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2002年7月号

参加者:笹原 鬼束 林田 酒井 杉尾 野口    書記:加賀

スパイダーマン

監督:サム・ライミ 脚本:デッビド・コープ 撮影:ドン・バージェス 音楽:ダニー・エルフマン 
ピーター・パーカー/スパイダーマン:トビー・マグワイア メリー・ジェーン・ワトソン:キルスティン・ダンスト ノーマン・オズボーン/グリーン/ゴブリン:ウィレム・デフォー ハリー・オズボーン:ジェームズ・フランコ

林 田 一緒に観る相手にもよるなと思ったんですけど、一人で観に行ってたら、そんなに面白くはなかったと思うんですよね、十歳の孫と行ったんですよ、5年生なんですけど。女の子なんですけど、けらけら横で笑うんで、一緒になって私もすごく面白かったのは、彼女のせいかなって思います。面白い、面白いって横で騒ぐもんですから、ほんとに面白かったです。途中、あんなたくさん同じようなシーンは、必要ないわっていうのは思いましたし、最後、どうだったかは覚えてないんですけど、最後まで超能力は消えないままで終わりましたよね?

笹 原 まだ続きがあります。

林 田 まだあるんですか、続きが。どっかで超能力、蜘蛛の威力が消えて、時間切れになってドジするのかなと思ってたら、そうでもなかったので、あんまりオチがないというか、面白くはなかった。やはり一緒に行った相手によって映画っていうのは、すごく楽しいもんだなていうのは思いました。

酒 井 アメリカで大ヒットしてますね、スターウォーズよりヒットしてるんじゃないんですかね。楽しめたんですけど、ちょっと中途半端な感じがするんですよ。お金掛けてる割には敵があんまり大きくないし、ちっぽけだし。監督の描き方が、派手なアクションとかなんとかというよりは、もう少しスパイダーマンになった宿命を背負って、どうのこうのという、そこら辺のところを描きたかったような気がするんですけども、はたしてそれが十分に描いてるかどうか、中途半端な感じになってしまったんじゃないかなと思います。「バットマン」のシリーズあたりを、非常に意識してるんじゃないかと思うんですけども、ぼくはバットマンシリーズをそんなに買ってないので、まぁ、どっこいどっこいかなという感じがするんですよね、ただ、バットマンは独特の雰囲気ですよね、あれは、やっぱりすごいなと思うんですけど、そういうものが無かったと。というところですね。後、トビー・マグワイアは、ああいうヒーロー役というか、アクション的な感じには雰囲気的に向かないような、かわいいインテリっぽい顔してるんですけど。ちょっとそこが、初め不似合いだと思ったんだけども、意外とよく見ると彼もよくやってるなぁという気はしました。

笹 原 私は大好きな映画でね、酒井さんの意見と違うんだけど、スパイダーマンの苦悩がすごくよく描かれていると思って、それが感動したんですよ。最後に彼女に言ってきたときに、自分は別の道を行くということを、はっきり言いましたよね。それがラストシーンだった。すごく深い映画だったなと思って、びっくりした。もっと軽い映画かなと思ったら自分の苦悩をちゃんと背負って描いていた。それと、ウィレム・デフォーの悪役はよかったと思います。最初から、スパイダーマンの彼と彼女が隣同士で、そのへんの家の描き方とかがうまいね、もっていきかたとか、ものすごく身近に感じて、その彼がスパイダーマンになってしまって、最初はよかったんだけど結局自分のおじさんが殺されたり。それがまた、自分の失敗で殺されて、という感じ。そのへんから苦悩が始まる。また、おばさんや彼女が危ない目にあう、それを助けていく。そのもって行き方がうまいんですよ。ストリーとして、すごく感心した。このシリーズをまた観たいなという感じでした。一般的には彼女が、魅力的でないという女性の意見が多かったですけど、わたしは別にそれは全然気にならなかった。監督の趣味かなという。サム・ライミという監督はどれもあまり好きでないんだけど、「ダークマン」という評価された映画も嫌いだったんで、同じような映画だと思って期待してなかったのもあるんですよ、そしたら全然「ダークマン」と違って「スパイダーマン」は良く出来てる。音楽はダニー・エルフマン、「バットマン」と一緒ですよね。だからちょっと似た感じは出てましたけど。カメラはすばらしかったなと、最後まで感動した映画でした。

加 賀 スパイダーマンの話は、漫画でもテレビでも見たことなくて、原作は知らないけど主人公の生い立ちとか分かって、その点では良かった。もうちょっと暗くて深刻なヒーロー物かとおもたら、割と軽かった、主人公の見た目が。

笹 原 ちょっと能天気かと思ってたら、そうじゃなかった。

加 賀 僕はもうちょっと暗い映画かなと思ったんだけど、割と明るかったんで期待とちがった。

笹 原 おじさんを殺された時とか、自分が泥棒をつかまえなかったから殺されたんでしょう。

加 賀 でも、ちょっと描き方が軽いな、もっと深く描けないかなぁ、とか思いました。

酒 井 両方(アクションとシリアスと)かじろうとしてるから、両方とも徹底してないから、そう感じるんですよ。普通のヒーローものよりはいいんだけど。

加 賀 軽く楽しめる映画としては、よかったと思うんですけど、もうちょっと期待してたんで、その点では、ちょっと期待はずれでした。ウイレム・デフォーの息子の役の役者さんが、ジェームズ・ディーンにちょっと似てましたね。

林 田 ジェームズ・ディーン物語で主演をした人だから。

  ああそうなんですか。

林 田 おじさんが殺されるとことか、わざとらしい。

鬼 束 じゃ、そのおじさんが殺されるとこから行きましょうか、あれはですね「俺には関係ない話だ」と相手がトビー・マグワイアーに言うんですね、それを彼は怒ってその言葉を返して、犯人をにがすんですよ、そいつにおじさんが殺されちゃうんですよ。ということは相手か受けた怒りに対して怒りで答えちゃいけないということなんですよ、スターウォーズのエピソード2でもたぶんテーマになってるんじゃないかと思うんですけど同時多発テロ以降のアメリカ人の意識改革するべきことが、ここにでてるんですよね。自分に関係ない話なんていうのは、生きてる限りそんなものは無いんだというね、関係はあるんだということを言ってるんですね。そこのポイントを押さえとかないといけない。彼女役の女の子はですね、最初は目元とか子いくて引いてしまったんですけど、見てるうちにだんだん、魅力的になっていくんですよね、この娘(こ)はパンフレット読んだら六歳くらいから子役で活躍してるっていうことで、主人公が六歳くらいから幼友達ですきになったていう設定ともよく合ってるていう、味なキャスティングがしてあるなと思いました。インタヴュー・イズ・ヴァンパイアで出てた女の子らしいですが、そういわれれば可愛い女の子が出てたなというのを思いはするんですよ、具体的には思い出せないんですけど、この子だったんだろうなぁ。あと、ゴブリンがなんか、ドラゴンボールでいえばピッコローの顔にそっくりだし、これは原作があるから、どうかわからないんですけど、乗ってる機械はキントウンだし、ハリウッドがドラゴンボールをつくるっていうのも、これを見てると十分できるなという感じで思いましたね。前半での昼間の蜘蛛の糸のアクションがちょっと荒くて、こんなものかなって思ったんですけど、夜のネオンライトの世界になると、完璧に映像化してあって楽しくてしようがなかったですね、林田さんは何回も同じシーンて言われたけど、何回やってもらっても、楽しいという素晴しいシーンでしたね。

酒 井 いつになったら、糸がきれるのかなとか、

林 田 失敗しないのかなぁとか、

笹 原 最初、練習するとこがありました、何回もね、あそこからちゃんと描いてあるからよかった。

鬼 束 画面的には明るくてきれいで楽しいですけども精神的には、しっかりしたテーマもあるという極上のエンターテイメントという感じでした。

林 田 洋服は自分でデザインするんですよね、ああいうのは今回が初めてだった。

笹 原 バットマンのキャットウーマンがいました。

林 田 ああそうか。だからそういうとこはちょっと変わってていいかな。

杉 尾 じゃ、そのコスチュームを着てないときもできるわけ?

  出来る。

林 田 その人にはそなわってしまっているわけよ。

杉 尾 そしたらわざわざ着なくてもいいんだ、

笹 原 顔を隠すとか、

林 田 普通は力はないけど、なってしまえば強くなるんでしょ。そんなんじゃないよね?

笹 原 じゃないよね。

加 賀 スパイダーマンが良いことやっているのに、一部の人に嫌われるのが不思議。

鬼 束 あれは、見る人の立場によって憎まれる。

加 賀 だって、警察から逮捕されかけたり、

鬼 束 あれは、よく見たらわかるけどね。

加 賀 だって、そこまで悪いことしてるわけじゃないよね。

鬼 束 いいことやっていても、憎まれることがある。

酒 井 あの設定でないと、あの映画が生きてこない。だから自分を正義の味方と思っても、必ずしもそうでない、そこに本人の苦悩がでてくるわけ。

林 田 お隣同士にしては、あまり幼馴染の感じがしない。初恋のひとだけど、よそよそしい。ともだちっぽくはなかった。

酒 井 劇画は見たことないんだけど、イメージからすると暗そうな、バットマンみたいなイメージがあったんですけど、それを逆手にとって精一杯明るくつくってますよね。

笹 原 だって、永遠と続いてるシリーズでしょ? もう完結したんですか?

酒 井 どうなんでしょうね。

林 田 アメリカ人て、ああゆうのが好きよね。

加 賀 日本人が手塚治虫が好きみたい小さい頃から見てるから。

林 田 どんな蜘蛛にさされたらそうなるの?

笹 原 特殊な遺伝子操作された蜘蛛にさされて。

林 田 あの人だけ、さされたの?

笹 原 そう

杉 尾 ほかの人もさされる可能性もある?

笹 原 ある、一匹だけ逃げて、それにさされた。

林 田 私は、さされてああなれれば気持ちいいだろうな。

笹 原 そこまで考えなかった。

林 田 でも顔が変わらなければ、体も変わらないし、蜘蛛になるんじゃないのよ。人間のままだから、一番いいのよ。

笹 原 握手してたら、くっつくかもしれない。

酒 井 筋肉モリモリになれる。

笹 原 視力がよくなる。

鬼 束 大きな力には大きな何とかが伴う。

笹 原 大きな責任が伴う、そこが大事なとこですよ。この映画のポイント。


突入せよ!「あさま山荘」事件

監督:原田眞人 脚本:原田眞人 原作:佐々淳行 撮影:坂本善尚 音楽:松村崇継 美術:部谷京子
佐々 淳行:役所広司 宇田川信一:宇崎竜童 野間本部長:伊武雅刀 石川警視正:山路和弘 佐々 幸子:天海祐希 丸山参事官:串田和美

鬼 束 前半場面が暗めのせいか、「アザーズ」で寝たんですよ。この日2本観てアザーズを先に見て、アザーズで寝たんですよ、でまた寝たんですよ。でも突入になるところのクライマックスの雪をかぶった風景ですね、あれが素晴しい迫力で良かったですよ。美術がすごい力量だったと思ったんですけど、最後みたら女性の人だったような気がしたんですけど。ほんと良いものを見せてもらったなという感じでした。警察内部の話が…っていう話がでているけど、僕はそれほど、丁寧には描かれてないと思ったんですけどね。それよりも描きたかったのは、あの風景であり、その中で闘う人々の姿だったんじゃないかなという、そういう感じを持ちました。そこから考えていくのはまた、個人個人の自由。後半のクライマックスがよかったんですね、まぁそういうとこでした。

酒 井 思ってたよりも楽しめました。切迫した雰囲気があるんだけど、のほほんとしているところがね随所に見られて、その雰囲気と実際の事件との両方のギャップがあの映画の魅力じゃないかなと思います。意外と、やるぞ、やるぞと思いながら警察の方もいっぱい抜けてるわけですよね、そこらへんが、ものすごくユーモアがあふれていて、そうゆうふうなところが一番いいとこじゃないかと思うんですよ。普通ああゆうのをやると、ものすごく緊迫感、緊張感がずーと持続して最後のあのシーンに突入するんだけども、実はそうじゃなくって、態勢を整えようとしてドタドタと何やってるか分からないし、現場の混乱ぶりというのがですね失礼だけど見てると楽しいんですよね、またこんなことをやってるかなって、それが実際だと思うんですよね、警察サイドに描いてあるのは事実ですけど、ただ警察サイドが百パーセント正しいというより、かなり批判的に描おいているんですよね。だからあれはですね表面上は警察を正義と扱っているけど、かなり体制批判とか、その批判精神がものすごく旺盛だと思うんですよ、それを見ている人間がそこを、読み取れるか取れないか、そこらへんが非常に面白い作品だったんじゃないかと思いますね。あと個々に、皆さん演技がうまいですよ、それにはまってるし。だから今年観た邦画の中では何本か挙げるとすれば、真っ先に挙げる作品じゃないかなと思います。一番感動したのは、帰ってきて足を洗ってくれるシーンですね。あのシーンを愛妻に見せてあげたい、やっぱり奥さんは、そうでなくてはいけないと私はつくづく思ったんですよね。以上

林 田 何回も観ながら、笑いたいところがあって、笑っていいのかしら、この映画はまじめな映画なのに、私ひとりで笑って、他の人はと思うんですけど五六人来てて、あんまり笑う人もいなくて、私クスクス笑う映画なのかな、まじめな映画なのかななんて思いながら笑いました。笑わせようとしてないのに、ほんとにまじめにやっているのに、こっちには可笑しい。酒井さんがおっしゃたように、警察の内部がドタバタしていて、ほんと間の抜けたことをやったり、まじめなのに抜けたり、煙草の煙がすごいっていうのは、30年昔から、やっぱりって思いました。今はあんな煙草のけむり…わざとしているっていうのはあるんでしょうけどね。それと今教えてほしいと思ったのは、どの人がどの程度偉くて、この人はこっちに命令をする立場であって、というそういうところと、キャリア、ノンキャリアの違いとか、一応聞いてはいますけど実際どうなのかなとか、長野県警の一人すごく楯突く人がいますよね、あの人なんかキャリアじゃないわけでしょう。普通の警察官というか、キャリアに対してやっぱり一つ一つなんか腹が立つと言うよなところがあったし、ほんとに犯人側を一切描いてないというのも、面白かったと思いますね。それはほとんどの人が知っている内容で、なぜそこに行ったかというのは抜きにして救出作戦に絞ったところが面白かったと思う。日本の官僚とか警察とか、そういうところの面白さというのは、ブラックユーモアで今まであまり無かったような気がしますから、こんな感じでいろいろあると面白いかな。私はとにかく面白いというか、可笑しいというか、そういうふうで見ました。それとわたしは、たぶん男の人はあのシーンはすごく嬉しがるシーンだろうなと思ったんですよ。今おっしゃった足を洗ってもらうとこ。私は絶対洗わないと思った。その以前に夫婦の仲がいいか、そうでもないかにもよるんでしょうけど、たぶん最後で足を洗ってもらうだろうと思っていましたけど。私だったら、お湯くらいは持っていくかなぁ。

杉 尾 だけど役所広司だったら?

林 田 そうね、私、役所広司はね、いつも認めたいけど、そんな、それほどの人かなとずっと思っていました。割といい主演が続いていますけど、ここ二三年なにかというと、あの人が主演で、そんなと思っていたけど、「あさま山荘」を観たら、たしかにこの人以外では中々かなっていうふうには思いました。役所広司でも私はお湯を持っていくだけ。

杉 尾 なんで今さら「あさま山荘」なんだろうと思って、合評会で取り上げられなかったら、まず観にいかなかったと思います。酒井さんと笹原さんが良かったよというのを聞いたもんだから、間違いないだろうと思って観にいきました。赤軍とか、ああゆうのが出てこないのがやっぱり面白いなと思った、「踊る大走査線」を観てないもんだから、ああいうのが免疫がなくって警察の内部のごたごたがすごく新鮮で、役所広司の役どころというか、こっちをたてながら、感情を抑えて「まぁまぁ」って言うところのサラリーマン的なところがすごいおもしろかった。それと、あんなんだったら「あさま山荘」て題をつけなければよかったんかなと思ったりするんだけど、一応原作になってるのがその事件ていうことで、二人警察官の方が亡くなっているというのを実際に知ってるもんだから、現場で弾が飛んでくる時に、ああどの人が亡くなっちゃうんだろうとか思って、そこら辺は緊張して緊迫感がつたわってきたていうのがあります。それでフェイントが何個かあったもんだから、当たって亡くなったかなと思ったら、こう立ってね、ああこの人じゃなかった良かったとか思いながら観てたんだけど。民間の人はあんな形で死んじゃったの?

  知らなかった。

林 田 確かにニュースでは、身替わりになるって、あんなふざけた感じじゃなくて、私はニュースですごい人がいるな、世の中にはえらい人がいるなと思ったよ。

杉 尾 ヤク中とか言っていたね。 こっち側から見てたあの事件じゃなくて反対側の方が良く見られて面白かったですよ。最後感動して、達成感がすごく伝わってきて素直にジーンてきました。

笹 原 私もあさま山荘の事件を普通に描いてるのかなと思ったら全然違って、それがよかったんですけど。さっき酒井さんが言われたように、実際にあさま山荘を攻めてるときと、警察内部のギャップがすごくよかった。役所広司はやっぱり、ものすごくうまいなと思いました。こんどの映画は特に再認識させられました、魅力的やもん、男性が見てもね。

林 田 少ないよね、ああいう人って。あの人よりもっと若い人になるとああいうタイプっていないよね。

笹 原 ただ長野県警は、実際そうだったのかもしれないけど、愚か過ぎる。むこうはむこうの言い分があるだろうけどね、こないだ中瀬が言ってたけど、やっぱ地元は地元でやりたいていうのがあるから、警視庁、警察庁に入ってもらいたくないていうのが強いみたいですね。

杉 尾 言われたことは、ちゃんとしなくちゃいかんわね。

笹 原 あまりそういう経験なかったでしょう、あの時まではね。

酒 井 ものすごく完成度高いんですよね、エンターテイメントとして見れるし、かといって批判精神を忘れてない、いろんなとこをうまくバランスとりながら、ああいう形にできてるんですよね。邦画では珍しい、これほどいろんなところで上手くいってるのは。

林 田 あれほどの寒さっていうのは、体験してないとわからない。

笹 原 お湯を足にかけたりしてね。あの辺はすごくリアルな感じがしたよね。この原田眞人監督の前作「金融腐食列島・呪縛」は評価高かったんだけど、あまり面白くなかった、これみたいな群像劇だと聞いててから、また同じような感じかなと思ってたら全然描き方が違って、その点はよかったですね。

加 賀 よかったです。やはり警察内部の県警との縄張り争いがおもしろかった。主人公がキャリアなんですが、気配りが大変だなぁと、部下がキャラメルを途中で配るのをやめたのを見て、くばるなら皆に配れよと注意したり、人質を救出したとき後でよさそうなのに、その場で名前の確認をしたり、とかいったとこなど。

林 田 アメリカの事件だったら、バーッと入っていって、人質も死んでもしようがないっていうか…

加 賀 最初、警察庁長官が、武器は使わないようにとか言っていましたよね。

笹 原 あの時代はまだ、そのあたりがはっきりしてなかった。アメリカはFBIと地元警察との争いになる。

林 田 たいていFBIの方がまぬけだよね。

酒 井 実話を完全にベースにしてあるだけに、こういうことが実際に起こったんだなぁと。実際かっこいい人間って、アメリカ映画にはみんなドジって、失敗がかり。こんなんでどうなるんだろう。そういうところが非常にいいところ。

加 賀 実際にあったことなので、描きこみがしっかりしてまいすよね。

杉 尾 その人しか分からないストレスの発散のしかたというのも面白かった。最初のシーンからかっこよかったですよね、写真をこうして分けている…

笹 原 外国の写真の整理をしているところ。

杉 尾 人質を救出するという事件が、描きやすい感じじゃないですかね。殺人犯を追うとかでなく、一つのところに固まって、現場が動かずにって感じで。横山さんがあさま山荘でなくてもよかったんじゃないかなって書いていたけど、あさま山荘だからよかったんかな、ていうふうに私は思ったんです。

加 賀 事件から30年くらいたつんですよね。

笹 原 幾つ位やった?

加 賀 中学生かな。

林 田 私の一番下のこどもが、お腹のなかにいたの。そのこは6月にうまれるけど、今年30になるんですよね、胎教のころに山の中から死体が出てきて、テレビを見てて胎教に悪いと思ったのを覚えてる。

笹 原 酒井さんは、その頃はいくつ位でした?

酒 井 中学か、小学六年か中学一年。

笹 原 私は受験で東京に行った時にテレビで見ていました。鬼束さんは、もっと下よね、

鬼 束 小学生くらい。

笹 原 今回、横山さんも書いていたんだけども、一般的に言われてたのは赤軍とか描いてないのがよくないって書いてあったんだけど、私はさっきも言っていたようにかえって絞ったから面白かったなって感じる。

酒 井 そういう意味では、映画的な描き方でなく、映画なら両方描くけど、あの映画はあくまで警察と主人公を中心に描いてある。だから主人公は中でなにが起こってるが何しようが、そんなインフォメーションは与えられてない、だから彼らの持っている情報だけで動いてるわけですからね。だから、ある意味では映画的ではないんですけど、それがかえって我々には新鮮に写った。


アザーズ

監督 アレハンドロ・アメナーバル 脚本:アレハンドロ・アメナーバル 撮影:ハビエル・アギーレサロベ 音楽:アレハンドロ・アメナーバル
グレース:ニコール・キッドマン ミセス・ミルズ:フィオヌラ・フラナガン チャールズ:クリストファー・エクルストンリディア:エレーン・キャシディ

注意:以下の合評のなかでは、この映画のオチのネタ明かしを記載してあります、これからこの映画をご覧になる方は、お読みにならないことをお勧めします。

笹 原 私は最後までわからなくて、使用人の人たちが来たり旦那さんがきたりして、そのへんで騙されてしまって。途中で使用人の人が言うじゃないですか、死者と正者は共存できるんだよと、それが言葉どうりとらえられてしまって、あれがヒントだったやろう、本当はね。死者っていうのが、ニコール・キッドマンたちで、生者っていうのは、時々でてくる幽霊だった。そのへんが読めなかったな、騙されたなと思いました。背中がゾゾっとしたもん、分かったときには。まともなストレートな映画でした。久しぶりに変なこけおどしじゃない、そう思いました。

鬼 束 ニコール・キッドマンは幽霊で自分の子ども二人を殺したという、なんかえげつないというか悪趣味なオチだった。ねらいは生と死の違いというか境界は思っているほどないことを意識させたかったのかなと思ったんですよ。見終わった後、歩いていてもですね、あれって思いますね周りの人が生きているのか死んでいるのか。ねらいは面白いと思ったんですけど、もうちょっとましな話にしてほしいなという気がしました。映像はすごく綺麗だったんですね、ああゆうのがゴシックといわれる由縁なのかなとおもいましたね。話が面白くないんで寝てしまいました。

酒 井 あの映画のいい所は、雰囲気をうまく凝っている所ですね。霧がずっと晴れなくて、お城みたいなところで暗いところにいて、家もなかの家具も百年くらい経ってるようなものでという、そこらへんの設定ですよね、ようするに昼間でもカーテンを閉めてローソクとかそういうような物でないと生活していかないという。僕は演技よりそこらへんのセッティングとか雰囲気をつくるのが一番うまくって、それがあの映画の成功したところだと思います。話はそんなに面白いとか神秘性があるようなものではないのだけども、一つ一つの映像で怖さを盛り上げていくところ、これもですね急にわっと出てくるもので、最近のハリウッド映画は、だいたいそうですよね。ワッと驚かしたりして、パッと物をだしてきゃっと怖がらせて、そういうふうな安易なものじゃなくって、我々の心理的に心の底から怖がらせるようなところを、ずっと仕込んでくるところがやっぱりあの映画の一番の優れたとこだと思います。ただストーリー的にはあれで、ああいうふうな結末になっちゃうとなんかいろいろ矛盾してくる点はないのかな、という気もしないでもないんですけど、深く考えるとあれなので、死者の話なんで、それくらいにしときます。

林 田 私は、怖さがこれでもかっていうように、ハリウッドの音をガンと、次から次ぎえ出してきて怖がらせるという作り方じゃなくて、本当に怖いという、心理的に何にも怖いものは見ないのに怖がるというところが、作り方がうまいなと思いました。最後まで、あの人達が死者であるというのは、最後のまだ本人は気づかない、母親が一番まだ駄目なんだよて言ったところで、「ああ、そうか」って、やっとそこで分かったんですけど、すごく作り方がうまいなと思いました。子どもを殺したというのは、やはり私も子どもを育てている時のことを思うと、子どもは生きてるときから光が怖かったわけですかね?

酒 井 そう、そう。

林 田 ですよね、だから結局あの人は憎くてじゃなくってノイローゼみたいになって、子どもをまもりたい一心で精神的に殺してしまった、自殺したんだろうと思うんですけど、そこのところは何かすごくわかるような気がしました。それとすごい古いお城の中っていうのと、映画館を出た時に私は本当に生きてるのか、もしかして私は本当は死んでるのに知らないのかなと、友達と話しながらお昼ご飯パクパク食べましたけど。ひょっとしたら、知らないでウロウロしてる人がいっぱいいるのかな、なんてそんなふうに思った。作り物の映画なのに完全にのめりこんでしまいました。何て言っていいのかわかんないんですけこ、すごいおもしろい映画でした。騙されたから面白かったんだよね。

杉 尾 すごく貴重なお休みの時間を、楽しみに楽しみに観に行ったんですけど、全然面白くなかった。がっかりして帰りました。だって怖くないんだもん。

酒 井 なんで怖くないんですか。

杉 尾 私はホラーで怖いのって最近みたことないもんだから期待して行ったんだけど、「シックス・センス」のときもそうだったんだけど、観る前にさいごのオチがあるよとかどんでん返しじゃないけどそういうのがあるよ、でも言わないねというようなものを聞いちゃうと何だろうって、思って最初にみれば、ものすごく自分の中で推理しちゃって一番驚くのっていったら、この人たちが死んでたら面白いよね、っていうような感じで観てるもんだから、あっ、やっぱりこれ死んでるよねってゆうふに随所で気づいちゃうんですよね、するとたいして面白くないしやたら怖がらせるんじゃなくて、びっくりさせるシーンが多くって、音が大きくてびっくりしたりとか、ピアノ弾いてて、開けたら誰もいないよねきっと、とか思うとそのとうりになったりして。ひとつだけびっくりしたのは、ドアがこうやってしてたらバーンとなって、ニコール・キッドマンが後ろに飛ばされるところはびっくりしたけど、それくらいですかね。おかあさんが子育ての中ですごくストレスを感じながらいろんなことで、おかしくなちゃって殺してしまったんだろうけど、そこらへんの苦悩っていうのは、全然死後の世界ではないんですね。すごく神経質にやってたというのは、最初のシーンではあったけど、それがずっと持続してない感じがしました、緊張感というか子ども達が光アレルギーということに対して、だからある日から突然そういうのが楽になったっていうのでもないですよね、あの話でいいくと殺しちゃった後にパッと見たら子ども達がまくら投げをしてて、すごくニコニコ笑ってたから嬉しくなってというような最後の母親の言葉があったけど、それにしては最初の法は矛盾してたなっていう。

酒 井 3人とも死んだことに気づいてないから。

杉 尾 もちろん、それはわかりますよ。なんか私が期待してたのが心理的に怖かったって、おっしゃるけど、心理的に怖くないんですよね、クローネンバーグがつくるような「ザ・フライ」とか「戦慄の絆」とか、ああいう脅かしたりとかじゃなくって心理的にも、それこそ「ザ・フライ」だったら悪役してた人がね、結局は犬の姿になって閉じ込められたところで一生すごすんだなぁっていう、あの恐ろしさとか、自分から心理的に怖くなるような、そういうのはないから、シンプルではあるけどもちぃっとも私なんかは迫ってこない。何の身にもならないというか、

林 田 怖くなかったら面白くないわ、わかってしまってたら。

杉 尾 だろうな、だろうなって感じで観たんですよ。ああゆう感じで本人達が気づくっていう、ああいう表し方はすごいなと思ったけど。でもやっぱり、結局そうだったんだなという感じでしょうか。

加 賀 最後までわかりませんでした。ゴシックホラーと銘打ってあるんですが、導入部とかゴシックホラーという言葉がぴったりかなと思った。さっき酒井さんも言われたけど、あの雰囲気つくりはうまいなと思いました、使用人のおばさんに室内を説明していくとこなんか、一つのドアをあけたら、一つはかならず閉めてくださいとか、カーテンはかならず閉めることとか、いったいなにが起こるのかと、だんだん怖くなっていく、あのあたりはうまいですよね。三人の使用人はみるからにいい人で、このひとたちはけっして悪い人じゃないと確信できた、 逆に言えば弱かったかな。

林 田 ちょっと怖いとこもあった。

酒 井 そんなに矛盾はしてないですよね、昔勤めていた使用人が全部消えたのは本人たちが死んだから出て行ったんですよね、そう考えるとそんなに不思議なことじゃないんですよね、本人だけがきづいてなくて、

杉 尾 死んだから出て行った?

加 賀 使用人がいなくなったから募集しようと思ってたとか行ってた。

酒 井 新聞に載せないうちにやってきた。だからお迎えにきたんです、あなた別の世界にきたんだよって、

加 賀 結構いい映画でした、好きです。

杉 尾 光アレルギーというのも情報で知ってた、それを知らなければ、なんでカーテン閉めなきゃならないんだろうって部分も楽しめたかもしれないけど、それもわかってたし、そういう病気があるっていうのも実際に知ってるもんだから、最初情報を入れてると損をするね。

野 口 結構怖かったです、ニコール・キッドマンが。すごい綺麗な人があんな神経質そうにびくびくってするのを見るのが、まず怖いですね。話の筋じたいは途中で気づいたんで、ああこういうふうにもって行くかっていうふうに思いながら見ました、三人の家政婦おばけさんたちが、もうちょっとさりげなく動いてくれたら…

林 田 もう終わったの?

野 口 面白かったということかな。さりげなくやってくれたら、私ごのみだったんですが。

林 田 私みたいなのは、あれだけわからせようと向こうがしてても、わかんなかった。最後まで、いや最後のちょっと手前ではわかった。

野 口 なんかやりたいやりたいっていってたじゃないですか、あのおばちゃんが、あんなことを言ってるということは、これはねぇ…  前の作品を観てるてからていうのがあると思うんですよ、自分がいる世界を信じ込まない、丸呑みして信じてしまうと嘘かもしれないよ、というのが前の作品のテーマだったから。

林 田 前の作品とは?

野 口 「オープン・ユア・アイズ」。「あさま山荘」について一個だけ言っていいですか。あれはですね、面白かったけど、そこそこの面白いで、その次に観た「KT」に圧倒されてほとんど忘れちゃったんですが、内部抗争ぐだぐだだけっていう感じだけが残っちゃって。一つだけ私がいいたいのは、自分で自分をあんなにかっこよく書くことがよくできたなって、作者のつっこみたいかなと。

笹 原 佐々さん

野 口 以上です。

林 田 あっ、あの人が書いたの。そこも知らないで。

野 口 役所広司がかっこよすぎる、本人なんですよ。よくやるよなぁって。

杉 尾 思ったけど、映画として…脚本は違うんでしょう、役所さんになった時点で、かっこいいよね。

林 田 本物はどうなの?

杉 尾 もうちょっとがっしりした感じ。


今月の一本

笹 原  『K・T』

鬼 束  『ざわざわ下北沢』  JAZZ LIVE関戸敬子 PIANO TRIO+川下直広  「SUPER LIVE 吉田拓郎 アンソロジー」 BS2

酒 井 『小林サッカー』 『シャドー・オブ・バンパイア』

林 田  Wカップ 日本・ベルギー戦

野 口  村上春樹の「スプートニクの恋人」

杉 尾 『行列のできる裁判所』北村・丸山弁護士のバトル

加 賀  司馬遼太郎の「坂の上の雲」

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