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2003年3月号

出席者:加賀 横山 笹原 臼井 林田 杉尾 野口(書記)酒井

今回は、お正月映画第2弾から3本「壬生義士伝」、「運命の女」そして「AIKI」です。最初は参加者も少なく寂しかったのですが、遅れて杉尾さん、林田さん、そしてなんと2年半ぶりの臼井さんが参加しました。臼井さんは2年半のブランクを物ともせず、以前と変わらず雄弁で、一同感動(?)しました。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

壬生義士伝

【データ】2003年 2時間17分 配給:松竹
監督:滝田洋二郎 製作代表:大谷信義 菅谷定彦 鞍田暹 俣木盾夫 石川富康 菊池昭雄 プロデューサー:宮島秀司 榎望 原作:浅田次郎 脚本:中島丈博 音楽:久石譲 撮影:浜田毅 美術:部谷京子 殺陣:諸鍛冶裕太
出演:中井貴一 三宅裕司 夏川結衣 塩見三省 堺雅人 野村祐人 斎藤歩 堀部圭亮 塚本耕司 比留間由哲 加瀬亮 山田辰夫 伊藤淳史 藤間宇宙 伊藤英明 村田雄浩 中谷美紀 佐藤浩市

参加者の内、笹原、横山、野口、酒井、加賀の5人が見ていました。

笹 原 全体的には好きです。特に中谷美紀が良かった。彼女が出るシーンは場面が違っていて印象に残りました。しかし、ラストの独白が長いのと、セリフがよく聞き取れない。もう少し短くするとスッキリするのかもしれません。新撰組を演じている役者も意外性があって面白かったと思います。でも、映画の後半は端折りすぎで、終わり方も問題があると思います。

横 山 役者はそれぞれ良かったと思います。話としては何て事無くて、泣かせるだけではないかと思いました。ポイントを絞れば良かったのに、家族の話とか新撰組の話から盛り込み過ぎです。役者はそれぞれ良くて、特に僕も笹原さんと同じで中谷美紀が良かったと思います。

野 口 司馬遼太郎の新撰組が好きで、佐藤浩一が斉藤一というのは格好良くていいなと思いました。でも、いま思い返すと、何か嫌な気になります。中井貴一が「家族のため」の話がいつのまにか「義」のためになってしまった。そこら辺がどうもしっくりいかなかったです。それから、鉄砲隊に突っ込んで行って生きているのも何か不思議な感じがします。原作がそうだからしょうがないのかも。

酒 井 原作は、長いのだけれども読みました。原作には色々な要素が描かれていて、映画ではそれが十分に生かし切れなかったと思います。この話、実は、新撰組の話は原作の3分の1ぐらいで、後は、この家族のその後とか、藩の上役(三宅裕司)との友情、そしてその息子たちの友情等が述べられているのですが、その部分の省略の仕方が、中途半端で、映画を見た人にはわかりにくかったのではないかと思います。映画としては、みなさんが言われるように、切り込んで行くシーンで終わった方が良かったと思います。

笹 原 浅田次郎の本は次々と映画化されるけど本当に良いのかしら。

酒 井 浅田次郎は泣かせますから。

野 口 でも、無理に泣かせようとするところもあって嫌になるところもあります。

酒 井 最近、泣かせる人は少ないですから。そこら辺が受けているのかも。

あと、原作の話とか、言葉(南部弁)の話とかの話題がつきませんでしたが、そこで、加賀さんの登場となりました。

加 賀 けっこう面白かったです。今までと切り口が違い、いままであまり知らなかった隊士の話で、新鮮で良かったと思います。ちょっと長かったですね。最後の30分は必要なかったと思います。最初の明治30年頃から話が入って行くところはなかなか雰囲気が良かったです。主人公は良かったです。脇もみんな良かったけど、三宅裕司に違和感がありました。

加賀さんから、昨年度の「たそがれ清兵衛」より良かったとの意見があり盛り上がりました。


運命の女

【データ】2002年 アメリカ 2時間4分 配給:20世紀フォックス
監督:エイドリアン・ライン 製作:エイドリアン・ライン G・マック・ブラウン エグゼクティブ・プロデューサー:ピエール・リチャード・ミラー ローレンス・スティーブン・メイヤーズ アーノン・ミルチャン 脚本:アルヴィン・サージェント ウィリアム・ブロイルズ・Jr 撮影:ピーター・ビジウ プロダクション・デザイン:ブライアン・モリス 衣装:エレン・ミロジニック 音楽:ジャン・A・P・カズマレック
出演:リチャード・ギア ダイアン・レイン オリヴィエ・マルティネス エリック・ペア・サリヴァン チャド・ロウ ドミニク・チアニーズ ケイト・バートン マーガレット・コリン

参加者の内、笹原、横山、杉尾、林田、酒井および加賀(途中退席)が熱く語ってくれました。

笹 原 これは意外に面白くて良かったです。ダイアン・レインも良かったのですが、それよりリチャード・ギアがこれまでの役と違い巧かったなと思いました。最初のシーンの風に煽られて出会うシーンの演出に感心しました。エイドリアン・ラインの絵柄は巧く、割とまとまっていたなと思います。最後の「自首しなくてよいよ」と、言うところがこの映画の重要なポイントです。

横 山 ダイアン・レインとは昔から好きでした。2人の演技は良かったのですが、映画の話として、ダイアン・レインが何故あんな男(オリヴィエ・マルティネス)に惹かれたのかよく解らないです。そこが一番のポイントです。映画の描写は巧いのですが。ダイアン・レインが家庭を崩壊させる危険を冒してでも、あの男と浮気をするところが理解できません。僕にはリチャード・ギアの方がよっぽど魅力的に思うのですが。

酒 井 映画全体の雰囲気、しっとりとした感じが面白かったと思います。映画の前半と後半では焦点が違ってきます。前半の浮気を重ねる所は、エッチでいいのですが、後半は殺人事件を犯してからサスペンス映画に変わるの所で、いまいちサスペンスとしての盛り上がりが欠けていたと思います。

笹 原 3度目で一線を越えたのですが。

横 山 3度目に行く理由がないですよね。

加 賀 (最初の30分ぐらいでつまらないので退席した)本の勧めから「何ページの何処から」という勧めからで好きになったのかも。でも風は極端でしたね。

酒 井 そうそ、ダイアン・レイン行くところ台風アリという感じで。

そして、杉尾さんの登場となりました。

杉 尾 面白かったです。でも、落ち着いた家庭があるのになんで浮気をするのか理解出来ない。一回目は、良いとしても、2回目にふらふらと会いに行くのはよく解らない。本の中に電話番号が入っていましたよね。あんな計画的な事をする男はろくなやつでない。そんな男に引っかかるのはどうかと思います。

あと、女性の浮気論とか、運命の出会いとか、少し危ない話が続きました。最後に、林田さんの登場です。

林 田 主婦の立場で見ますよね。ダイアン・レインの気持ちはわかるのですよ。このような気持ちはあるのですよね。次の段階(年齢的に)に、入るときにこういう気持って出で来るのですよ。きっかけは下らなくてもいいのですよ。

あと、いろいろと女ごごろの話が出てきましたが、なかなか複雑なようで----


AIKI

【データ】2002年 1時間59分 配給:日活
監督:天願大介 製作総指揮:中村雅哉 企画:猿川直人 製作:伊藤梅男 石川富康 岡田真澄 高野力 長澤一史 長橋恵子 脚本:天願大介 撮影:李似須 音楽:めいなCo. 浦山秀彦 熊谷陽子 美術:稲垣尚夫
出演:加藤晴彦 ともさかりえ 原千晶 木内晶子 石橋凌 火野正平 桑名正博 清水冠助 佐野史郎 余貴美子 永瀬正敏 田口トモロウ 松岡俊介 ミッキー・カーチス

臼井さん以外全員見ていました。なかなか好評だったみたいです。

野 口 自分と重なる部分(交通事故)が多かったので、個人的に共感が持てました。色々あって、そして合気道と出会って生活がきちんとしてくる。このパターンは定番ですよね。

笹 原 加藤春彦は嫌いでしたがこの映画では良かったです。ストーリーは定番なのですけど、それまでの描き方が巧くて脇役もそれぞれ良かったと思います。合気道の先生がすごく良かったです。多くの人にこの作品を勧めたのですが、見た人の反応は良かったです。

横 山 たいへん面白かったです。主人公がなかなかまともな方へ行かないのが良かったです。じっくりと駄目な部分を描きますね。火野正平と桑名正博もはまり役でしたし、ともさかりえが本当に良くて演技をしているのではないかと思いました。

加 賀 文部科学省推薦という感じでしたが良かったです。性も問題まできちんと描いていて良くできた脚本であったと思います。悪役グループも2組も出して来た点もメリハリがついていました。

杉 尾 加藤春彦が好きで見に行きました。テーマは重いのだけれども楽しんで見ることが出来ました。ゲストが色々出ていたので誰がでているのかを見つけながら見ていました。ともさかりえは演技していたようでした。私も合気道をやってみたいと思いました。出来れば、加藤春彦に不良グループをやっつけてもらいたかった。

酒 井 久しぶりに、きちんとしたストレートな青春映画でした。主題もしっかりしています。ストーリーの展開は読めるのですが、それでも退屈しなかったのは演出が良いのと主人公への共感を持つことが出来たからであると思います。後味が非常に良かったですね。

笹 原 2回目のやられるところが良かったですね。そんなに簡単に上達しない。

杉 尾 石橋凌が良かった。

酒 井 僕もサラリーマンだけど何処が違うんだ!

あと、合気道がかっこいいとか。キネマ旬報の5位は理解できるとか話はつきませんでした。そして、林田さんの登場です。

林 田 大好きな映画でした。障害者の事は重要なテーマではなくて、一番凄いと思ったのは、この合気道の先生です。これなら私でも出来るかなと思いました。窪塚より加藤晴彦に乗り換えました。脇役も良かったです。みなさんの感想はどうでしたか。

酒 井 好評でしたので、ここは臼井さんにけなしてもらいましょう。

臼 井 見てないのですよ。大阪では、上映館の入り口がポルノと同じだったので、入る 気がしなかった。


今月の一本

林 田 平幹二朗『リア王』お芝居です。熱演でした。

野 口 『ムーミン谷の冬』久しぶりに読んで良かったです。

笹 原 『黄泉がえり』割とよかったです。

杉 尾 雫井 脩介『火の粉』おもしろいです。

酒 井 『アモーレス・ペロス』推薦です。ビデオで見て下さい。

横 山 『ボーン・アイデンティティー』期待せずに行くと面白かったです。

臼 井 『仔犬ダンの物語』1月に見た4本の中で一番よかったです。カット割りが良かったので、下手な演技も巧くごまかしています。

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