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2001年8月号

みんなのいえ

監督・脚本:三谷幸喜 出演:唐沢寿明 田中邦衛 田中直樹 八木亜希子
 ストーリー:脚本家の飯島直介と妻の民子は、夢のマイホームの設計を新進気脱のデザイナー柳沢に依頼する。だが、施工を依頼した民子の父で大工の棟梁・長一郎と柳沢は意見が合わず…。

杉 尾 友達と行きました。三谷君が笑って下さいと言うことだったから、笑うぞと思って行ったんだけど、ほとんど笑えなかったです。ホームページにも書いたけど笑いのトーンが一緒なんです最初から最後まで。だから全然メリハリがなくて。ここが笑うポイントだぞっていうのが絞ってないもんだから、おかしさっていうのが伝わってこないというのと、ほんとに取材をしたのかなって思いました。話全体が薄っぺらで、夫婦が家を建てるときの、問題が起きたののおもしろさっていうのも、あるかもしれないけど、デザイナーと大工の棟梁のせめぎあいがだんだん最後には、ストーリーの中に重なっていくていう部分もあると思うんですよ。
 だけどプロフェッショナル的な部分が全然描いてなくて、デザイナーも上っ面だけが描いてあって、棟梁も言葉だけじゃないですか。そこらへんの仕事ぶりというか、もうちょっとクローズアップしたりとか詳しい部分を入れてみたりとか。それは周防監督「シコふんじゃった」だったら、モッくんが本気で相撲とってるし、「シャル・ウィ・ダンス」だったら役所さんなんかは、マジで踊ってるから、観るほうを引き付けるというか、そこらへんがすごいと思うんだけど。棟梁もあんまり家を建ててる感じがせんし、デザイナーはデザインしてるところとか、閃きがばっと表に出たところとかいうのが全然なくって、そういう本気の部分がないと笑える部分も生きてこない。だから(香取)真吾くんの神主が出てくるところにしても、あんなふざけなくていいと思う。笑わせようとあんな変なお辞儀をするけれども、神主なんかは普通のちゃんとした神主さんを使っても、極端な話良かったと思うんです。それに集まっている人たちがちょっとずれてるというか、それでもくすっと笑えるほうがセンスがあるような気がするんですよね。
 机上でサラサラと脚本書いて自分の中にある知識だけでやっている。そりゃ本とかも読んだか知れないけど、割とお手軽に作ったのかなっていうのが感じかな。フジテレビと一緒に作ってるというのがあるかもしれないけど、タレントとか有名人を使ってる。朝の(番組の)大塚さんが出たときにはがっくりきたんですよ。一つの作品を本気で作ってるのに、あっ、じゃちょっと出してあげるみたいな感じで。やっぱり、そこらへんはこだわってほしいと思います。黒沢明なんかが見たら、フンと鼻で笑うような。やっぱせっかく映画でフィルム回すんだから、もうちょっと本気で…。だけど私みたいにテしビの中の短編で、ドラマとかいうのはすごく好きなんだけど。ちょっと掘り下げ方が物足りない感じがして、どうしても笑えなかったというのがありますね。

笹 原 三谷幸喜は本来は監督ではないから、あんな物じゃないですか。期待するほうが間違っている。今までも異業種監督って、いっぱいいたじゃないですか。その一つだと思うんです。もちろん脚本家だから映画はからんでくる人なんだけど、素人に毛が生えたようなもんだなっていうのは、「ラヂオの時間」観たときにわかってるから、なんの期待もなかったし。今回は特にお遊びで作ってる部分もあるとは思いました。だから褒めもしないし、けなしもしないというところなんですけどね。話によると自分が家を建てたときの話をそっくり持ってきてる。そういう意味で自分としては、現実に即してる。デザイナーと棟梁の間で悩んでる夫というのが、自分の立場だったらしくてね。それをそのまま描いてるだけなんです。まあ自分は面白かったかもしれないけど映画にしたら面白くなかったんじゃないかと思います。ほんとにお遊びの映画ですね。今回ある程度ヒットしないと次が撮れないから、そういう意味合いでものすごくメディアにも出たということですね。まあそのへんの人がちょっと監督したようなもんだから、周防さんとは比較にならない。この人がこのあと10本20本撮ってもそこまで行かない。それは歴然としてますよ。

酒 井 脚本があまりにも意外性が無くって、やっぱり陳腐というか話が面白くないんですよね。あまりにも最初こうなるなと思った落としどころに、ちゃんと映画が収まっているんですよね。それ以上の期待をしてたんですけど、非常にこじんまりとした、はたして映画にする価値があるのかなと思う位の話だったと思います。例えば工事するときに掘り返してみたら埋蔵文化財が出てきたとか、家を建てたとたんに上から慣石が落ちて家が焼け落ちるとかね。そういうふうなタッチの、皆がアッと愕然としてるところでぱっとTHE ENDが出てくるとかね、そういう最後のどんでん返しとかそういうインパクトがないんですよね。だからスルスルスルといって、何だこんな感じかっていう、それが非常に残念でしたね。でも映画の作り方、「ラヂオの時間」の方が好きなんですけども、撮り方は進化していると思うんです。ただ前作に比べると脚本がやっぱりやっつけ仕事的な形でやってて、もうちょっと面白いというか、こねてもらいたかったなという気はしました。


ギャラクシー・クエスト

監督:デイーン・パリソット 脚本:デビッド・ハワード ロバート・コードン 出演:テイム・アレン シガニー・ウィーパー アラン・リックマン トニー・シャローブ
ストーリー:架空のSFテレビ番組「ギャラクシー・クエスト」のクルーが、ひょんなことから本物の宇宙戦争に駆り出された! パロディ満載のSFコメディ

酒 井 面白かったです。久しぶりに映画館でケラケラケラ笑えました。残念だったのは映画館で一緒に笑える観客が非常に少なかったということ。「スター・トレック」のパロディだということを聞いて行ったので、だいたいの想像はついたのですけど、それを見た宇宙人が本当だと信じて、それと同じものを造っちゃって、その発想がすごく面白いですよね。今までそういう風な感じっていうのは考えそうで全然考えてなかった話ですよね。あの映画の一番凄いところは結局、三流の映画なんですよね。ところがお金を非常にかけて、手を抜かずにきちんと作ってる。だから特撮のシーンなんかも、ほかの特撮を見ても全然負けないくらい非常にきちんとしてるところが、評価ができるというか際立っているところだと思います。あれが宇宙船の張りぼてが一目で分かったりとか、星に不時着したときのそれが、もろセットって感じがわかったりすると、げんなりするんですが、結局それがメインじゃなくって笑わせるパロディなんだということなんだけども。でもそういうのを全部完璧にやることによって初めてパロディが生きてくるんだと思うんですね。非常に楽しめて、もう一回観たいなと思います。

杉 尾 もう一回観たいなと思って、もう一回観ました。何がどうってこう説明しろって言われても、さっき酒井さんが言ったような感じで、一つ一つが面白かった。最初、彼らがテレビの中でやっている部分が最初出てきますよね。何だこんなもんかと思って観てたんですけど、それからだんだんだんだん本格的になってきて、そこへんの差のつけ方って言うのが面白かったです、ギャップが。それこそべ二ヤから本物みたいになっていくところ、その映像がすごかったです。サーミアン人が大好きで、帰るときには完全に私の中にサーミアン人が入ってました。嘘とか芝居をするとかの概念がないというところがまたいいですよね。そしてすごく緊迫した場面で、ふっと出るギャグというか、とぼけがまたいいんですよ。もう死ぬか生きるかの瀬戸際でふわっと無駄なことをするていうか、そこらへんが面白い。それとか表情一つにしてもぜんぜん動じない人がいたじゃないですか、科学者かなあ、あの女の子と一緒になった人。あの人が笑っただけで目がへの字になるのが、おかしいとか。あとシガニー・ウィーパーがぜんぜん違う人に見えた。なかなかうまい具合に化けてたなと思った。

笹 原 最初なんだこれって感じで観てたら、それが実は最後まで行ってしまいました。宇宙人が本物だと気づくまでが、イライラしてね。だめでした。主役の奴もふざけてるし、なんかね違うんだよなあという感じでね。まじめにやってくれたほうが、私は面白いなと思った。感覚的なもんだけども。だから実は最後まで乗れなくて、申しわけないです。話は観てて何となく、悪くなかったんだけども、ぜんぜん笑いがつまらなかった。シガニー・ウィーパーだけがね、映画見る前にパンフしツトを杉尾さんに見せてもらったときに、これ誰と思ったらシガニー・ウィーパーで、そしたら映画も最後まであのままでしたね。あれ整形したんじゃないよね、だって若くてきれいで、特殊メイクかね。特殊メイクでああなるんだったらみんななるよね。

加 賀 「スター・トレック」のパロディとだけしか知らなかったんで、ただのコメディかなと思ってたんですが、けっこうまじめに作ってあって意外だった。酒井さんが言ったように、話の内容に比べるとセットや特撮がすぱらしい出来で、その部分だけ撮るとA級のSF映画にも劣らない。かといって手放しで褒めるほどの出来ではなかった。でもラストはちょっと感動してしまった。

杉 尾 私の笑いのツボにはまったって感じですよ。だからどこがどう面白いとは言い切れない部分がたくさんある。

酒 井 テレビシリーズがあったときに、演じる役者よりファンの方がよく知ってるというところが、だからあそこらへんが皮肉ってるんですね。彼らはどうやっていいかわからないからファンに携帯で聞くんですね。

加 賀 その部分はすごく面白かった。

酒 井 自分たちはセットで張りぼてだから、どうしていいかわからない。

杉 尾 いつもやってるように操作すりゃいいんだよって言って、ががかって行く前にね。宇宙船を操縦してるときに、画面がサーッとこっちに寄ってくると皆こうなって動くところで、私と友達もこう、ギィーッとなって、その音で笑うというか。

酒 井 ああいう時のサーミアンて、笑いながらひきつってる顔。

杉 尾 そういうチョロチョロしたとこでね。ストーリーはもちろん面白かったんだけど、そういうところにもってきて、艦長さんが帰るときにね、まだ信じてないとき、パーッとドームが開いたときの、あの星がすごかった。ブラックホールに吸い込まれる場面とか、友達と二人で見てて奇麗だったね。そこで入り込んでしまいました。一緒に飛んでいった。本物だと気づかない部分が意外だったと言うより、そこがおもしろかった。


今月の1本

杉 尾 非婚家族

酒 井 しいていえば『A.I.』の最後の20分位

笹 原 ザ・コンテンダー

林 田 リトル・ダンサー

加 賀 ザ・コンテンダー

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