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2002年6月号

出席者:♂ 鬼束 加賀 酒井 笹原 横山 ♀ 野口 林田 杉尾(書記)

最近の宮崎はどうしちゃったんでしょう? 来る日も来る日も雨ばかり・・。早く、あのパカ〜ッと真っ青な、そして焼け付くような夏にならないかなぁと思う書記杉尾でありました。今回は、ハートに滲みる3本を皆で話してみました。では、どーぞ。

ビューティフル・マインド

監督:ロン・ハワード
出演:ラツセル・クロウ ジェニファー・コネリー エド・ハリス他

林 田 私は、ササッーと見てしまって、あまり印象に残らない作品でした。アカデミー賞を取ったわりには・・・あんまりでした。ま、妻の愛をすごく素晴らしいというのを言われていますけど、個人的に‘妻の愛’は好きではないので(笑)どうでもいいんですけど(笑)。ジェニファー・コネリーが、私の中では17、8歳の感じしか持っていなかったんですけど、上手に年を重ねた感じで、老けてなく良かったです。ラッセル・クロウは、最初、「こんな数学者いないだろう!」って思ったけど、なんか実物と似ているらしいので、やっぱり、数学者でも、細くて、キリッとしているとは限らないんだなって思いました。

野 口 だいぶん忘れているのですが、見た後の印象で、ものすごく感動したような気がします。これだけ頑張って、一生懸命、人生を生きているっていうのが凄いなぁというのが、まず、感動でした。妻の愛とかは、脇に置いておいて、その感動だけで良かった気がします。ラッセル・クロウの繊細な演技は、とても良かったです。ジェニファー・コネリーも献身的な妻の愛とかいうのは、私は疑問があり、そういうんではなく、あれはただ流れに逆らわなかっただけじゃないかなと思ったりもします・・が、でも、すごく良かった映画でした。

笹 原 ・・良かったと思ったんですけど、今考えると印象に残っていないっていうのが不思議なんです(笑)。ラッセル・クロウが今までとは違う演技をしたというのが、凄いなぁというのと、ジェニファーが、林田さんが言われたようにいい年のとりかたをしていたなと思いました。彼女がアカデミー賞を受賞して良かったと思います。前半からの仕掛けが割と面白かったし、最後は感動したんですけど、今、あんまり印象に残ってないんですよね、申し訳ない(笑)。

加 賀 ノーベル賞を取った人は沢山いるけど、この人の場合は、精神的な障害を持っていたということが映画につながったんだなと思います。話が、学生時代、ミステリー的な部分、老年期の三つに別れていて、ボクは、ソ連とアメリカの陰謀か何かという部分にうまくだまされました。もしかしたら、本当はあの医者(クリストファー・クラバンはときどき悪役ででるので・・)の方が悪いんじゃないかとか・・判断に困ったりして、そこが面白かったですね。その他のノーベル賞を取る部分とかは・・退屈でした(笑)。しかし、あれだけ幻影をはっきりと撮られると、見てる側はだまされるよね。ルームメートの幻影は良い役でしたね。あの人がいたから、助けられたというところ多いと思う。(林田:あのルームメートは学生時代には本当にいた人なのでしょ? 皆:違うっ、違うっ!あの時からすでに病気だったんですよ。)

酒 井 非常に平均点が高くて、いろんなところの点数が高いところがアカデミー賞に繋がったんじゃないかと思います。しかし、高いわりに、個々のインパクトが弱いので、今1ヶ月たってみたら、良かったんだけどいまいち覚えていないなってことになるのではないかと思います。「恋に落ちたシェイクスピア」というのがあるけれども、あれもボクは同じイメージを持っています。上手い、きれいだけど意外と印象に残っていない。でも、細かいところを見ると非常に上手い。演出とか。文句のつけようがない。完成度が高いけど、ただ抜けているのはインパクトが、ここぞというところがないということだと思います。ラッセル・クロウも上手いんだけど、ある枠から飛び越えてくるようなところが感じられなかった。ボクが一番印象に残っているのは、最後に万年筆を貰うところ。ボクもシネマ1987の皆さんに万年筆を貰いたいと言いたいところだけど、皆、安そ〜なモンしか使ってなさそうなので(笑)やめときますっ。(笑)

鬼 束 ・・・・眠っていたから(笑)万年筆の場面も唐突だった気がしました。精神分裂症の描き方が、すごくリアルなので怖さが際だっていて、何か・・・。狂気と天才は紙一重というけど、この映画を見ていると、その言葉がなんだか安っぽく思えます。あと、ルームメイトの連れている女の子が、話が進むに連れて段々と気味が悪くなるところが印象的でした。エド・ハリスはもういい、見たくない(笑)と思ったけど、ああいう役なら見ても良いと思った。ラッセル・クロウが授業するときに、半袖でしていたけど、生徒達がきちんとネクタイをはめているのが不自然な感じがしましたね、ぼくは。ラフにしていた方が絶対頭が回るって。

横 山 ジェニファー・コネリーが良かったですね。昨年の「レクイエム・フォー・ドリーム」の時も良かったんですが、今度の方がまともな役で、ぼくはファンなので大変良かった。ラッセル・クロウは「グラディエーター」よりは、はるかに良かったです。病人の役は、ダスティン・ホフマンのような演技だと思いました。あと、脚本は上手くまとめていたと思います。前半はエド・ハリスが出て来るあたりから・・ぼくは、もうおかしいなと思って分かった気がしましたけど。後半の夫婦の関係も良かったですよ。事実とはちがっている部分もあるらしいけど、映画としては、大変上手くまとまっているという感じがしました。

杉 尾 私は、面白かったし、今でも印象に残っています。ラッセル・クロウの年齢に沿った老け方が、それぞれの時でとてもリアルですごいと思いました。スパイの部分も緊張感があり、話のテンポもあり、全体的に二つの意味で楽しめる映画だなと思いました。夫婦愛は、林田さんは苦手だと言ったけど、私は私にないものを見ることができるからいいな(笑)と思ったりします。前にも言ったけど、「シャイン」の数学者版みたいで、素直に感動し、こころから良かったと思いました。

酒 井 彼の場合、症状としてわりと幻影とか害のない感じのものでわかりやすかったですね。ほんとだったら、蟻とか虫が襲って来たりするようなものをみると思うけど。

横 山 おそらくあれは、脚本上の創作(フィクション)だと思いますよ。普通はあんなじゃないでしょう、やっぱり。

酒 井 そうかぁ、そうですよね、数学の公式とかルートとかが襲ってくるようなもんを見ていても、どんなふうに映像にするか難しいですもんね(笑)。

杉 尾 病気が一生治らないものであれば、その病気を受け止めて、うまく付き合って行くというしかないけど、そうなるまでがやはりすごく辛いでしょうね。

野 口 そこがすごいですよね・・・・。

この後、笹原さんが「なんで新聞の切り抜きにあんなにこだわったのか」と言ったのをきっかけに、加賀さん「エド・ハリスのような人は現実にいた人よね?」とか、「な〜んで違う違うって」という感じになり、どれが現実でどれが幻影なのかという基本的な部分で盛り上がりました。最後にきわめつけは、加賀さんの「こんなに混乱するっちゅうことは、単に監督の描き方がヘタくそなだけやが」というとんでもないヤケクソな意見まで出てしまいました(笑)。次は、杉尾期待のこれです。


アメリ

監督 :ジャン=ピエール・ジュネ
出演 :オドレイ・トトゥ マチュー・カソヴァン ドミニク・ピノン他

野 口 久しぶりに友人と一緒に映画を見に行きました。すごく楽しい映画でした。アメリというキャラクターが特異というのと、描き方がフランス的だったというところが印象に残ります。アメリのやっている事って、私から見ると相当根暗だなと思うけど、これがフランス映画のエスプリなんだなと思って、それはそれで楽しく見ました。あと、小物関係がよくって、一緒に行った友人とアレ欲しいねと話したりしました。音楽も良かったです。う〜、うん、アメリは、ま、良かったです。

笹 原 ちょっと、予告編を何回も見ていたので、面白いところは大体出ていて、それが残念でした。でも、予告でなかったところでも、良いところは沢山あって、やはり、「デリカテッセン」の監督だなと思いました。非常に細かく凝っていて、写真の男の謎解きとか、絵柄、色と音楽の使い方、上手いと思います。もう一度みたいな。(杉尾:私も。)

酒 井 「アメリ」はキネマ旬報からなにから全部ベストテンに入っている作品だから、あまりにも期待が膨らみ過ぎて、見たとき少し失望したところもありました。それを除けば、良い映画じゃなかったかなと思います。細かいところが、いろいろ凝っていて良いのですが、全体的にフランスのパリの雰囲気がもの凄くあの作品から伝わってくるのが良かったですね。特にあのパリの何気ない雰囲気、街角とかの描写がもの凄く上手くできている。だから、ストーリーがどうこう言うより、あの映画の持っている独特の雰囲気が一番好きでした。印象に残ったのは、アメリのお父さんが、庭にいた人形がいろんな所を旅している写真を見て驚いてる顔の描写とかです。うん、みんながこの映画にはまるのは分かる気がします。

鬼 束 アメリが好きになる男の子が、階段を駆け上がる時にファィルを落とし、それで彼と出会うというのが、なにかシンデレラの物語を思い出してしまいました。証明写真の中の男を「死を意識した男」と推理したのに、ただの機械の修理屋だったと言うおちとかは楽しかったです。アメリは可愛いけど、瞬間的におばさんの顔が出てきて(笑)・・・う〜ん、なかなかでした。

杉 尾 私は、「アメリ」は宝箱に入れて置きたいような大切な映画でした。「デリカテッセン」のジャン・ピエール・ジュネ監督の映画ということで大変期待して行ったけど、期待通りでした。ところどころに「デリカテッセン」のエッセンスが入っていて、その部分は1人うれしくてニヤニヤしながら見ていました。細かい部分の、例えば、「ビニールのプチプチを潰すのが好き」とか指にセメダインを塗ってはがしたりとか、「入浴の時のシワシワになる手が嫌い」とか、いっぱい懐かしい感じがして嬉しくなりました。細々したサスペンス、謎解きも充分楽しくて、アメリが男の子に仕掛けるところとか、私も体験してみたいなどと思ったりしました。いろんな所を一枚一枚絵はがきにして取っておきたいです。

林 田 期待通りでした。フランス語がふんだんで、音楽がそのフランス語に乗って流れてくるのが嬉しかったです。ホントウにあこがれの言葉でいいなって。この頃、ドイツの話でもフランスの話でも、なんでもアメリカが作ってしまって英語だらけでしゃべるので・・・フランス映画って、私は最近みていなかったのかなぁって改めて思いました。主人公も、脇役の人も知らない人ばかりでした。フランスに飢えていた分、嬉しい映画でした。

酒 井 アメリに出てくる登場人物って、皆なんか、まともな人っていませんよね(笑)。

林 田 あの金魚が自殺未遂するのが可笑しかった(笑)。

杉 尾 お母さんの上に人がおちてくるのなんて、笑えないけど笑っちゃう。

林 田 アメリって、実際にいたら暗い女のこですよね。友達とも遊ばないし、1人でなんかこそこそやってるし、現実にあんな子がいたらいやな女の子と思われるかも知れないですよね。

杉 尾 でも、レストランとか皆となじんでましたよね、余計なことはしたけど(笑)1人暮らしの老人とも、上手につきあうし、八百屋の若い子の復讐もしてあげるし(笑)。

酒 井 脚本に女性が入ってるとかではないんですかね?なんか、ああいうふうな感じって、ちょっと男の人では出てこないし、考えられない感覚ではないかしらん。

杉 尾 でも「デリカテッセン」なんかとかみていると、本来ファンタジックな感覚の持ち主(ジュネ監督は)だなって凄く感じますよね。しかし、あの仕掛け方、面白かったぁ、なんか私ひとり盛り上がって、いっぱい喋ってるみたい!

横 山 ボクは、まだ見ていないんだから、あんまり話さないでくださいよ。

そうでした、そうでした。まだ、見ていなかったんでしたね、横山さん。「アメリ」まだやっています。是非、見てくださいね。見逃したら、これってビデオでも充分楽しむことができます。それでは、次にいきます。次の作品、書記杉尾が未見のため、チクハグな文章があるかもしれませんが、ごめんしてください。


ぼくの神さま

監督:ユレク・ボガエヴィッチ
出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント ウィレム・デフォー他

笹 原 最初から最後まで画面に釘付けというか・・・、もうホントウに凄い映画でした。けっして収容所とかだ出てくるわけでもないのに、(ナチは出てくるけど)その物語のバックが見えるというか・・・、しかも、子供たちだけであれだけ描いたというのが凄いなと思いました。特にオスメント君もそうなんだけど、その弟役の子供が、本当に演技なんだろうかというくらい凄くて、子供にここまでやらせていいのだろうかというくらい結構残酷な話でした。非常にショックな映画でした。大人もウィレム・デフォーも出ていて、ちょっと話をしめたかなと思います。ユーモラスな場面もあるんですが、全体的に戦争の狂気というか、ポーランドでのロケも、ポーランドもナチの脅威があったんだなと思いました。全然期待していなかったんで、その分感動しました。

酒 井 ちょっと、あまりにもストレートすぎて、見るのが辛かった。もうちょっと、子供の集団を描いているのだから、子供らしいいじらしさとかユーモア的なものがあった方がもう少し楽になるんだろうけれど・・・。最初から最後までその悲惨さとか、死の恐怖とか引きずっている作品なんで。最初、逃げてくるところから最後汽車にのるところまで。確かに映像がポーランドの夏の場面を描いて非常にきれいなんですよね、だから、その主題が余計に辛く出てくるんです。そんな陰惨な場面って、そんなになくって、あのカメラのきれいさが返って対比的にそれを浮かび上がらせています。子供達の演技が非常によくって良いんだけど、ウィレム・デフォーをボクはあまり好きではないので、神父の役には違和感を感じました。これって、本当にあった話なのか、わかりませんが、日本語題が「ぼくの神様」だけど、少年がユダヤ人でユダヤ教を信じているけど、キリスト教に改宗しますよね、そして、キリストの物語が伏線になってるけどは・・・そこら辺が、ボクはキリスト教ではないので分かりにくかったです。宗教的な部分というのは、立ち入ることができないというか、そういうところがあったと思います。そういう部分を除いたら、非常にストレートで、ある意味陰惨なイメージを与える映画でした。

鬼 束 98分という時間が長かったかなと思いました。眠かったです、3カ所くらい(笑)。ウィレム・デフォーが良かったですね。顔は良いし、何か確信に充ちていて、その確信があふれていなくて、乾いていて、とっても静かで良かったと思います。映像が、上下、縦横、いろんな角度からとっていて、なんかナチスを分析して語っているような気がしました。それを、この映画の広がりと考えれば、色の使い方とか映像表現の深さに感じました。将校たちが、少年たちのを利用して略奪行為をするところも、人間を見せ物にするという感じで、映画「愛の嵐」の一場面を強烈に思い出しました。

林 田 これは、本当に凄いショックを受けた映画でした。私このごろ、思うんですけど、映画って何の為に見るのかなって・・・。娯楽のため、楽しみため、いろんな歴史を知らせるためとか、いろいろありますけど、何か、ここまで見せてくれなくてもいいと思う・・・。本当、もう、とっても辛くって、やめてくれって言いたいくらい。最後のあの男の子が、自分の名前を言って、汽車に乗っていく場面・・・・男のこ・・ラスト自分がユダヤれれれ#*+●★※〜〜・・・・!!!??

ズズズズッズ〜〜えらいことですっ!林田さんが、せっかく一生懸命に話されている途中から、まるでテープが高速回転になった見たいに早口になり、最後にはヘリウムかなんかを吸って喋ってるみないな可愛い声になったかと思った途端に、プチッと途切れてしまいました・・・・・・・(+o+;; 申し訳ありません、そんなわけで、以下は聞き取り不可能です。こんなこと・・アリ?


今月の一本

酒 井  【ブラックホーク・ダウン】

鬼 束  【黒木国昭さんのガラス工芸展】  【錦湖(kumho)アシアナ四重奏団チャリティコンサート】

笹 原  【光の旅人】

野 口  【WXIII 機動警察パトレイバー】

林 田  【スペインでのフラメンコ】

加 賀  【ロード・オブ・ザ・リング】

横 山  【クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦】今年の宮崎映画祭でシリーズ10本一挙上映してほしい。

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