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2002年1月号

出席者:♂鬼束 小野 酒井 笹原♀ 野口 林田 杉尾(書記)
 激動の2001年も、終わろうとしています。早いモンです。思えば、シネマ1987にとっても、頼りにしていた「ファロス」が閉店になり、どうなることやらと心配しました。合評会に3人しか集まらない時も何回か続いたしね。でも、会長曰く「細く長ーくでいい」をやっていたら、あたらしい会員を迎えることも出来たし、今回は、珍しく鹿児島から小野公宇一さんも参加してくれました。大変、大変嬉しかったです。
 今回の課題作は【かあちゃん】と【冷静と情熱のあいだ】です。まずは、こちらから。

かあちゃん

監督:市川崑 出演:岸恵子 原田龍二 うじきつよし 勝野雅奈恵ほか

鬼 束 良い話だし、だから、どうしたって感じで(笑)。小沢昭一の大家と、石倉三郎の大工が、落語の「大家と店子」のそのままだったのが、うまかった。あと、コロッケと中村梅雀ら四人が、横に並んで話すのが面白かったです。コロッケのベローンとした表情が梅雀と対照的で良かったと思います。
 勝野さんの娘さんも良かったです。山本周五郎の原作は何を使ったのかなぁとおもったんですけど、「さぶ」などいろいろ組み込んであるのかなとも思いました。
映像が銀残しで、ハーフカラーできれいで、塗り壁や細かいところがリアルで、美術が凄いと思いました。ラストは、原田龍二を何回も戻らせるのが、もう一工夫欲しかったなぁとも思いました。あと、岸恵子のところで、一カところ、ほろっと来るところがありました。
 (映画に)来ていた回りの客が、年配の方が多かったのですが、涙ぐんている人も多く、こんなだと、日本もまだまだ大丈夫かなという気がしました。(笑)あと、耳にホクロがあったから助けたというのは、なくてもいいかなとも思いましたが、あれがないとかあちゃんの‘人を助ける’というエネルギーのモトがぼけるから、やっぱり必要だったのかな。(小野:もっと話の前後に、ホクロについてはあってもよかったですよね。僕もそう思います。)

酒 井 ちょっと短かった(上映時間が)んですけど、以外とストーリーに起伏がないし、人が死ぬわけでもなく・・・そういった意味では、非常に撮りにくかったと思います。その分、演出と役者の演技力がものをいう形です。シナリオは、上手く破綻無くいっていると思います。ただ、まわりを固める俳優の演技が今一つ工夫が足りなかったという気がしますね。例えば、コロッケでも、地でもっているものの中で演じているんですよ。落語もそのまま中に入るのではなく・・市川 崑だから、もう一工夫欲しかったと思います。
 今の日本の映画の中で、置き去りにされてるというか、忘れられているところとか、モノを描いているところが好きでした。澄み切った世界ですよね。ここまでくると、コレ、遺作になるんじゃないかと、ハッとするんですけどね。(笑)まだまだ、頑張って欲しいですね。

小 野 結構、この作品は気に入りました。僕は、市川崑さんの作品を見るとき、実はドキドキするんですよ。(笑)というのは、市川さんは、非常に作品の出来、不出来の激しい監督ですよね。例えば、「三百六十五夜」、「火の鳥」とか(笑)、だから、あ〜今度は当たりかな、はずれかなってドキドキするんです。これは、なかなかいい感じで、しみじみした人情劇で楽しめました。時間が短いのも良いです。銀残しも素晴らしいし、岸恵子も上品できれいすぎるかなとは思ったんですけど、なかなか良いかぁちゃんで、小沢昭一もえらい年取ってたんですけど、いい味出して、結構好きな作品でした。

杉 尾 あんまり、全然インパクトがなくて、正直印象に残らない作品でした。もうちょっと感動したくて見に行ったから・・。まず、あの家族がなんで、あんなにまで、息子の大工仲間というだけの理由でがんばったのか、ちょっとピンとこない、あんまり人が良すぎるんじゃないのって思いました。(笑)私が、ひねくれているのかも知れないけど・・・あ、でも、私最後の20分くらい寝てしまったんですよ、(笑)もしかしたら、そこらへんに大事な理由が組み込まれてたりしたんですかね。(誰か:かあちゃんの前の旦那さんの耳にホクロがあって、勇吉にもあったからというくだりがあったよ。)(酒井:でも、それもなんか後から付け足した感じありますよね。)あと、‘うじきつよし’がいつもぽわ〜んとしていてあったかぁい感じが良かった。店子が四人ならんで話すところもおもしろく、梅雀さんがむずかしい単語を使うたび、ワクワクしました。(笑)そんなことでは楽しめたんだけど、やっぱ、ストーリー自体は、ただ、さらさら流れていったって感じだけで、山本周五郎にしては、物足りなかったです。岸恵子も女優さんとしては、あまり好きでもなかったし・・。もうちょっと、ガラッパチかあちゃんを想像していました。(小野:野村沙知代みたいな?(笑))ははは。

野 口 実は、私も後半20分くらい眠っちゃったんですよ(笑)。耳のホクロの話は今聞いて分かりました。本当に良い話ではあんるんですよね。でも、岸恵子さんが上品すぎて入り込めなかったというのはあります。かぁちゃんの人の良さを、もうちょっと掘り下げるところがあれば面白かったんじゃないかと思います。ま、おもしろい、おもしろくないで判断していいのかというところもありますが、見ている分には、さらさら、すぅーっと流れて、イイ話だなと・・・、ただ、最後に眠ってしまった(笑)という感じです。

笹 原 ま、今の時代に心が洗われる話で良かったですね。山本周五郎でも、感動できる話はあるけれど、これは小品というんで、それこそ落語の話をちょっと引き延ばしたような感じでしたが、私は役者の妙で、楽しく見られました。ま、やっぱし、市川崑は上手いなぁとは感じました。昔「幸福」という良くできたきっちりとした、さすが市川崑という映画も撮っていますが、当たり外れはありますね。
 86歳だけど、すごいなと思います。この作品は、監督の奥さんの脚本なんですよ。

小 野 なんか、巨匠が、最後にふわぁっとした優しい作品を撮ると、なんかまずいんですよね(笑)遺作になりそうで。黒沢の「まぁだだよ」とか・・・しかし、市川さんには、まだまだ期待したいですね。

笹 原 岸恵子は、やっぱポイントだったですよね。思ったほど入り込めなかったのは、やっぱり、そこらへんにもあるのかなって思いますね。今、みんなの話を聴きながらそう思いました。ま、作品としては、きっちりとしたモノだったんですけどね。

酒 井 ま、どうしても、やっぱりインパクトはなかったでしょうね。僕は、話が短く感じたのは、あれ以上長くなるとつまらなくなるかと思うので、逆にあそこで終わったのは正解だと思いました。

杉 尾 どうしても、かあちゃんのイメージがねえ…。もっと、こう肝っ玉かあちゃんみたいな・・・。

酒 井 そうそう、野村夫人とかね。(笑)

小 野 「口うら合わせとかなきゃ、だめじゃない」とか。(笑〉

杉 尾 「私の言うとおりにやってりやいいのよっ」とか。(笑)

林 田 凄いよね、親のことをパラすという親子関係。

小 野 そういう時代だからこそ、この「かあちゃん」がいいんですよね。(笑)

酒 井 いやいや、根本的には一緒ですよ、あれだけ稼いで申告してないんだから、脱税ですよ。(皆:爆笑)

チャンチャンッて、ことで落ちがつきました。(笑)こんなんで、終わってもいいのかって・・・、しかし、無償の愛には、やっぱ、どこかで「ちぇっ、かなわねぇなぁ〜」という気持になる書記杉尾でありました。では、次にいきましょ。


冷静と情熱のあいだ

監督:中江功 出演:竹野内豊 ケリー・チャン他

小 野 いやぁ〜、本当にフェレンツェだけは、スバらしかったです。本当、撮影はよかった(笑)。ホント、スタッフはすごいなぁと思いました(笑)。でも、ちょっと、恋愛ドラマっていうのは、?って感じやったですね。スミマセン。(注:話に入る前に、見た人皆この映画よかったと言っていたので、そうでもなかった小野さんは、いたく恐縮されておられます。(笑))。でも、ホントすきなシーンもありません。絵を傷つけるところも、犯人捜しをもう少し後の方までひっぱってもよかったんじゃないかなと思います。そしたら、もう少し面白くなたんじゃないかなという気がします。・・・・・ん・・・すみません(笑)。

笹 原 見てから、もう随分時間が経ったので、ん・・冷静になってしまったんですけれども(笑)。私はこの手のメロドラマが好きなんですよ、ベタベタしたいかにもメロドラマっていうのが。 だから、予想通りの映画でした。話としては、ミステリーの部分と恋愛の部分とか、チェロの部分とか、いろんな話が絡んでいて、見ていて感動しました。ただ、見終わった後、パンフを読んだら、原作は、男の人と女の人が、それぞれの立場でふたりで書いているらしいんですよね、2冊。一緒になった3冊目もあるそうですよ。それぞれの立場があって一方的でなくなっているというのが、良かったなという気がしました。

小 野 僕は深みが足りなかったです。ケリー・チャンは、別に日本人がしても良かったですよね。なんか。

林 田 私は、今日見てきたばかりだから、もの凄く感動が残っています。最初に見に行くときは、ちょっとどうでもいいやって感じだったんですが、そしたら、もの凄くハマリ込んじゃって・・。私は恋愛映画が好きで、もう、これ、いかにも分かり切ったメロドラマ、ドロドロな・・こうなるぞというところは、こうなってという・・気持を裏切らないストーリーで、私そういうの好きなんですよ。香港映画の「ラブソング」も大好き。この映画を見ているとき、ときどき「ラブソング」を思い出しました。ラストは「男と女」という映画を思い出したし。車で追いかけるところとか。ミラノの駅も、ベッキオ橋のところもこの間見てきたばかりだったし、全部見たばかりの景色で、それも感動しました。
 日本映画で、こんなにきれいな映画はあんまりないんじゃないかと私は思うんですけど 。 変な無駄なシーンもなかったし、十年かかっている恋愛も現代人には長いと思われるかもしれないけど、恋愛映画の定番というか、そんな気がしました。・・・もっと、いいところが沢山あったんでけど。(笑)ケリー・チャンをなぜ使ったのかが、私も分かりませんでしたね。

酒 井 マーケティングの問題だと思いますよ。(書記:このとき、TVのからみとかいろいろ裏事情について話がでましたが、映画に直接関係なかったので割愛します。)

笹 原 ケリー・チャンは、ちょっと、きつい顔ですよね。

小 野 うん!僕は結局だめだったのは、ケリー・チャンだったのかもしれないです。
 ケリー・チャン・・ですよね、‘ケニーくん’じゃなくって(笑)(書記:おいおい、またそっちに話を持っていくかぁ〜、(笑)。

この頃、世間はちょうど野村夫人の脱税の話で湧いておりました。私、野球事情には、とんと疎いのでわかりませんが、どうも小野さんは、熱狂的な阪神ファン? よくわかりませんが、なんか、話はそちらの方でとっても盛り上がり、とっても愉快でした。


今月の1本

酒 井 「赤い橋の下のぬるい水」この監督の作品、独特のクセがありますがあ、私はあまり好きではないんです。ですが、今回のは、良かったですよ。

鬼 束 「風花」ビデオで見たんですけど、良かったですよ。ぜひ見てみてください。

笹 原 「赤い橋の下のぬるい水」話がたいへん面白いです。作品的には落ちるけど内容的に素晴らしい。来月の合評会で話してみたい。特に女性の感想を聞いてみたい気がします。

野 口 「赤い橋の下のぬるい水」結構さらさらと見ました。深いところをついてくる感じがします。男女の話という単純なものじゃないなと思いました。来月が楽しみです。

林 田 「12人の優しい日本人」すごく面白かったですよ。これ劇場でありました? ここにきて日本映画は、食わず嫌いだったと気がつきました。日本映画を見直した感じ。友達にも薦めています。
 「冷静と情熱のあいだ」合評会でも情熱的に語りましたが、恋愛映画の定番!

小 野 「山の郵便配達」

杉 尾 「ふたりでバァ!!」宮崎在住の浜崎けい子さんと今は栃木県在住の木内里美さんのふたり芝居。「ばあちゃんシリーズ」の第5作目。もぉ〜、なんていいのか、このパワー、この面白さ。見ないと分からない。機会があれば、必見です。後悔させません。お芝居は、映画と違って同じものは二度と見ることが出来ないところに魅力を感じます。
 「ジンジャー」1月に今世紀最大の発明! と騒がれていてその実態は謎でしたが、やっと見ることができました。ぜったい倒れない二輪車。階段登りも出来る優れモノ・・・37万円? アイボより、こっちのが欲しい。

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