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2001年12月号

出席者:加賀 鬼束 笹原 林田 杉尾 野口 (書記)酒井

今回は、秋の話題作「ブリジット・ジョーンズの日記」と「GO」です。今回は、特別に、宮崎映画祭の実行委員である野口さんの参加がありました。20代前半の若い感性が加わりとってもフレッシュな合評会となりました。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

ブリジット・ジョーンズの日記

参加者の全員が見ていました。男性陣はレニー・ゼルウィガーに、女性陣はヒュー・グラントに話題が集中していたようです。

笹 原 男性だから人ごとみたいにして見たのですが、女性の細かい点をうまく描いています。主人公のレニー・ゼルウィガーは、「ザ・エージェント」のときからものすごく好きでした。今回、また太ってキュートでした。映画自体も面白かったので課題作に推薦しました。

加 賀 僕も男なので細かいところはよく解らないのですが、30過ぎの女性の焦りというかその実体が巧く描かれていてよかったと思います。主人公が、編集者と弁護士にもてたりとか、会社辞めてレポーターに採用されたりとか、けっこう立派な人間なので以外な感じがしました。演技もよかったと思います。

鬼 束 悪い映画ではないけれども、笑いや(少しはありましたが)感動もあまりなかったです。僕は、ヒュー・グラントの浮気男が一番面白かったです。「ザ・エージェント」を見ていたのですが、レニー・ゼルウィガーについてはまったく覚えていませんでした。ですから彼女は新鮮でした。出版パーテイーになぜ、弁護士の彼が来ているのか解らなかった。ラストのハッピーエンドはつまらなかった。500万人の女性の心を捉えたというふれ込みですが、原作の話で、この映画では到底そこまで及ばないのではないでしょうか。R−15指定はよく解らなかった。エッチなシーンもなかったし、言葉にそのような猥褻なのが含まれていたとしても、この程度で普通はR−15にならないと思います。あと、ヒュー・グラントが「君とやっていけなかったら、他の誰とも無理だ」という口説き文句を言ったのは、「巧いな」と思いました。

酒 井 2ヶ月前に試写会で見たのであまり覚えていません。今、覚えているのはレニー・ゼルウィガーがキュートで可愛かったという印象だけです。見終わったあとは面白かったという印象があったのですが、今となってはほとんど覚えていません。この作品のポイントは、レニー・ゼルウィガーの演技にあると思います。彼女の演技を(と言うよりは地でいっているかも)ポジィティブに受け止められる場合には、それなりの評価をすると思います。原作を読んでいないのでなんとも言えないのですが、映画はやや説明不足の点があったと思います。

杉 尾 今日見ました。ラブコメとしてはよくできた部類に入ると思います(現時点では)。主人公のブリジット・ジョーンズを見るための作品です。それから笑えました。気持ちよく帰って来ました。

林 田 私もだいぶ前に見ました。筋とか抜きにして、ブリジット・ジョーンズの年齢が自分の娘と同じくらいなので(もう結婚してますけど)、主人公の気持ちがよく解ります。今の若い子もこんな気になるのかと思うと少し不思議な感じもします。「結婚しなくてもいいや」と思う子の方が多いのではないでしょうかね。わざとらしいシーンがいくつかあって、良い映画とはあまり思わなかった。演技のために6キロ太ったのはすごいと思いました。

野 口 はじめまして。すごく親近感の持てるキャラクターなんですよ。ブリジット・ジョーンズは。お酒もたばこもやる点とか。仕草が可愛らしかった。30過ぎて焦ってきてと言うのは私には解らないところがあるのですが、そんなものかなと思いました。「ありのままの君がいい」と言われるのはうれしいことだと思います。ハッピーエンドでよかったのですが、現実としてこんな事はあるかなと思いました。

酒 井 思ったより主人公の考え方が保守的なのでびっくりしました。

笹 原 お母さんの方がぶっ飛んでいたのには驚きました。

杉 尾 所々妄想が入るのが面白かったです。見終わった後が、爽快でよかったと思います。

この作品、見終わった後はそれなりに楽しめたのですが、時間が経ってみるとそんなに心に残っていないようでした。


GO

参加者の内、鬼束、笹原、野口、林田、杉尾、酒井が熱く語ってくれました。原作もすばらしいのとの事ですが、映画の出来もそれに劣らない出来に仕上がっているようです。

鬼 束 面白い、そして笑えた。これは意外でした。真剣な難しい話があって、涙もあって、ラブストーリーもあってで盛りだくさんでした。脚本の宮藤官九郎さんは、演劇では活躍している人ですよね。最初のシーンで塩見さんが怖い顔をしているのが面白かった。出だしの、コマ落としというのか早回しが気持ちが良くて楽しく拝見しました。メッセージは「自分の守備範囲から打ってでる」と言うのでしたが、なかなか自分には出来ないと思いました。最初のバスケットボールでけんかをするシーンで女の子の笑い声が一瞬入りますよね。何かなと思っていたら、最後にその謎が解けたのは巧い演出であると思います。あと、流れ星を見て恥ずかしがって、最後に雪を見て恥ずかしがるという落とし方も面白かったです。ベットシーンであそこまで行きながら断るのは、今の若い人の感覚に合わないのかなと思いました(小さい時から差別を聴かされてきてそう簡単にそれを拭い去ることが出来ない事を言いたかったのかもしれません)。親子のボクシングの対決シーンもアクションの撮り方とかも巧かったです。あと、「かっこいいのって笑えるんだ」と言うセリフも好きでした。窪塚君と山本太郎君の走るシーンが美しかった。とにかく、いろいろと印象に残っているシーンが多かったです。

酒 井 非常に好きな作品です。今年の邦画の中では一番です。クルーパーの生き方が非常に共感を覚えました。在日韓国人の話が根底にありますが、この作品においてこれはそれほど重要な点ではないと思います。むしろ、青春映画(と言うよりは主人公の自我が確立するまでの苦しみとか悩み等を描いた作品)での「主人公のハンディーキャップとして在日韓国人であった」として捉えた方がよりこの作品を正当に評価できるのではないかと思います。これは、例えば、「ギルバート・グレイブ」や「グッド・ウィル・ハンティング」における家族の問題と同じだと思います。この作品は主人公を主体にしている作品だと思います。主人公が出てこないシーンで重要なのは、友達が地下鉄の駅のホームで刺されるぐらいではなかったかと思います。主人公の悩みとか苦しみを思いっきり映像に叩き付ける事によって、観客に大きな共感をもたらしています。在日の問題や恋愛の問題を大きく取り上げなかった事によって、この映画の主題が明確に生きてきていると考えます。映画の作り方も、一見雑なような感じがしますが、非常によく考えて作られていると思います。この作品が、他の青春映画と違うのは、主人公の心の内面を巧く描き出せた点にあると思います。

杉 尾 好きな作品でした。「愛」があるからです。「友情」「夫婦愛」「男女の愛」「親子の愛」とこの映画は愛にあふれていました。最初からテンポが良くてすんなりと映画に入り込めました。絵の撮り方も斬新な感じがしました。山本太郎もうまく役にはまっていました。私も差別よりも思春期の成長期を描いた作品として見た方がよいと思います。窪塚君が格好いいし可愛いし、がんばっているのを見て支えてあげたい気分になりました。昔から山崎努は好きでした。今回も非常に良かったです。最後まで息子に負けないのに感動しました。

林 田 原作が面白かった。映画になるとは想像出来なかった。映画は原作に勝てないだろうと思って見に行ったのですが、びっくりしました。原作のイメージがそのまま映像になっていました。原作で私が好きだった点は、「在日」という暗いイメージが完全に取り去られていた点です。映画では、窪塚君が良かったです。邦画で一位です。

野 口 外に出たい、狭い所から出たい、これは最初のきっかけだと思うのですよ。それが友達の遺言で彼が大学に行くために勉強する姿を見て、「彼は成長したな」と感じました。最初の取っ掛かりではとらわれていたところがあったのが、色々経験する事によって「変わったのだな」と受け取りました。彼が「成長する」という大事な時間を見ることが出来たなと感じました。

笹 原 感動しました。セリフの一つ一つが凄い。セリフを十分に練っています。それぞれのキャラクターが素晴らしい。みんな良いけど一人あげると、大杉漣が素晴らしかったです。タクシーの運転手役でしたが、タクシーの運転中に急ブレーキをかけて止まって、「何だ。親に向かって」と絶叫するところが最高でした。その後、公園でボクシングするという発想が面白かった。実話がベースになっていて、お父さんはボクサーだったけど、親子で殴り合いはなかったようですね。

酒 井 最初出てきたとき「主人公の家族はとんでもない」と思ったけど、「ものすごく子供を愛している」ことが理解できた。その事が、主人公が不良にならなかったのだと思います。

笹 原 最後の電話がかかってくるシーンは、「この電話は彼女からだ」と直ぐ解るんですが、この前後の映画の撮り方は巧いですよね。それから友達が刺されるシーンも巧かった。

多くの人 素晴らしい作品なのに、ほとんど入っていなかった。宣伝が悪いのでは。

笹 原 予告編の出来が悪い。観る気がしなかった。監督も知らないし。

杉 尾 窪塚君のアイドル映画のようなイメージしかなかった。

多くの人 この作品を合評会に取り上げて見るように進めてくれた笹原さんに感謝します。

あと、この作品を賛美する意見が相次ぎましたが、中には、最後の方の停電になるシーンで、闇の中から浮かぶ大竹しのぶの顔が怖かったという意見もありました。


今月の一本

鬼 束 チャップリンの『町の灯』 見直しました。良かったです。

加 賀 『きらきらひかる』 すごく面白いです。

笹 原 『彼女をみればわかること』 さすがカンヌで話題になった作品です。役者が凄いです。「マグノリア」みたいですがレベルが違います。

杉 尾 『GO』 満足です。

酒 井 『GO』 色々見たけど、今月はこれが最高です。この作品、11月4日の宮日新聞に紹介されていましたが、在日の問題云々という取り上げかたでは、この映画のすばらしさを伝えられないのでは。あの記事では少し不満です。

林 田 板東玉三郎『舞踏』 きれいでした。

野 口 『17才のオルゴール』 演劇です。脳性麻痺の女の子の初恋の話です。

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