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2002年8月号

参加者:酒井、笹原、横山、杉尾、野口、林田   書記:鬼束

模倣犯

出演:中居正広 山崎努 津田寛治 木村佳乃 藤井隆 寺脇康文 伊藤美咲 小池栄子 モロ師岡 平泉成 田口淳之介 太田光 田中裕二 山田花子 監督・脚本:森田芳光 撮影:北信康 美術:櫻井佳代 録音:橋本文雄 原作:宮部みゆき オープニングテーマ:?タカハシタク 音楽:大島ミチル

笹 原 期待しなかった分、面白かったです。中居くんのやったピース(網川浩一)が印象に残って、演技も上手いなと思って。この映画も中居くんで活きたんじゃないかなという感じがしました。脇役も頑張ってましたよね。ちょっと分からないところもあったけど、面白い題材なんで、是非原作を読みたいと思います。

野 口 中居の演じたキャラクターがかなり特異であるというのと、それなりにうまく演じたというのがすごく良かったんじゃないかと思います。ただ。全体的に掘り下げ方が浅い感じがして、ピースがああいう犯罪に走った背景が本当流れるようであったとか、山崎努さんのほうがもうちょっといろいろあったんじゃねえべかとか、多分そういうところの不満が原作読みたいなあという気にさせる、そういう映画だなと思いました。個人的に音楽好きです。

横 山 原作は結局読まずに見たのですが、最初のほうが非常に雑だと思いました。中居くんはですね、それなりに良かったんじゃないかという気はします。ただ、やぱりラストのほうになると気に入らないなと。ヒューマニズムのあるようなラストが。とってつけたような感じで、僕はあまり好きじゃなかったです。山崎努は非常にいいんですけども、森田の映画の軽さとちょっと合わないかな。基本的に軽いんですよね、映画がね。原作は深刻な感じがするんですけど。割と軽くまとめてあった。俳優は、ま、皆そこそこ良かったんじゃないでしょうか。

鬼 束 良かったです。出だしからですね、「モホーハン!」っていう音楽から乗れてですね。こういう出だしから乗れるのが今からの映画だと思いました。だから、普通の映像の部分になる時に流れが止まって退屈するんじゃないかと心配したんですが、そんなことはなくて。楽しく見れました。中居正広は良かったです。気持ち悪さが出てたから。ただ、欲を言えば、凡人を見下している天才肌とまではいかないまでも頭の切れる男という役だから、もっと無名かああいう人気商売をしていない俳優がやったらまた迫力が出たかもしれないなあという気はしました。その辺は、映画の興行的な面もあるからそこまではできないのかもしれないのですけど。ラストは、横山さんはよくないと言われるけど、僕は良かったと思うんですよねえ。最後でピースがこういう犯罪を犯すようになった理由として、両親の離婚とか愛人の子供で居場所がなかったことが明かされるんですけど、最近多いじゃないですか、離婚は勿論、未婚の母でいいとか。そういうことを考えると、犯罪の要因というか因子は増えていってるんですよねえ。そして、人間は血で決まるんじゃなくて育てられた環境で決まることを証明してほしいというのは好きでした。偏見とか差別のもとは血縁が大きいということを連想して、血じゃないということを証明してほしいというあのメッセージは良かったと思うんですけど。で、こういう原作ものを映画化したときに昔から言われることで、原作の細かいところが映画では描ききれてないから映画はよくないという批評はもう止めてほしいということを最後に言っておきたい。大体、本の中身を2時間の映画の中に入れるなんて土台無理なんですよ。それを原作と映画を単純にストーリー描写だけで比較して中身が足りないとか言うのは不毛の議論だと思うのです。と言っても、これからまた繰り返されるのでしょうけど。映画と原作を比べるとしたら、映画は原作を借りて何をどういうふうに描いたのか、原作には映画にはないどんな部分や内容があるのか、そういうことじゃないかと思うのですが。

笹 原 大島ミチルの音楽が久々に良かったなというのを追加しておきます。森田芳光の最近の演出上の癖として、カメラを揺らすのが私嫌いなんで、今回もそれで最初イヤだなあと思ったんだけど、だんだんそれが目立たなくなってきたから良かったかなという感じはしました。ラストの子供は誰の子供だったんでしょうか?山崎努さんの孫娘さんのと書いてあるのもあるけど、私はもう一人の(藤井隆の?)妹さんのほうかなと思ったんですけど。

鬼 束 誰の子供でもいいんですよね。

野 口 マスコミとかニュースの映像が結構工夫してというか、テレビ画面ですっていうふうに出てくるじゃないですか。あれってやっぱり犯罪自体が報道をうまく使って世間に見てもらう、そういう犯罪をしているわけで、そういう演出みたいなのって原作にあったのかなあ、それを意識したのかなあっていうのが気になったんですけど、どうなんでしょうか?

一 同 詳細不明

書 記 原作もそんなようなところもあるみたいです。

鬼 束 山田花子がね、CMの最後で泣き顔をするのが印象的でした。テレビでは見せない、本当に泣いてる時のような表情だったから、あれはいいなあと思った。山崎努さんは、映画を見る前は、原作のおじいさんとイメージが違うなあと思ったけど、『GO』でボクシングはしてるし(笑)、でも、頭も短く刈り上げてとてもよく作られてるなあと思いました。津田寛治さんの相棒のほうがリアルやったもんね、中居正広も良かったんですけど。

ここで、林田さんが来られました。

林 田 原作を先に読んだんですけど、あれをどういうふうに脚本っていうのはするのかなとそういう気持ちで見に行ったんです。だから、原作に比べて出来が悪いっていうのは承知の上で行きましたから、悪かったんですけど(笑)、原作と比べたら全然何も伝わらなかったんですけど、それはまあ原作読んでなければどうかなあという気持ちと脚本ていうのはこんなふうにするのかという、脚本っていうのは面白いんだなという感じで見ました。中居は全然ダメかなあっと。

一 同 (笑)

林 田 私の想像では、あんな薄っぺらな人間じゃない。あの人がどういう人かは知りませんし、演技もヘタかなあとは思ったんですけど。もっと凄い、もう年取ってダメでしょうけど、佐藤孝市とかあんな感じの人が若い頃だったらこの役はできてたかなあという気持ちで見ました。比較しながら見たんですけど、映画そのものの面白さというのはよく分かりません。

書 記 原作ものは、原作を読んでいると作品が自分の中で完成してできあがっているものだから、映画を見る時にどうしてもそれに引っぱられるか、上滑りみたいに見えてしまいますよね。できれば、映画は別物という意識をはっきり持って、真っ白な状態で見れるといいんですけどね。それと、中居くんについては、合評会ではあんなふうに言いましたが、このレポートをまとめるうちに、正解ではなかったかそれもかなりの大正解だったかもしれないと思いました。あの役は、中居くんでなければ気味悪さが際立ってしまって、映画全体が気持ち悪いばかりの映画になってしまったかもしれないし、合評会後に原作をもう少し読み進んだところ、ピースは人当たりのいい人間ということでした。そういう意味では中居君はもってこいでありピッタリなのでありました。


KT

出演:佐藤浩市 キム・ガプス チェ・イルファ ヤン・ウニョン 原田芳雄 香川照之 筒井道隆 江波杏子 柄本明 光石研 麿赤児 利重剛 中本奈奈 平田満 監督:阪本順治 脚本:荒井晴彦 撮影:笠松則通 音楽監督:布袋寅泰 原作:中薗英助 ゼネラルプロデューサー:李鳳宇 プロデューサ:椎井友紀子

酒 井 期待が大きかっただけに、そんなにでもなかったんじゃないかなと思うんですけど。でも、良かった部分もいくつかあって、70年代の雰囲気が非常によく出てたんじゃないかなと思います。キム・テジュンを誘拐するときの陰謀ってのは、日本側ももっと大きな陰謀みたいなものがあったのかなと思ったけど、何かその辺がなくて、KCIAだけで止まっているので、小さな陰謀で僕はがっくりきたんですけども。最初の三島由紀夫の割腹自殺と佐藤浩市があっちのほうに加担する部分が、繋がりがあんまりよく分かんなかったんですけども。

野 口 何が私は一番良かったかというと、佐藤浩市のあの矛盾した感じのキャラクターがずっと共感が持てたんですね。ふらふらどうしょうこうしようって迷ってる感じが良かったなあと。あと、KCIAのキム・ガプスさんが良かったです。陰謀の進み方とかもですね、結構私はドキドキしながら見ました。いつ捕まるんだこの人はとか。袋にされた後も、どうなるんだこの人はとか思いながら、そこはそれでサスペンスとして見たんですけど。三島由紀夫の事件とかそこら辺は、私全然勉強してないので分かりませんとしか言えないですね。あの時代に、いろいろ矛盾したものが沢山あったんだなというくらいしかないかな、申し訳ないですが。それでも、映画として面白かったです。

笹 原 面白かったというのはあるんだけども、結局、結末知ってるもんだからドキドキするというのはなかったんです。どういうふうに描いてるのかなという興味が強かったものですから。ラストのほうも分からない部分がいろいろあって、ちょっと頭の中が整理できなかったです。もう一回見たら、という感じはしました。佐藤浩市は確かにはっきりしないところが魅力的なキャラクターで、KCIAのキム・ガプス、この人の演技も素晴らしかったです。そのへんでまあ見れたかなって感じはしました。あとは、布袋さんの音楽がやっぱりダントツ、これだけでも私は見た価値があったなって感じはしました。

横 山 作品の雰囲気も役者も非常にみんないいと思うんですけども、話としてあまり面白くないという気がしますね。もう一ひねりか二ひねりくらいあるとよかったかなという気はするんですけども。単調で、眠くなってきましてですね、僕はあんまりないんだけどそういうことは。(笑)特に前半かなあ。やっぱり佐藤浩市のキャラクターはですね、パンフレットによれば脚本ではお父さんがロシア兵に殺されてお母さんを何かやはり殺されたという設定なんだけど、そういう部分が映画には全くないし、なんで協力していくんだろうということがよく分からなかったですね。KCIAのキム・ガプスは非常に良かったんですけど。韓国側のキャラクターははっきりしているのに、日本側は軟弱な(笑)人が多くてですね。ふらふらしてるのがいっぱいいて、在日韓国人の道隆くんも何しにでてきたんだろう(笑)と、見せ場がないですよね。

林 田 さっぱり分かりませんでした。分かろうと思って行ったんです。金大中事件というのが、私たちには知らされないままでしたよね、あの事件そのものが。何故連れて行かれたのか、日本の警察は何してたのか? 日本がぐるだったのか? なんにも分からないまま終わった事件だったんです。ま、私が分からなかっただけかもしれませんけど。世の中、大抵何かうやむやに終わってしまって、いつのまにか死刑の判決を受けたと思ったら、今度は大統領にもなりましたよね。ですから、あの人の一生はすごいなあとは思うんですけど。何か種明かしを期待して見に行って、映画見て、また何のことか分からないままでした。(笑)日本がどう関わってたのかというのが、この映画で分かります?

酒 井  分からないです。

林 田 分からないですよね。

鬼 束 自衛官(隊)が関わってたってことでしょ。(笑)

ここで、あの当時の事情についての話あり。

林 田 金大中は、日本とアメリカの力を借りてどうかしようと思ったんですね。題名も「KT」なんてよく分からない題名でした。(笑)すみません。

鬼 束 僕も最初見た時、真ん中あたりをかなり寝たので、もう一回見ました。そしたら凄く良かったんですけど。まず、役者たちがですね、佐藤浩市とかでも顔がきれいじゃないんですよね。皆すっぴんみたいで、それに加えてわざと不摂生して顔に脂を浮かせたような顔を作ってるんですよ、あれ、すごいなあと思ってリアルな顔になってて、『顔』があったなあとか思いながら。(笑)筒井君のお母さんの江波さんとか誰か全然わからなかったですもんね。化粧はしてないし、女優としてはというか女性としても勇気がいるよなあと、あれは凄いなあと思いました。刺激的な台詞がいっぱいあって、挙げてみると、「勝たなくてもいい戦争もある」とか「狼は死ね。豚は生きろ」とか。普通はというか今までよく一般的に言われてきたのは逆ですよね。それに「何のためにも死なないし、生きないし」という原田さんの台詞。よく考えてみたらみんな原田さんの台詞じゃないですか。同じく原田さんで凄かったのが、「人か神か象徴かしらねえが、どれもいらねえ」というのもあったんですよねえ。(笑)これは天皇のことだと思うんですけど。(笑)分からないようにして、こういうことを言わせる。まあ、荒井さんが書くのはわかるんですよ、脚本としては書いても、それを使う監督の器量というか、こういう一般映画でこういうことを言わせる、それも原田芳雄さんに。原田さんもよく引き受けられたなあと思うし。この辺の感覚が凄いなあと思いました。天皇制にしても、他の、本(「爆笑問題の日本史原論 偉人編」ヤマトタケルの巻)や演劇(平田オリザプロデュース・青年団実験工房1『地点2〜断章・鈴江俊郎〜』)を見ても、もうそろそろちょっとした世間話くらいのレベルで、一般的に話してみるようにならないといけないんじゃないかと思うようになってきました。タブー視したり、敬遠したり、恐れたりしないで。で、ラストで佐藤浩市を殺しに来たのは、香川さんだったんだろうなあと思いました。あと、誘拐するときのホテルの廊下の揺らぐカメラがとても印象的で、謎めいた感じが出ていて。布袋さんの音楽は特にとは思わなかったけど、一箇所だけ、いいなあ!と思ったのが、誘拐現場から逃げる時に走る車から見た林の木陰の向こうに太陽の光が入ってくるんですけど、あれが黒澤明の『羅生門』か『隠し砦の三悪人』かを思い出させたんですね。で、その時カメラがちょっとこう太陽のほうに寄った時に、横に流れる木の影と光と音楽がぴったり合ったんですよ。あそこだけは特に、ああいいなあと思ったんですけど。これは深読みし過ぎかもしれないんですけど、(笑)原田さんが佐藤さんと別れる時だったか、画面の右に出て行こうとして「あ、違った」と言って左側から出て行くんですよね、あの辺も面白いなあって思いました。筒井君は、泣くとこがねえ、泣けるんやろうと思うけど、いまいち説得力がなかったですねあのシーンは。悔しい思いをする人はいるんだろうなあとは思ったですけどね。あの誘拐が起こるホテルの1階で、彼がガードマンをはずされて食べていた食パンの焼き具合とバターがおいしそうで食べたくなって、帰って夕食に食パン焼いて食べました。バターじゃなくてマーガリンだったけど。

笹 原 原田芳雄のキャラクターもよく分からんかったけども。ちょっともっと分かりやすくね、僕らも答えを見たかったよね、本当はこうでしたよっていうような。それが分からんから、こっちも消化不良になってしまうんよね。

鬼 束 佐藤浩市の動機ですけど、あれは僕は出さなくて正解だったと思うんですけど。あれを入れると理由が固まってしまいますよね。こういう個人的な理由があったからやった、だけで終わっちゃうので。何か今の日本だったら、思想信条的な理由だけでああいうことする奴が出てきてもおかしくないというふうにやったほうが、考え方として広がりがあると思うんですけど。


マルホランド・ドライブ

MULHOLLAND DRIVE

出演:ナオミ・ワッツ ローラ・エレナ・ハリング ジャスティン・セロウ ロバート・フォスター アンミラー 監督・脚本:デイヴィッド・リンチ

酒 井 これ、カンヌ獲ったんですよね、確か。非常に期待が大きくて。イメージとして『サンセット大通り』のD・リンチ版という雰囲気があったんですけども。D・リンチというところでは期待をはずさずに、で、訳が分かんなくなって、最後はレズビアンの映画ということで納得してという。(笑)結局、そういうふうに締めくくるしかまとめられないくらい訳が分かんなくなってくる。途中からストーリーが逸脱して、何がどうなっているか分かんないし、自分でストーリーを構築しようというか、いろんな場面がどんどんどんどん出てきて、自分でストーリーを作らなければまとめようがないというふうな感じで、D・リンチらしいと言えばらしいし。きちんとストーリーを追っていこうと思えば混乱するだけで、という作品で。でも、こういう刺激的な作品もあっていいんじゃないかなあということで。まあ、この映画の独特な雰囲気を堪能して帰ってきたということですね。そうとしか言いようがない。

野 口 確かに話としてどうだったかと聞かれれば、レズビアンのラブストーリーでしたというのは、2回見て他にしょうがないやって納得しました。ただ、D・リンチがあれで何がしたかったかと考えた時に、ああいう訳の分からないことがしたかったんだろうなあという、これもこういうふうに納得するしかないわけで。(笑)ま、そういうのをひっくるめて、面白く見ましたよと。ボタンの掛け違いみたいなことがいろんなところで起こっていて、名前がちょっとずつずれてるだとか、コーヒーカップがあるべきところのものが別のところにあるとか、そういう細部で掛け違いがいっぱい起こっていて、でも、ストーリーのほうも訳分からなくてという、ほんとに、本当にストーリーを追っていこうと思うととてもどっかで何とかしなくちゃいけない映画ですね。そういう訳の分からなさがとても良かったです。

笹 原 先に言っときますけど、ものすごく魅力的な映画で、大好きな映画です。D・リンチだから、後半訳分からないというのは、今までもよくあったんだけども、今回特にもっと分からないですよね。

一 同 (笑)

笹 原 まあ、さっき言われたように、別に分かるように撮ろうとしてないからね。それを分かろうとするのが間違ってるんだけれども。分かるとこまで、半分くらいはね、どんな映画だろう、このあとどうなるんだろうっていうような、ワクワクするような映画だったんですけども、そのあとがちょっと。(笑)

酒 井 はずすのが、あれでしょ?

笹 原 はずすのがね。まだね、『ロスト・ハイウェイ』とか『ブルーベルベット』のほうがね、まだ分からんといっても分かりやすかった。主人公の女の子が、皆の前で演技をするところの上手さ、その前にもう一人の彼女といっしょに練習しますよね、ところが実際にやるのは全然違う雰囲気の演技をして、それをあれワンショットで撮ってるよね、凄くうまいんだよね。普通の女の子かなと思ったら、ものすごく達者な子でね、あのラブシーンはすばらしかったなと。あの辺はもうD・リンチ凄いなあって、恐ろしさ感じたね、あの演出力っていうかねえ。もう一回見たかったんですけど、チャンスを逃がして見てません。

鬼 束 僕も皆さんと同じで、結局何を言いたかったのかは謎でした。結論は、レズビアンもあり、OKだよっていう映画?って感じで。ストーリーとしては、レズの片方の死んだ女性の、レズビアンとはいえ失恋の嫉妬からくる幻想か、それをまた薬物で強調されたのかというのが僕の結論でした。答えにはなってないと思うけど、公開前から出てたリーフレット?を読んだら、『サンセット大通り』のウィリアム・ホールデンと同じ、死体の見た夢とも書いてあったので、はずれてもいないのかなとも思うんですけど。はっきりとはよく分からない。でも、女性どうしが抱き合うところでは、愛し合う心っていうのは伝わってきたんですよね。で、今回、パンフレットが売り切れてて手に入らなかったんですけど、今回ほどリーフレットとかの文章をむさぼるように読んだ映画は最近なかったですね。近頃はパンフレットの文章も興味のあるの以外はほとんど読まなくなっているのに、この映画は、そういうのをキリキリ読みたくさせる、興味を起こさせる、そういう魅力を持った映画なのだと思います。笹原さんが言われたN・ワッツが演技するシーンは、前の晩はこんなくだらない脚本とか言ってたのが、現場に行って演技し始めたらものすごくリアルで、凄くてびっくりしました。ハリウッドの役者ってやっぱ恐ろしいと思いましたね。(笑)

笹 原 映画史に残る名場面やわね。

鬼 束 考えてみたら、最初のところで、N・ワッツが空港で別れた老夫婦も、二人になった時変だったんですよね。

笹 原 何か意味ありげなね。

鬼 束 イヤな奴らじゃないか、こいつら、ちょっと、とか思ったら、幻覚やったんじゃないかというような終わり方で。この映画ですね、結局、あまり意味を問うような映画じゃないと思うんですよね。ただ、楽しむ。リンチも書いてましたけど、楽しんでもらったらいいと。楽しいですもんね。映像いいし、役者もいいし、見てて楽しいんですよね、最初のところでちょっと眠りこけちゃったけど…。最後は訳分からなくなっちゃうんだけど、僕、最近、こういうストーリーがあってきちんと終わる映画じゃなくてもいいなあと思ってたんですよ。多少訳分からなくても、映像が良くて、ま、いい音楽入って、役者が良くて(て、好みの要素が強烈なんですけど)ってあれば、それで楽しいと。そういう映画を見たいなあとなってきてたところにこれだったので、ちょうど良くて。ま、これを見たから逆にそういう思いが強調されたというのも大きいかもしれないんですけど。これ、ほんと何回も見たいです。誰かも書いてたけど、他の映画をあまり見たくなくなったんですよね、ちょっとね。そのくらい好きになれそうな映画で、まだ『ブルーベルベット』の頃は良さがよく分からなかったので、また、あっちも見てみたいと思わせるような映画でした。それと、最近台詞の多い映画って嫌なんですけど、上手い脚本なら別だけど、特に説明の台詞の連続とか最悪だし、そういう意味でもこの映画は、映像が主体でね、台詞は適度に適切にあってね、いいですよねー。

野 口 一個一個のネタが長くて面白いんですよねえ。手が込んでるし。

笹 原  そうそうそう。

鬼 束 迷わんといけないですよね、謎の中にね。

笹 原 泳がんといかん。結局、サンセット大通りの裏側の通りとかで、ハリウッドの裏側を描いてって部分はあるんでしょうけどね。

野 口 それを題材にして、訳の分からないことにして…。

鬼 束 世界としては『ツイン・ピークス』に似てますよね。

笹 原 『ツイン・ピークス』に出てきたおじさんも出てきたしね。


今月の一本

  

笹 原 『友へ チング』

酒 井 『ノーマンズランド』…素晴らしい反戦映画。『ハッシュ!』…愛着のある応援したくなる映画。

林 田 『ゴーストワールド』…大好きでした。ビデオで見ました。

横 山 『マジェスティック』…あと30分短くするともっとよくなったと思うんですけども、今のままでも僕ははまりました。最後のほうは泣いてしまいました。

鬼 束 映画 『メリーに首ったけ』 『20世紀ノスタルジア』 CD 木村弓『銀のしずく』 コンサート 西村由紀江 ハートフル コンサート  演劇 『不一致』(イデビアン・クルー)県立芸術劇場

来月の合評予定作品 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』他 の予定です。

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