハハ(笑)

川 越 友達から聞いた話なんですけど、一応バージョンが二つあるそうで。R・スコットバージョンと割と原作に忠実に撮ったほう。で、原作に忠実に撮ったやつは4時間位あって、何か今年の夏ぐらいにアメリカではテレビで放映されるっていう。

一同  あー。ふーん。

川 越 来年位には、日本でもテレビとかでも放送されるんじゃないかって、そっちは割と忠実なんですって。そっちを撮り終わった後に、R・スコットがうんにゃ違うって言って、R・スコットバージョンを撮ったらしいんですよ。何かそんなことせんでもいいのになって思ったんだけども。で、挙句の果て、その4時間の忠実にやったほうは、アメリカのテレビ局がさっさと放映権買い上げて、で、映画館じゃかからないっていう。とにかくもう何だこりゃって言いたくなるような感じでしたね。それと二重の意味で悔しい。あまりにも悔しくて、テロップが流れ始めたらさっさと帰ったんですよ。でもねえ!流れ終わった後にィ、ハンニバルさんが大胆不敵な宣戦布告みたいな、そういうのをする場面があったそうで、見逃した〜って。パートVが、T・ハリスがそんなに関わらなくて、オリジナルを作るとかって。もうある程度脚本は出来ている。舞台は東京らしいという。そういう話なんですけどねぇ。ま、とにかく、あまりにもR・スコットバージョンは、クラリスとレクター博士の気持ちのやり取りが無さ過ぎ!本当に。私は、『ハンニバル』は、恋愛小説だと思って読んでたんですよ、原作。でも、R・スコットは、どっちかっていうと恋愛っていうよりかは、お父さんが娘に抱くような気持ち?で捉えてたんですね。そこ辺が何かもうぜーん然違うんでェ、本っ当、不満!とにかく不満の一言の『ハンニバル』です!不満の連発、不満連発ですね。

加 賀 普通、映画と原作はちょっと分けて考えるというのが普通なんですけど。どうしてもやはり10年間待たせた作品なので、一年前に小説で出てますから、前作が好きだった人はほとんど本を読んでると思うんですけど。そうなるとまあ本もねえ確かに、ある程度賛否両論がありましたけど、それをいかに映画にしたかということで、半分はちょっと期待通りには無理かなと思いましたけど。ま、とりあえずあのフィレンツェのシーンは確かに、川越さんが言いましたけど、なかなか良く出来てると思います。日本人観光客も出してくれて。(笑)

川 越 (大笑)

加 賀 最近のアメリカ映画って、日本人観光客が出るなって思いますけど。わざわざ原作にはないやつを出してくれましたけど。その反面、アメリカの場面というのはですね、ちょっとやはり今ひとつ力不足、描き方が不足なのかなと思いました。でも、原作も、相手の復讐する富豪はちょっと弱いんですよね。これじゃちょっとハンニバルに負けるなって。もうちょっと癖のある強い悪役をですね−ハンニバルから言う悪役を−用意してほしかったなと思いましたけど。

川 越 でも、役者自体は悪くないよ。

加 賀 あ、役者はね。でも、豚飼いが殺し屋だから、もうちょっとねぇへへへ、他にないかなって。

川 越 豚のシーンって大したことなかったねえ。

加 賀 豚のシーンはね。

川 越 私、もっとすごい奴を想像してたのにィ。

加 賀 原作はだいぶカットしてあって、原作は取材チームもね、豚に食われたりしてたから。そういったシーンがなかったんで。そういった意味でも、ちょっとマイルドな感じで。原作と比べると、ちょっと力強さを感じなかったというか、弱かったですね。

川 越 あの程度だったら、別に15才以下見ちゃダメってしなくても−

加 賀 ただ、あの最後の晩餐のシーンはね、本で読むのと映像で見るのとやっぱりね、僕なんかちょっと衝撃が違うかなと。

川 越 そおお?

加 賀 小説で読むのと映像はちょっと違うよ、やっぱり。だって、意識があるまま頭をカパッってはずすとかね。

笹 原 私、『羊たちの沈黙』も特にいいと思ってないんで、全く何の期待もなかったし、ただ、R・スコットで、脚本がスティーブン・ザイリアンとか結構いい脚本書いた人なので。それと、ジュリアン・ムーアが昔から好きなんで、それを期待して行ったんですけど−

川 越 J・ムーアってもっと若いのかと思ったけど、結構オバサンね。

笹 原 そう、もうだいぶ前から出てる。

川 越 『マグノリア』に出てた人でしょ。

笹 原 『マグノリア』に出てた。

川 越 『マグノリア』の時と随分印象が違うなあ。

笹 原 違う?

川 越 『マグノリア』はちょっと若いような感じがしたけど。

加 賀 アメリカの女優って結構30位から−

笹 原 多いよね。

川 越 今回はすっげえオバサンだった。

加 賀 いいわ、美人だったらオバサンでも。

笹 原 そういう意味で、そういう別の期待はあったんだけども、それはまあまあかなというところで。ラストは、加賀さん言ったように衝撃的でしたよ。知らなかったからね。

川 越 悪趣味だよ−

笹 原 悪趣味じゃないとやっぱりレクター博士にならないじゃない。

川 越 でも、私もっと悪趣味でも良かったかなあと。やるんなら徹底してやれって。

笹 原 危ねえな、この人は。(笑)まあまあというところですね、ハイ。

加 賀 確かに、まあまあでしたね。

酒 井 えーとー、原作は読みました。やっぱり原作に近いラインで映画は行ってて、そんなに意外性がなかったと、意外と忠実に出てたと思います。ただ、端折ったところがアレで、ちょっとやっぱり原作読んでるとどうしても映画のほうと比較しちゃうし、ちょっとなあって感じはするんじゃないかなって思いました。でー、次にですね、前作品と今作品とですが、前作、僕は笹原さんと違って非常に好きなんですけども、前作が持ってる雰囲気もR・スコットタッチの雰囲気がずーっとあったと思うんですよね。だから、あの前作の雰囲気は、今回のに上手く引き継がれてるんじゃないかなって気がしたんですけども。ただ、前作と今回の作品と違うのは、前作の場合には、犯人を追うというひとつのサスペンスですよね。だから、緊迫感がずーっと流れてるんだけれども、今回はですね、それよりもむしろレクターとクラリスの恋愛感情のほうを中心に描いたために、ちょっと中だるみというかゆるいんですよね。あの種の映画っていうのは、何か引っ張っていく緊迫感が欲しいんだけれども、それよりもむしろそちらのロマンスというかそちらのほうに異常な形で傾いていると、ちょっとそこら辺が不満なんじゃないかなと思います。よく健闘しているけれども、やっぱり、原作それから前作に比べて見劣りするのは仕方ないんじゃないかなあと思います。まあ、第3作目が出来るということなので楽しみにしていますけれども。きっと第3作目は、脳味噌を食べたおかげで、レクターが狂牛病になって死ぬというのじゃないかなと、私は期待してるんですけども。

一同  (爆笑)

鬼 束 原作は読んでいません。全体のイメージがオペラという感じだったんですね。ま、途中にもオペラのシーンがあるんですけども。昔、『ゴッドファーザーV』がそんな感じでオペラだって言われたんですが。最初と最後に流れる曲が静かで良かったです。あと、R・リオッタが脳味噌を食べられるシーンですけれども、やっぱり気持ち悪さも僕は始めあったですね。原作読んでなかったからですね。でも、あの、頭をパカッっと開けられたリオッタが、うつむき加減で上目遣いでじっとしてるというあの表情っていうか仕種をじっと見ていると、あれは『グッド・フェローズ』とか『不法侵入』とかこれまでのリオッタ出演作品の中の彼と同じなんですよね。あれが、すごく笑いそうになったというか、おかしく思えてきてですね。笑ったらいけないと言われるかもしれないけど、そういうおかしさがありました。G・オールドマンの隠しといい、この映画は、うがった見方って思われるかもしれないけど、コメディとして見ても面白いんじゃないかなあと思って。A・ホプキンスとR・リオッタとG・オールドマンの三バカ大将っていうか−

杉 尾 (笑)

川 越 馬鹿かよ。

鬼 束 変質者度比べというか、かわいく言えば、変なおじさん大会みたいな感じで−

川 越 三大変態。

鬼 束 ていうのを思ったんですけども。あとは、ハンニバルとクラリスの恋愛っていうのがすごく面白かったです。J・ムーアは脱ぐのかなって映画の途中から思って見てたんですけど、脱がずにちゃんとセクシービームを放っていました。ジョディ・フォスターの魅力に負けないためにはね、脱ぐしかないかなって思ったんですけども。

加 賀 ドレスのシーンはなかなか。

鬼 束 そうそう。

加 賀 あれ、J・フォスターじゃ無理かな。

笹 原 無理やなあ。

川 越 J・フォスター、色気がないもんね−。

鬼 束 さっきの3人のコメディというところは、G・オールドマンは割と真面目に復讐に燃えてたんですかね?それだったら、3人のコメディって見方は間違いかなって思ったんですけど。バカ大会は、二人かなと思って、リオッタとホプキンスの。そこ辺はちょっともう1回見てみたい気はするんですけど。 フィレンツェのシーンが良いって言われたんですけど、いいかもしれないんですけど長い感じがしました。なかなか進まなくて、刑事の出方も何かいまいちはっきり分からなくて、次に見たらそんなに抵抗はないのかもしれないんですけど。後半は面白くて、時間を3時間上映だと勘違いしてて覚悟してたからかもしれないんですけど、長さはそんなに感じませんでした。ラストのレクターの手首ですけど、包帯で巻いてるんですが、あれは多分切ってると思うんですよね、自分の手をね。

笹原・加賀 そうやねえ。

鬼 束 で、つなげてると思ったんですよ、続編のために。

加 賀 あ−、成る程。

鬼 束 パートVは、つなげた手首のところに、切ってつないだ傷跡をつけたホプキンスが出てくるんじゃないかと思ったんですよ。

酒井・笹原 成る程ねえ。(笑)

加 賀 そこまで考えなかった。(笑)

鬼 束 あと、あのイノシシのでかい奴ですけど、あれは僕は『もののけ姫』じゃないかと思ったんですが。R・スコット、日本好きだから。

川 越 確かにそんな感じですよね。『もののけ…』に出てくるイノシシの集団っていうような。でも、あんな大きいのいるんだ本当に。

加 賀 でも、原作からそうだから。

鬼 束 あ−。

加 賀 R・スコットが考えたわけじゃないから−

酒 井 原作には、レクターの妹がドイツ兵に殺された話があって、それがなぜレクターがあんなにゆがんでしまったのかという理由になっているんですけど、あれは残してもらいたかったなと思うんですよね。納得できるんじゃないかなと思って。

加 賀 R・スコットがプロデューサーから<ハンニバル>を撮って欲しいって言われた時、「私は二本続けて史劇は撮らない」って言ったって。(笑)

川 越 カルタゴの<ハンニバル>と勘違いしたのね。

加賀・酒井・川越  (笑)

笹 原 G・オールドマンは、クレジットも出てなかったでしょ。

一同  出てた。

笹 原 最初は出さないって話だったんだけど。

加 賀 G・オールドマンじゃなくても誰でもいっしょだよね。(笑)

笹 原 言えてるわ。

鬼 束 あの目は、G・オールドマンだった。分かったあとで思い出してみたら。


スターリングラード

(−歴史を変えた〔イナイイナイバー〕衝撃の実話!−)

出演:ジュード・ロウ ジョセフ・ファインズ レイチェル・ワイズ エド・ハリス ボブ・ホプキンス 監督:ジャン・ジャック・アノー

笹 原 加賀さんから、これは面白いというメールもらったんで。私は、戦争映画苦手だしどうしようかなって思ってたら、監督はジャン・ジャック・アノーだから、まあ見ようかなとは思ったんですけども。見て良かったです。確かに戦争映画なんだけども、個人対個人ていう感じで。やっぱりエド・ハリスが凄い。やっぱり悪役がいいとねえ、映画が生きますね。これだけは凄いなと思って、というとこまで言っときます。

一同  あれ?それだけ?

加 賀 ちょっと期待して見に行ったんですけど、満足して、久々に。今年の上半期の1等賞かなという感じの作品でした。スナイパー同士の戦いという前知識ぐらいしかなかったんですが、最初の導入部分の大虐殺みたいな感じも凄かったし、その後の映画のストーリーの流れも良かったのは、バランスが取れてるんですよね。恋愛もあるし、二人の戦いもあるし、周りの上層部とかの絡みもあるし、その他にもバランスすごく取れてて、『プライベート・ライアン』みたいに一方的な話じゃないところがですね、すごく満足感を覚えたんじゃないかなと思います。いい映画でした。気になるところが2点あるんですけど、それはまた後で−。

川 越 あんまり期待しないで、期待しないでって言うか、戦争映画は私はあんまり好きじゃないので、ト、ト…名前忘れた…。

杉 尾 ともさかりえ?

一同  (爆笑)(書記「なんでやねん!」「出たあ!杉尾さんの大ボケ」)

川 越 違う、違う。E・ハリスが出てるからね、ちょっと見ようかなと思って、ミーハーな考えで見に行ったら、冒頭何分くらいですかね、20分くらいですよね。ちょっとおー!と思って、凄え!と思って。こりゃあ、杉尾さんが見たらきっと目が点だぜって(笑)思いながら、私もちょっと半分くらい目が点になりながら見てたんですけど。でも、冒頭の15分〜20分の戦闘シーンは、本当に史実そのまんまですわ。特に、特にあの、話には聞いてたけどマジかよと思って見てたところは、河を渡るじゃないですか、そこでもう既にガァ−って攻撃受けるじゃないですか。で、河渡って二人に一つだけ銃が渡されるじゃないですか、ダ−って突っ込まされて勝てるわけないじゃん。で、駄目だって戻ってくる人をあの赤軍の奴ら撃ち殺すもんね。こんなんで死んだら浮かばれないぜって思いながら、私だったら絶対化けて出てやるって思いながら見てたんですけどね。ジョセフ・ファインズが、階級闘争でって言う台詞はすごい時代がかった台詞だなと思って、こんなの今時死語だぜって思いながら。

加 賀 時代劇だもん。

川 越 この時代は、こういう時代だったんだなあっていうのを改めて。マルクスとかレーニンとかああいう考え方がしっかり生きてた頃?この考え方もいい迷惑だよなって思いながら。とにかくE・ハリスの制服。まあ!何て似合うんでしょうっていう。超!格好いい。で、また、タバコの吸い口が金。

加 賀 あれは、特注の煙草じゃない?

−ここで、制服としては、アメリカ陸軍の軍服よりもナチの軍服のほうが、機能性と美しさがマッチしておシャレじゃないかという話−

川 越 あと、ジュード・ロウが結構頑張ってましたね。ちょっとファンになってしまいました。私はあまり若い俳優さん興味ないんだけど。おやじ好みだから、私、渋好みなので。(笑)でも、E・ハリスはまだまだね、チッチッって感じですね。

土 持他  (笑)

川 越 何か妙なことを考えてたんですけどね。

杉 尾 何を考えてたの!

一同  (大笑)

川 越 トータルで言うと、私はそんなにいいとは思わない。はっきり言って、色恋絡ませ過ぎ。邪魔!

加 賀 でも、絡ませないとこの前の『プライベート・ライアン』みたいに…。

川 越 だから、絡ませるのはいいんだけど、絶対絡ませたらいけないとは言わないけど、絡ませ過ぎ。で、ラストも何かちゃんと解決してないんだもん、あの二人が。

加 賀 ちょっと弱いと思ったのはね、ラストがちょっと弱いと思って。

川 越 はっきり言って、あそこで女、邪魔!はっきり言って、邪魔!あの女は。二人でちゃんと対決するところ見せろよって。とりあえず、ちゃんとした対決シーンを見せろって思ったね、私は。はっきり言って、あの女、邪魔!それと、まあラスト、何かハッピーエンドでしょ。もうねえ、ラストでね、気が抜けた。

加 賀 ラストは賛否両論あると思うけど、あれでいいと思いますよ、僕は。あの監督はね、きっといい人やっちゃ。

杉 尾 (笑)

川 越 じゃ何、駄目って言う私は悪い人なわけ?!(爆笑)

加 賀 あんなの普通だよ、普通のパターン。あのハッピーエンドにするというのはね、あの監督の人の良さが出てると思う。

笹 原 あのラストでね、わぁーって抱き合ったりしたらおかしいと思うけど、あの描き方は上手いと思うよ。

杉 尾 私もそう思う。

−ここで、出勤途中?の漆原さんが見学に来られました−

川 越 トータルの感想としては、ぬるい。はっきり言って、何か恋愛絡ませ過ぎ。そのせいで二人の対決がぼやけて、何か肝心の部分が描かれてないという気がする。私は、あくまでもスナイパー同士の対決が見たかった。恋愛はいい!っつって。女、邪魔!って感じ。

鬼 束 対決してたわ。

川 越 してたけどお−。

杉 尾 あそこまで描きながら、あのあっけないラストは何だって。

川 越 そうそう。

笹 原 相撃ちになるとかしたら良かったわけ?

川 越 別に相撃ちとかじゃなくて、どっちかって言うと私は、E・ハリスのほうに死んでほしいね。対決するんならね。

加 賀 どっちが死んだっけ

WHO E・ハリスが死んで。

川 越 死んだんだけど、相撃ちじゃないでしょ、あれは。

−もう疲れたので、このあとしばらくカットします。同じことの繰り返しです、ほとんど−

杉 尾 半分は川越さんに反対意見です。恋愛は程よく入っていて、私はだから『プライベート…』とかからすると、とても良かったです。最初の惨劇ていうか、あのシーンも、川越さんから目が点になるという予告があったから、心して見たんだけど(笑)、『プライベート…』ほどは拒絶ていうか嫌な気はしなくて、素直に見れたんかなあ。赤軍に、全部退散するときに殺されるっていうのかね、浅はかだなあって見ましたね、どうしても。自分の味方が少ないのに犬死させて、あの辺がやっぱり問題なところだったのかな?って思って見てました。それとどうして『プライベート…』が駄目だったのに、戦争映画でこっちがやっぱし気持ち打ったかなっていうのは、恋愛がからんでたのもあるし、あと焦点が絞られたような気がするんですよ、スナイパーの対決とか。E・ハリスも格好良かったし。私はあんまりああいうの見てないから、横山さんはちょっとぬるいって書いてたけど、あれだけやってくれれば十分満足。真ん中あたりの土管のところから出てきて、物陰で緊迫した感じ、あそこはすごくドキドキした。あの子供がね、どうなのかなってヒヤヒヤ、はじめはどっちについてるのかなって思って見てたけど。 メガネのあの野郎(J・ファインズ)(笑)。でも、嫉妬心ていうか、平等にするっていうのが−社会主義ですかね、何ですかね?−(笑)そういうのは理想でしかないっていうのが、自分の中の気持ちとして苦しんでから気がついていくっていうのが、見ててすごくリアルだったなあって思いますね。あの人が、男の子のお母さんに、亡くなったんじゃないって言うところも救いだったし。

加 賀 ドイツ側に寝返ったっていうとこね。

杉 尾 生きてれば会えるかも知れないっていうのもあるし、ラストは、やっぱりE・ハリスが死んじゃうところは物足りないかなと思ったし、メガネの人が、あんなに簡単に自分が犠牲になる必要もなかったんじゃないのかなって思ったんだけど。ラストは、もう一幕あっても良かったかなっていうのはありますね。あの女の人が生きててよかったというのは、加賀さん派。

川 越 いや、別に生きてて悪いっていうのじゃなくて−。

杉 尾 要らなくはない。あれで救われたかな。(笑)少しずつ気持ちが燃えていくっていうか近寄っていく部分がね、とても良かったし。一番最初に本を読んでるところで目を合わすところから。

加 賀 全く別の人かと思った。

杉 尾 あの人じゃないと話が違うじゃん。

加 賀 あ、そうなの。そういう女性がいたって話じゃないんだ。

杉 尾 うん、違うよ。彼女は覚えてなかったんだよね。私は、なかなか好きでした。

酒 井 戦争映画としては非常に質が高い戦争映画じゃなかったかなと思います。どうしても比較するのは、スピルバーグの『プライベート…』になるのですが、この映画の良いところは感情表現とか細かいところに非常にこだわってて、粗さがまずないんですよね。そこが、さすがフランス人ですよね。アメリカ人の感覚じゃないっていうところが第1点ですね。形として戦争を完全に否定してるんですね。ソ連もひどいし、ドイツもひどいしというですよね。その点、『プライベート…』もそういう視点で行ってるけれども、根本的にはアメリカ賛美ってあれもあるんですよね。それじゃなしに、完全に両方の、戦争とは良くないもんだというその姿勢が、非常に僕好きというか非常に好ましかったんじゃないかなと思います。緊迫感ですよね。最後まで引っ張っていけるというのがですね、非常に細かい小技を使いながら、そういうところが非常によく出来てたんじゃないかなと思うんですけども。『プライベート…』よりはるかに優れた映画じゃないかなと思います。僕は、恋愛の描き方は、最後のハッピーエンドはちょっとやり過ぎじゃないかなという気はしてますね。死んじゃって、このまま悲惨な感じで終わったほうが良かったんじゃないかなと、ずうーっとこう悲惨な悲惨な悲惨なというリアリティで、ほこりだらけで、急にあそこで変わるわけですよね感じが。ここで僕は、今までのタッチと全然違うじゃないかという、嘘をここまで出すのっていう、そこはちょっと不満だったんですけどね。その他は非常によく出来てると思いますね。アメリカで受けるためにこんなふうにしたんじゃないかなっていう、下すの勘ぐりですか、そういうこと考えたんですけども、という感じで非常に僕は好きでしたけどね。

加 賀 R・ワイズが夜ばいに来るシーンとか良かったね。

杉 尾 ドキドキしたね。

加 賀 もうひとつね、R・ワイズが夜ばいを掛けなかったらあの少年は死んでなかったというのに気づいたんですけど。夜ばいのために、J・ロウは寝不足になって、狙撃待ちのところで寝てしまったという。

鬼 束 出だしでいきなり戦争の醜さとか恐ろしさを描いて、あと何を描くのだろうと思ったら、『薔薇の名前』ばりのミステリーというか面白物語が展開されて、映像もやはり重くて。前半ちょっと長いと思ったけど、全体的にはストーリーがいいからそんなになかった。ラストは、E・ハリスを撃たないのかなと思った。ハリスの銃を持ってくるのはいかにも戦争肯定みたいに思えたけど、あれをR・ワイズでなくJ・ファインズに持たせたのがかろうじてかわしていると思いました。全体的に国のために家族を守るために戦うべきだという台詞が何回か出てくるけれど、監督の言いたいのはあくまで全ての戦争否定なんじゃないかと思った。それがエンドクレジットが斜めになってる理由かなとも思ったのですが。斜めからも見てねという。でも、正面から見ても、勘違いしなければ大丈夫だと思うけど。ひょっとして、昔の戦争映画へのオマージュとかかもしれませんね、そういうのはいまいち詳しくないので分かりませんが。あるいは、人類は危ない斜面にいるようなものだとか。 エンドクレジットといえば、今年見た日本映画『回路』でもエンドクレジットに音的に品のなさそうな音楽が掛かっていて、黒沢清監督ともあろう人がと思ったけど、あれは何かのメッセージだったのかな。それかあの曲意外と良いのかも? ところで、『プライベート…』と同じようにカメラに泥粒のついたショットがあって、『プライ…』にはドキュメンタリーの感じを出すのにカメラを汚すなんて、志が低いというか感性が弱いというかそんな感じがしたけど、この『スターリングラード』では作風がこのショットを不自然に感じさせなくしているかなと思いました。また、カメラの泥については、笹原さんが『プライ−』の合評会で、それを言うなら光の線とかもですよと言われたのを聞いて、それもそうだなあと思って、だいぶ、ま、いいかなって思うようになっているので、そのうちそんなに気にならなくなるかもしれません。途中で、今になって自分が気がついたことにぴったしの台詞があったのですが、忘れてしまいました。

一同  (大笑)

鬼 束 時間の都合で間をカットしたような編集が、前半で1箇所−J・ロウたちが住んでいる家に突然ファインズが現われるシーン、後半で1箇所あったと思います。これを見た日の夕方、帰宅してなにげなく宮日新聞を見ていたら、ロシアのプーチン大統領の写真があって、思わず『スターリングラード』の世界を思い出しました。前半で、シャワーを使ったりするドイツ兵の一団(6、7人)を砲撃の音といっしょに気づかれないように次々と狙撃するシーンはいいアイデアだし、格好良かったです。

加 賀 銃の弾が5発だから5人じゃないかな。そして、あのシーンは史実です。(これは、テープには録音されていません。(下記、参照)書記の記憶と主観によるものです)


今月の一本

杉 尾 『ショコラ』 良かったです

川 越 『神々の流ざん』 梅原猛 著

     <ruzann>川越さんはあると言ったけど、WORD2000でも変換せず、僕の持ってる並みの国語辞典にも載っていませんでした。梅原猛をなめちゃあ、ダメダメ。(書記より)
流竄(るざん)ですね。ATOKの漢字検索で調べました。皆さん、ATOKを使いませう(hiroより)。

土 持 コンバット…懐かしくて、人間味があって。

加 賀 『トラフィック』

笹 原 『トラフィック』

酒 井 『タイタンズを忘れない』 もう忘れたけど。 一同(笑)

鬼 束 <映画> 『はつ恋』 ビデオ/BOMにて100円でレンタル 『近頃なぜかチャールストン』 BS2 録画ビデオ有り 『底抜け大学教授』 BS2 録画ビデオ有り <その他> 自分のことで、ウォーキングと節制で9キロ減量に成功!


ちょっと気になったので、一応おことわりを。
 テープ起こしについては、僕の場合、最近、割と時間があったので−この間まで暇だったのに最近政治が面白くなって、宮日じっくり読むものだから結構忙しくなっちゃった−発言をできるだけそのまま書いています。
 杉尾さんも話されてましたが、自分の感想は気軽に変えられるので、より伝わりやすい表現にと思って修正するのですが、他の人のは、例えば同じ言葉が繰り返し出てきてもどれを残してどれを削ったらよいのか本人に聞かないと分からないし、かといってそれは面倒だし、考えるのは時間が勿体無いし、結局そのままが最も楽なのです。読む人に判断してもらうのが一番というのもありますでしょう? 今回も同じ言葉の繰り返しと指示代名詞?(懐かしいなあ。<あれ>とか<これ>のことなのですが)は、そのまま書いています。これでも明白におかしいのは削ってるんですよ。
 以前は、私も文章を書くのには少し自信家なところもあったので、適当に自分でこっちのほうがいいんじゃないというふうに他人の文章も変えていたのですが、そういうのは裏を返せば不遜なのではないかと思います。
 ま、正直に告白すると、少し意地悪(おじさん)的な狙いもなくはなかったのです。と言いますのは、今まで口が重かった僕には(今でも堅く閉じなきゃいけないところでは海の底の貝よりも堅いつもりですけど)、何でも思いつくまま喋り散らして、後は野となれ山となれというのは無責任ではないかと思えるからです。
 別に上手に話さないといけないというのではありません。その人それぞれできる範囲でいいから、周りの人の気持ちを思いやって話すのが、会話の秘訣なのではないかと最近思ったものですから。 「ああ、自分はこんなふうに喋ってるんだあ」というふうに思って、話し方の参考にしてもらえたらいいなあという思いは確かに少しありました。
 ちょっと長くなりますけど、僕も最近気がついたのですが、合評会は、ひとつの話し方の勉強にもなるんですよね。他人に自分の感想を主張するのもいいけれど、その前にまず、いかに言葉を整理して他人に伝わりやすく表現できるかではないかと思うのです。これを多くの人ができたら、だいぶ人生も楽になるのではと思います。
 でも、まあ、気軽に参加してもらうことが一番大事であって、極力守らなければいけないことだとは思います。ですから、今回こうして書いたから、次からはどうしても気になって仕方がない時に限り、合評会の場で提案しようと思います。
 ところで、今回、合評会の最後でレコーダーの電池が切れて止まっていましたが、ちょうど『スターリングラード』の私のところからだったので、辛うじてセーフでした。それで、これから、電池やテープの備えとか合評会の一応(今回の杉尾さんみたいに皆さんも手伝ってくださいね)の進行係を、僕のほうでやってみようかなと思ったのですが(考えた役職名が<合評会のショムニエ>)、まだいまいちパワー不足なのでとりあえず進行係だけやってみようかと思っています。少しずつショムニエに近づけたらいいなと思います。
 あと、合評会の日時の変更についてですが、今回久しぶりに第2週の木曜日で担当してみて、やはりかなり時間的にきつかったです。ですから、ずらすときは、できるだけ第1週の別の曜日にして、やむなく第2週にする時は、月曜日はちょっと気が重いので、火曜日とか週の早いうちにして、できる限り書記の負担を軽くしたほうが良いのではないでしょうか。
 いろいろ長々書きましたが、今月はこれにて。
 追伸(しつこいって? 誰か言った? 空耳か)
 先日、「鬼束さんは、何も怖いものないんじゃないの?」って聞かれて、「いやあ、怖いものはありますよお」と答えたら、「何が怖いの?」と聞かれたけど答えられなかったので、この場を借りてお答えしたいと思います。みんなにも聞いてもらいたいので。僕の怖いものはいっぱいありますが、一番怖いのは、<悪意や無理解そして憎しみや怒りに任せた、あるいは僕にそう感じさせる人の言動>といったところです。
 これからもどうぞよろしくお願いいたします。
 おいどん、牛丼、西郷どん!(^^)

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