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2002年5月号

参加者:笹原 林田 鬼束 杉尾 出水 書記:野口
飛び入り初参加の出水さんをゲストに迎えて、メメントストーリー議論に花が咲き、初書記野口はどこで喋っていいのか困ったり・・何はともあれ楽しい時間が伝われば良いな、と願いつつ、以下、どうぞっ


メメント

監督:クリストファー・ノーラン 主演:ガイ・ピアース キャリー=アン・モス ジョー・パントリアーノ

鬼 束 一回目寝たんですよ。だってストーリーが逆戻りだったからわからなくて。

林 田 え? 寝てる暇なんてなかったですよ。考えるのに一生懸命で。

鬼 束 前のカップルの女の子も寝てたから、ああやっぱり寝るんだな、って。もう一回観たら大体わかって。で、面白かったです。良く出来てますよね。すごいのが、2回目でわかったんだけど、ヒントの数が後になるほど少なくなっていくんですよね。あれも、記憶を、わかる事から記録して行くから、自然にそうなるのかもしれないし、わざとしたようにも見えるし・・わかったような気がしても、やっぱり最後まで考えて行かないと、ちゃんとわかった! と思えない映画でした。こういう病気はあるって聞いたけど。

林 田 これは本当にある病気らしいですよ。痴呆症じゃなくって…

鬼 束 記憶喪失

林 田 うん。こういうのは現実にあるらしい。

鬼 束 思ったんだけど、痴呆症とかで「御飯を食べさせなかった」とかでケンカになる事あるでしょう、もし、自分がなった時には書いとくと良いな、って。メモ帳とかに。「喰べさせんかった」っていわれた時に「喰べさせたよ」ってメモ帳見せて。自分で書いたんだからさ。入れ墨が、「GO」の顔の入れ墨みたいでした。偶然なんだろうとは思いますが…

笹 原 こういう発想自体がすごいな、と思いました。良くこんな事考え付くな、と。さっきも言った入れ墨とかが一つのポイントで、単に記憶喪失と言うだけでなく、何か証拠を残して行く、それをどうしていたか、というのを上手く描いていたな、と思います。こう言うのがもう一本あっても面白くないんだよね。真似だから、一本で良いんだけど、最初に思い付いた人はすごいな、と。それと、その表現の仕方、編集がすごい。感動しました。

鬼 束 アカデミー賞はとったの?

笹 原 いや、とってないと思うけど。アメリカじゃほんとに評価が高い映画でしたね。こないだ言ったように、これは短くてものぱせるね。

林 田 同じ場面は、前にとった場面をそのまま持って来てね。

笹 原 実際は短いんじゃないかな。低予算映画。

鬼 束 アングルとか違うんじゃ・・

笹 原 いや、アングルが違ったら前に戻った時にわからないから、同じ方向のカメラだと思うよ。そういう重なりながら戻って行くところが上手いな、と。

鬼 束 犯人はわかりました?

林 田 犯人は、本人でしょう。奥さんも本人が殺してるんでしょう? 自分が殺して、その時点で頭がおかしくなって、それであんなになったんだと思うけど。

笹 原 それであの男を犯人だと思って殺しちゃった訳だけど、本当は本人が犯人。

林 田 この映画は良くわからないながらすごく発想が、コロンブスの卵じゃないけど、後になって「ああこんなに面白い話があるか」と言うほど面白かったです、でも自分の頭がついていけるか、と言う感じで、見のがさないぞ、なんとかして最後まで自分の力でついて行くぞ、と思いながら、解いていくような、そんな感じで最後まで観ました。で、最後がほんとにあやふや。今、(犯人は)本人だろう、と思ってはいるんですけど、やっぱりちょっとあやふやなところがあります。それと、ガイ・ピアースがほんとに良くて、私はスターの好き嫌いで左右されるんですけど、今まで三回映画で観たんですが、こんなに筋肉の引き締まったかっこいい男だったのか、というのはこの映画で始めてです。やっぱり映画の役によって違うな、と言うのをつくづく感じました。それと、こう言う病気があると言うのは、何かで聞いた事はあるんですが、本当にぼけて、自分自身もわからなくなってしまえば楽でしょうけれど、わからなくなる事を記録していこうと言う努力が大変だな、と言うのと、それを映画にした、って言う事が面白かったのと。本当に、発想の面白い映画でしたね。それと、記憶はなくなるけど車の運転は忘れないんだな、って。

鬼 束 昔の記憶はあるんだけど、奥さんを殺された後の記憶が、って事でしょう。

林 田 身体で覚えてるからかな、って思ったんだけど。頭で覚えてたら、とっさの時に「ブレーキはどこかな」とかってなりそうな気がするけど。

鬼 束 奥さんの事件があった後の記憶だけが、なくなっていくんですよね。

林 田 奥さんが殺された、って言う記憶はある訳だし。

鬼 束 それと、その前の記憶はある訳。

林 田 まあとにかく面白くて、種明かし、と言うか、逆さにまわして並べ変えて観てみたいな、という気がしました。

鬼 束 ビデオになったらする人がいるかもね。

野 口 とても面白かったです。皆さんおっしゃるように映画のつくりが面白かったと言うのと、「そうか、連続殺人鬼ってこう言うふうに出来たりするんだ」ってラストで思ったんですよ。一番驚いたのがその部分なんですが。ガイ・ピアースはかっこよかったし、とても満足した映画です。パズル的で面白かった。

林 田 はっきりはわからないのよね。後ろの方を前に持って来たりして組み立てていくと、順序正しくなるんだけど。

笹 原 ファースト・シーンがラスト・シーンなんだよね。

杉 尾 パルプ・フィクションみたい

笹 原 あれは、主人公の記憶で話が進んでいくけど、まあそうだね。


ジェヴォーダンの獣

監督:クリストフ・ガンズ 脚本:ステファン・ガベル 出演:サミュエルリレ・ルピアン ヴァンサン・カッセル モニカ・ベルッチ エミリエ・デュケンヌ ジェレミー・レニエ マーク・ダカスコ

笹 原 観て大分たつんですが、非常に面白い映画ではありました。フランス革命の時代の、伝説ですね。田舎の方に獣がいて、女性だけを狙って襲われると言うので、それを勇敢な人が見つけに行く、と。

野 口 で、革命勢力がどうのこうの、とからんで・・笹原その中に出てくる若者・・かっこいいやつが出てくるんですが、その人のアクションがすばらしい、と。昔、「フライング・フリーマン」かなんかに出てて、アクションが上手いな、とは思ってたんですよ。で、話がしっかりしてるから・・

鬼 束 フランス映画?

笹 原 監督はフランスの人だったよね。雰囲気もフランスだったし。

杉 尾 実際に獣はいたの?

笹 原 実際にいた、って言うんですよ。映画の中でもちゃんと出てくるんですが。でもその裏には色々・・

杉 尾 語り継がれていた獣と、実際に出てくるのとはどうなの?

笹 原 なんて言ったら良いのかな・・あんまり言えないんですが、まあ、いるんですよ。で、それを操ってる人がいたり、フランス革命の絡みがあったりで。

野 口 ラストが、結構50年後くらいまで飛んじゃうんですよね。で、ずっとその地方にすんでいて、ジェヴォーダンの獣事件とかも観て来た人が歳を取っていい事を言うんですが、もうこれ以上言えないです。

笹 原 観てもらった方がいいからね。

杉 尾 「スリーピーホロウ」は、現実にはいない亡霊をウォーケンがやっていたけど、その獣って言うのは実在する訳?

野 口 います。すごく現実的なんですよ。

笹 原 ただ、クマとかじゃないんですよ。言ったらいけないんだけど。色々裏があって、それを暴いていく、って言う。政治的な事も絡んでます。悪役がすごく個性があってね。

野 口 ヴァン・サン・カッセルがすごかったですね。ダークな感じで。

笹 原 アクションはすごかったね。

野 口 インディアン系の人のアクションなんですが、香港アクションをやってた人が芝居つけて、それでデジタル処理もかかってるんですよ。だから、シュレックのお姫様がマトリックスの真似の回し蹴りをしたじゃないですか。あれのもっとテンポの早いのを実写でやった感じで。ここまで人を魅了するアクション映像を作るんだ、って、私は思いました。とっても映画映画した、映画観たな、って言う感じの映画でした。


助太刀屋助六

監督:岡本喜八 脚本:岡本喜八 出演:真田広之 鈴木京香 村田雄浩 鶴見辰吾 風間トオル 本田博太郎 友居達彦 山本奈々 岸部一徳 岸田今日子 小林桂樹 仲代達矢

鬼 束 これもね、最初は寝たんですよ。で、2回目は途中までみようと思ってみたら、最後まで観ちゃったんですよ。ストーリーが面白くないんですよね。話があんまり大した事ナイから。ただ、監督が込めたい事はいっぱいあったんだけど、ストーリーが弾まない、と言うやつですか。桶屋が出て来たから、「用心棒」とか「荒野の用心棒」が始めに出て来たかな。仲代達也出てたから。「南無妙法蓮華経jが出てくるんですが、その時に岸田今日子さんが三拍子を取るんです。何かの本で、五木寛之か誰かが書いてたんですが、お経とかも音楽と一緒だって。結局みんな一心不乱に唱えて、何もかも忘れる、って言う効果がある、って言うのを思い出した。半分馬鹿にしてるみたいだけど、馬鹿にしながら実は、って言うのがあるのかな、と。そういうのが良いなと思いました。一番最初のところで、仲代達也が「話し合う、って良いなあ」って言ったんですよ。あれが良いなあ、って思って。その前に真田広之がお母さんと話をするんですが。ひとりだと、会話がないじゃないですか。そういう、監督が言わんとしてる事はすごく良いんですが、ストーリーがいかんせん…だから寝てしまったんですね。悪い映画じゃなかったですよ。

笹 原 ひさしぶりに岡本喜八監督、最近ちょっと低迷してたんですが、最初から最後まで面白かったです。テンポとかカメラの切り替えから、間の取り方とかね、岡本喜八あの歳で変わらないな、と。役者も揃ってたしね。この前の「イースト・ミーツ・ウェスト」は今イチだったけど・・最近では市川崑の「かあちゃん」とか、やっぱり役者が上手いからもたせる、と言う。岡本喜八のもそんな感じでね。最後に真田広之が逃げるところがあるじゃないですか、鈴木京香と。で、鈴木京香とのキスシーンがあるんですが、それがすごくてね。偶然桶の中に入ったら会っちゃった、って言う感じで。そしたらお互い好きあってたって言うね。岡本喜八らしいな、と。さらっとしてて。で、二人で逃げてちゃんとハッピーエンド、って言う。だから意外な感じで、しゃれた映画でしたね。ほんとに落語みたいで。音楽が山下ようすけ(漢字わかりません…洋輔です<hiro)で、「ジャズ大名」以来の人で。最近では一番気に入った映画です。すっとぼけたような話でしょ。そんなリアリズムの話じゃないから、そういう意味では作った話を如何に面白くするか、って言う映画ですね。昔「大誘拐」を作った時は、映画の会のベスト1になりましたね。

杉 尾 テンポがあって短くまとまってるのがイイのね。


息子の部屋

監督/原案:ナンニ・モレッティ 主演:ナンニ・モレッティ ラウラ・モランテ ジャスミン・トリンカ ジュゼッペ・サンフェリーチェ

鬼 束 まあ良かったですよ。心を癒される映画、と言う感じで。ストーリー的には悲しい話なんで、それだけ観てると悲しいだけの映画になってしまうんだけど、心を癒しながら、ちょっと元気になってみようかな、と言う感じの映画だと思うんですけどね。スポーツの音で好きな音はなに、って言う話があって、娘はバスケットボールの「ダンダン」って言う音、息子はテニスの「パコンパコン」っていう音、自分はどんな音が好きなのかな、って。ナンニ・モレッティは初めて映画で観たんですよね。監督が主演と思ってなかったから。なかなかイイ顔をしていますね渋くて。もっと早く観たかった。音楽も良くて、サントラ買ったんですよ。ラストでかかる好きな詩が入ってなくて。ブライアン・二ーノっていうプログレッシブロックをやってた人の曲なんですね。西村で探してもらったけどなくて。この人がグループでやってた時の曲かな、と思ったんで調べなきゃ。沈んでいくような曲なんだけど、それが良いんです。

笹 原 ちょっと期待しすぎたんで全然・・期待するほどの映画じゃないな、と言う感じだったんですが。主人公、お父さんは監督がやってるんですが、精神分析医で、患者さんの色んな話を聞くんですが、それが息子の死んだ後はまったく違った聞き方をしてしまう、っていうのが非常にユニークで、面白く観ました。息子の死を乗り越えていく、っていう話なんだけれども、まあその辺はちょっと平凡と言うか。私はそのラストの音楽もちょっと今イチで。最後の曲のところが一番盛り上がるところなんだけど、この曲か、と。この間ちょっと酒井さんとも話したんですが、ナンニ・モレッティは私は一本も観ていないのですが、イタリアの異端児と言われていた人で変わった映画をいっぱい作っていたんですが、それでも評価はされてたんですけれど、そういう人がえらくまともなものを作ったものだからそれで評価されたんじゃないかと。僕らは前のを観ていないから、こんなの普通なんですが。前から観ている人にとっては、こういうちゃんとしたのも作れるんだ、っていう、全然政治とかも出てこないし。本当は前のを観てみたいところなんですが。宮崎公開はこれがお母さん役の人が非常に魅力的で、最後まで見とれていました。


今月の一本

野 口 「太陽を盗んだ男」プルトニウムを盗んで原爆を作ってしまう男の話で、すごく面白かったのが、その原爆で警察を脅迫するのに、何を要求して良いのかわからなくなるところ。アクションがめちゃくちゃで良かったです。

鬼 束「キリング・ミー・ソフトリー」ヘザー・グラハムを僕の9番目の女にしたい。ヘザー・グラハムが好きだから全然退屈しないで観ました。

林 田 「ベティ・サイズモア」ビデオで見ました。「ブリジット・ジョーンズ」の時は今イチでしたが、これはレニー・ゼルウィガーがすごく可愛くて、良い映画でした。

杉 尾 「ビューティフル・マインド」今日観て来ました。ホームページにも書いてあったけど、「シャイン」の数学者版みたいな感じで、私はすごく面白く観ました。今度の合評会が楽しみです。

出 水 夜な夜なBSで古い映画を観ています。これは、というのはないのですが。

笹 原 観てはいるのだけれど、これは、というのは全然なくて、今回はパスです。

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