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2003年12月号

出席者:笹原 小野 臼井 杉尾 矢野 (書記)酒井

今回は、「トーク・トゥ・ハー」、「エデンより彼方に」そして「チルソクの夏」です。200回記念なのに、参加者が少なく寂しかったのですが、臼井さんと小野さんの途中参加があり後半は盛り上がりました。では、合評会レポートをお送りしたいと思います。

トーク・トゥ・ハー

【データ】2002年 スペイン 1時間53分 配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ 監督:ペドロ・アルモドバル 製作総指揮:アグスティン・アルモドバル 製作:エステル・ガルシア 脚本:ペドロ・アルモドバル 撮影:ハビエル・アギーレサロペ 音楽:アルベルト・イグレシアス 出演:レオノール・ワトリング ハビエル・カマラ ダリオ・グランディネッティ ロサリオ・フローレス ジェラルディン・チャップリン バス・ベガ ピナ・バウシュ カエターノ・ヴェローゾ

参加者全員が見ていました。

杉 尾 なかなか変わった作品でした。残念ながら、感情移入が出来ませんでした。「縮みゆく人」は、グロテスクでいただけなかったです。何が良いのか私にはわかりません。あれが「究極の愛」と言っても、自己満足であっては受け入れられず、感情移入は出来ません。でも、最後はよかったと思います。今考えれば、不思議な作品でした。

笹 原 これは、本当に不思議な作品です。今回も、この監督らしい作品でした。ストーカーの映画なんだけど、もって行くところがうまいと思います。マルコが主人公になる先が読めませんでした。「縮みゆく恋人」はグロテスクでなんだけど、これがベニグロの行く道を表していたと思います。

矢 野 一途に、純粋に真実続ける主人公の心がすごいと思いました。

酒 井 みなさんがおっしゃるように不思議な作品だったと思います。ストーリーが読めないし、深刻なんだけど、どこかしらユーモラスで。この作品のポイントは、最初の演劇のシーンにあると思うのですが、どうでしょうか。最後も同じ演劇のシーンが出てくるし。でも、「縮みゆく人」はやりすぎですよね。この映画では重要なシーンであるけど。ここまで描いた映画は他に知りません。この作品は、1回ではあまり理解できなくて何回も見て新たなことが発見出来るのではないかと思います。僕の頭の中ではまだ、この作品のジグソーパズルは完成していません。私は、この作品はこの監督しか撮ることが出来ないし、個性あふれるユニークな点を高く評価しています。でも、やっぱりヨーロッパの監督ですよね。感覚がなんとなくおしゃれです。

後から、来た小野さんと臼井さんのコメントを、

小 野 この作品は大感激、今年のベストワンです。前作の「オール・アバウト・マイマザー」より素晴らしい。この作品は、展開が面白く引き込まれました。この作品は実は谷崎の真髄を的確に表している作品だと思います。「フットフェチズム」がもう谷崎の世界なんです。堪能しました。文句なしでした。

臼 井 私は少し相容れないところがあります。たしかに素晴らしい作品で、いいところはいっぱいあるのですが、心の底から良かったとは思いませんでした。この映画を見て、体について考えました。バレリーナの撮り方が生々しすぎて、びっくりしました。特にふくらはぎの撮り方が特徴的でした。一歩間違えばポルノになっていましたね。この監督センスがあると思いますね。色彩感覚がアートぼいし。でも、僕はもう少し俗っぽい方が好きなのですが。オスギは、100年分の涙を流したと言ってたけど、あの人何歳なのかしら。

いずれにしても、不思議な個性的な作品でした。


エデンより彼方に

【データ】2002年 アメリカ 1時間47分 配給:ギャガ・コミュニケーションズ 監督: トッド・ヘインズ 製作総指揮:スティーブン・ソダーバーグ ジョージ・クルーニー 製作:クリスチィーヌ・パション 脚本:トッド・ヘインズ 撮影:エドワード・ラックマン 音楽:エルマー・バーンステイン 出演:ジュリアン・ムーア デニス・クエイド パトリシア・クラークソン

次は、意外とファンが多いジュリアン・ムーアの新作です。笹原、杉尾、酒井そして途中から登場した小野さんが見ていました。

笹 原 1957年の話です。この時代の差別の話が出てきます。しかし、その話題(ホモセクシャル、黒人差別、女性軽視等)は、この時代だけのものとは思えないほど説得力を持っています。撮影、美術が素晴らしいです。さらに、ジュリアン・ムーアの演技が大変良かったと思います。この監督はゲイなので、その描き方がリアルでした。

杉 尾 とっても色のきれいなあでやかな作品でした。でも、期待が大きかった分、それほどでもなかった。ジュリアン・ムーアは、突然起こる事態がなかなか受け入れられなくて、すがる人もいなくて、ベッドで一人泣くシーンがたまりませんでした。友達なんか信じてはいけないと思いました。ラストシーンが印象的でした。

酒 井 この監督、ホモセクシャルで、カミングアウトしているという話を聞いてなるほどと思いました。この作品、ホモセクシャルのシーンが何故か説得力があるのですよね。その他の、黒人差別、女性蔑視については、なんか60年代の作品に多く見られたので、なんか題材が古くさいと思ったのですが。ホモセクシャル養護の立場から見ると「何故この作品を今頃撮ったんだ」ということが少し理解出来たような気がします。それにしても、撮影、衣装等は完璧ですね。なぜこの作品がアカデミー撮影賞を撮らなかったのかしらと調べると、今年の撮影賞は「ロード・ツー・パーデション」だったので、納得しました。

小 野 色彩が美しい。50年代、あえて50年代を選んで現在に出していこうという点がこの映画のすごさです。ジュリアン・ムーアがすばらしかった(もう少し、言いたそうでしたが、列車の時間に間に合わないとの事で帰っていかれました)。

あと、この作品の格調の高さに皆さん感心していましたが、明日見る予定の臼井さんは、制作総指揮が、ソダーバーグとクルーニーなので期待できないとの発言も出てきました。


チルソクの夏

【データ】2003年 1時間54分 配給:プレノンアッシュ 監督:佐々部清 プロデューサー:臼井正明 共同プロデューサー:志水俊太郎 脚本:佐々部清 撮影:坂江正明 音楽:加羽沢美濃 美術:若松孝市 出演:水谷妃里 上野樹里 桂亜沙美 三村恭代 淳評 高樹澪 谷川真理 竹井みどり 岡本舞 山本譲二 夏木マリ 金沢碧 田村三郎 イルカ 田山涼成 福士誠治 松本じゅん 呉和貞 金銀美 崔哲浩 江島潔 二家本辰己

笹原、杉尾、酒井そして臼井が観ていました。

笹 原 女の子4人がお互いを高めている姿に心が打たれました。男の子と女の子がうまくいくように見守っているところが印象に残りました。

酒 井 あまり期待していなかったので期待以上でした。青春映画というのはいくつかあるのですが、最近の作品ではこれは「がんばって、いきまっしょい」に感じが似ています。撮り方は、極めてオーソドックスで、新しい所はないのですが、妙に観客に媚びている所もなく、堂々としています。傑作とまではいきませんが、今年心に残る作品の一つです。

杉 尾 一生懸命陸上をやっているところが良かったです。それと、この映画を見て、自分自身の若い頃と、同じ世代なので、懐かしさがこみ上げてきました。おもわず、なごり雪を歌ってしまいました。

臼 井 たいくつしました。演出に意外性がなく、直ぐにわかってしまいます。もう少し、工夫が必要です。でも、この映画は、今の日本映画にとっては必要です。それから、この映画で一番得をしたのは下関市です。宮崎は、「棒倒し」で、何も得をしなかった。

このように、好意的な批評が多かったのですが、唯一臼井さんが、「つまらない」と評しました。その他、アルバイトの姿が良かったとか、最後のシーンはいらないもしくは一言でも会話があった方が等色々な話が出てきましたが、やはり、時代背景が我々と重なるために好意的なでした。

(今回、テープがレコーダーに絡まり、再生が思うようにいきませんでした。お許しを)


今月の一本

小 野 『名もなきアフリカの地で』

笹 原 『恋は邪魔者』

杉 尾 『恋は邪魔者』

酒 井 『ザ・ホワイトハウス』アメリカで評判のテレビドラマです。

矢 野 『トーク・トゥ・ハー』

臼 井 『吸血鬼』

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