出席者:♂ 臼井 加賀 酒井 笹原 志賀 横山 ♀ 手塚 林田 杉尾(書記)
新年、初めての合評会です。新人の手塚さん、久しぶりの臼井さんの参加もあり、久しぶりに賑やかな例会になりました。数ヶ月で、シアトルの野口さんもお土産話をたくさん持って帰国するだろうし、この調子で、今年もますますシネマ1987も盛り上がっていってくれるといいなぁと心から思うのでありますっ!では、今年、最初の一本は、これからです。
監督:エドワード・ズゥイック
出演:トム・クルーズ 渡辺 謙 小雪 ティモシー・スポール他
志 賀 あけましておめでとうございます。都城では、ちょっと遅れての公開でしたけど、良かったです。トム・クルーズの見張り役の福本清三さんと髭の菅田俊さんも良かった。鹿児島川内市の戦国村に行きたい気分になりました。(笑)音楽もいい。トニー・ゴルドウィンが『ゴースト』で心臓にガラスが刺さって死ぬのですが、今回は、トムの投げた刀に射抜かれて死ぬシーンが自分の中でリンクしました。ちょっと、長かったかなとも思いましたけど。ま、 面白かったです。
酒 井 ハリウッドが作った100%日本を描いている映画の中では、一番まともで、日本の文化の細々なところまでしっかり描いていたんじゃないかと思います。場合によっては、日本の時代劇より、きちんとした描写がなされていたと思います。この映画で一番、良かったというのは、さすがハリウッドの作品だけあって、アクションシーンが邦画にない以上の迫力があって、その点、非常に良かったと思うんですけど…。しかし、難しいのは、サムライスピリッツをどんなふうに映像に表すか、形にしてくるかっていう部分が非常に僕としては描き切れていなかったんじゃないかと思うんです。そういう試みをしているというのが観客には伝わってこない。相対的に、いろんなところを見てみると、平均点が高くて期待していた以上の出来だったんではないかと思います。俳優さんも、それぞれ適材適所で頑張っていたんじゃないかな。
加 賀 想像していたよりは、ずっと良い作品ではあったような気がします。侍の描き方が、ハリウッドから見た侍という感じで、凄く理想かされていた気がします。カリカチュアの世界というか、本当の侍というのは、こんなに格好良くなかったんじゃないかなと、ふっと、思ったりしますけどね(笑)。ま、フィクションというふうに見れば良いんですけど…。さすが、お金をかけていてアクションシーンもスバラシイし、完成度が高いなぁと思いました。どうしても、日本人の立場から見てしまうところがあって、これを見た人が本当にこんな歴史があったの?と勘違いしてもいいのかな、なんて思ったりもしました。何で、渡辺謙がその時代の体制に対して、戦わなければいけなかったのかというあたりの理由が、いまひとつ描かれてなくて、そこがちょっと、不満でしたけど、でも、全体的に見ると良い映画だったと思います。侍が住んでいるところは、すごくユートピア、理想郷みたいなところで、良い生活をしているから、ムリして死ぬことはないのになぁと思ったりなんかしましたけど(笑)。
笹 原 さっきから出ているように、日本の描き方が、いままでになく一番ちゃんとしていたなというのが、やはり良かったです。映画自体に期待していなかったというのがあって、その分、良かったのかも…。トムが主役で、やっぱり最後まで生き残って、かっこいい役のはずなのに、それを上回る渡辺謙がいたというのが、彼にとって計算違いだったんじゃないかなと思いました。その辺が、面白かったです。それと原田真人監督が意外にがんばってたんで、それが面白かったです。あと、役者もそろっていて、上手かったし、話しとしては、きちんとしてたなぁと感心しました。ま、好きな作品かというと、特にすきということもないけど、ま、よかったかなぁという気はしました。まるで、インディアンみたいに侍の村を描くのは、やはり、アメリカ的だなと思って、気にはなりましたけど…。
林 田 私は、そんなには好きではなかったです。悪いとは言えないけど、良くはなかった(笑)。やっぱり、時代背景が嘘臭いというか、アメリカ人が想像している日本人なんでしょうけど、やっぱり、そんなではないんですよね。『ダンス・ウイズ・ウルブズ』の感じ…、インディアンと白人の…あんな感じもしましたね。あと、小雪は、きれいだったし、たたずまいが素晴らしかった。渡辺謙は全然だめでした(笑)。もぅ〜、あれで賞取るのかって感じです。なんか、もう…、途中から見るのがめんどくさくなって…(笑)。昔の西部劇みたいなイメージがありましたね。私は、どちらかと言われれば、好きではない作品でした。
杉 尾 私は、大変面白かったです。トム・クルーズも、頑張っていたと思う。外国人が刀を持つと、とても不格好になったりするもんだけど、真田広之との殺陣の場面なんかびしっと極まっていて、スローモーションになってもすごくきれいでした。すごく練習したんだろうなと思いました。渡辺謙は、かっこいいわぁ〜。私は大好き。ま、斬九郎とはずいぶん違うイメージですけど、あれはあれで私はOKです。ただ、あんな山の中におるのに、ずいぶん英語が達者だとは思ったけど(笑)。合戦の部分なんかも迫力があって、『マトリックス』でうんざりした気持ちとは、全然逆で、凄く胸に響いてきました。トムは、不死身ですね(笑)。ま、死んだ方がよかったんじゃないとも思いましたけど。全体的に、結構楽しめて、涙も出て、小雪もきれいで…、ほんと堪能できました。正月にいいもん見たと言う感じです。
手 塚 私も、林田さんと同じく、はっきり言って嫌いでした(笑)。始めから、自分が粗探ししながら見ているなと感じていたんですけど…。まず、トム・クルーズの傷が、ある程度治って、小雪が彼を食事に誘うシーンがあるんですけど、あそこで子供らが、テーブルに肘をついて食べていて、私は、もう、あそこが許せませんでしたっ!(笑)。私が親だったら、怒ってますっ!!あと、なんでお寺のお坊さんである渡辺謙が、あんなにたくさんの軍隊を持っているのかというのも許せませんっ!それから、最後、戦う理由というのも解らないし、あれは、たんにトムがあの鎧を着て、一本映画を撮りたかっただけじゃないかと思いました(怒)。あんな凄い戦いをするということは、結局、村の男たちが全滅してしまうということが歴然としているのに、それをあえて実行するという渡辺謙の役は、考えがないやつだと思います。ま、映画なので、そこまでは、言いませんが…。あと、私は右翼ではありませんが、天皇陛下が、ああやって最後に自分で出てきて、刀をもらうっていうのも、ゆ、許せませんっ!!最後、大村さんが一喝するのが、なぁんで英語なんだって、これも、ゆるせませんっ!!う〜、最後の最後まで、やっぱりだめでした。渡辺謙、き、嫌いですっ!!顔がだめ、あの表情…ゆ、許せません!!ごめんなさいっ!
(杉尾:謝るこたぁないっ、許す、許す(笑)。)
酒 井 根本的にね、男尊女卑の思想がず〜っと物語の中に流れているんですよね。それは、アメリカの制作者が、きっと、そうなりたいという願望があるんじゃないですかね。(林田:そうそう、それはありますよね。)だって、アメリカでは、とてもそんなこと思ったって言えないですもんね、だから、物語の中で言ったんだと僕は思うな。あれを理想郷にして、男がいばっているというのを描きたかったんですよ。ハリウッド映画にしては、あまりにも女性をあんなふうに描いたりしたのはないですからね。根本は、アメリカ男性のあこがれだと思いますよ。
林 田 現代の日本の男性も、これを見て、昔の女性はああだったんだ、いいなぁと思うかもしれない(笑)。
加 賀 馬を使っての戦闘シーンなんかを見ていると、昔、黒澤 明がやりたくてもやれなかったものだから、やっぱり、ハリウッドのお金ってすごいなぁと思いますよね。
林 田 やっぱり、東洋の神秘っていう感じで、撮ってるんですよね。
横 山 僕は、見たのが11月の末だったので、ずいぶん忘れているのですが…。全然、話が侍の設定とか、むちゃくちゃなんですけど、それを面白い映画にしたのは、さすがだと思いました。渡辺謙、良かったですね。あのゴールデングローブ賞ノミネートとされて、アカデミー賞はどうかなと期待しますね。それと、映画の作りは、西部劇でしたけど、ま、それなりによかったんではないですかね。そんなところです。
監督:カロリーヌ・リンク
出演:ユリアーネ・ケーラー メラーブ・ニニッゼ レア・クルカ シデーデ・オンユーロ他
臼 井 今日は、年の始めでもありますしぃ、謙虚に…。すごく、つまんなかったんですけど(笑)今日は、みなさんに、どこがそんなに良いのかっていうのをですね、教えていただこうかと…。(林田:うん、じゃぁ教えてあげましょうよっ!)あの、つまらない最大の理由というのは、撮り方が全部図式的なんですよね。説明的というか…。たとえば、マラリアにかかっていた夫が治った瞬間、表に出て…ふっと、ヘリコプターの移動撮影で、すごい原野を見せ、こんなところに家を建てているというとのをわからせる、それが、もう説明なんですよ。僕は、この監督、頭悪いんちゃうかと思ってたら、その後、女の子が話の中で、ある一線を越えるところがあって、これがまさに説明というか、画面が実に図式的に出来ているんですよね。それで、この映画が、ピンからキリまで説明だけの映画ではないのだろうかと思っていたら、まったく、その通りで…。重要な映画だろうけどと思いますし、ま、これがアカデミーの外国語映画賞を取るというのは、未だに、アメリカ映画というのはナチスを敵にすれば、こういう事ができるんだなとすごく思いました。本当に、今日は、これのどこがいいのか、謙虚に、謙虚に、みなさんにお聞きしたいと思ってます(笑)。
酒 井 まず、女の子がかわいかったところ。女の子の目線から見たアフリカとか、家族をえがいているところ、で、女の子の成長と共に、その家族の苦難というか成長を語っているところが印象に残りましたね。確かに、あれだけの時間に膨大な話をまとめたから、どうしても映画的に説明が多くなるのはムリもないことだと、僕は思います。そこは、臼井さん、鋭く見てますね。(笑)。ま、ところどころ、非常に印象的なシーンがあるんですが…。最初に夫婦でアフリカに行きながら、すぐに奥さんの方は荷物をたたんで帰ろうとするんですが、最後は、逆に彼女の方がしぶとくって、夫の方がまいってしまうところとかのシーンは、それぞれの心情をよく描けてたんじゃないかと思います。とにかく、ちょっと、ドイツ映画っぽくなくて、ハリウッド映画的な感じがしたところが、僕としては気に入らなかったかな。しかし、非常に格調高く、淡々と撮っていた気がします。
加 賀 久々に、パーフェクトな映画を見た気がしました(笑)。あまり演出にデフォルメしたところもなく自然に撮ってあって、安心して見ることが出来たという感じがしました。一つ一つのエピソード…、たとえば、奥さんが、夫を助けるために不倫するところとかも、あまり深く描いてなく、それを娘が見かけたあたりもそこで、止めてあって。全体的に見ていて、すごく見やすかった。印象に残るエピソードが沢山あんるんですけど。僕が好きだったのは、女の子が飼っていた鹿が殺されたとき、料理人のオウアが、「また、別の鹿を飼ってやろう」というと、女の子が「自分は、子鹿を守る義務があったのに守ってあげられなかつたから、私はもう子鹿はかわない」といって断ると、オウアが「君は、大人だ」というシーンです。それと、夫が退役届けを出したとき、上司が「君は、イギリス人は好きか?」と聞くと、それに答えて彼が「イギリスの方が僕を受け入れてくれなかった」というんですが、すると上司が「私はスコットランド人だけど、君と同じようなものだ」と答えるんですが、そんなところにもちょっとした差別というものがあるんだなと思いました。いろいろ心に残る台詞がありましたね。
笹 原 私は、この映画に関しては、一点だけです。それは、夫婦の描き方です。これは、今までになかった本当、真実です。今までの映画で描かれてきた夫婦っていうのは、やはりきれい事で、はっきり言って嘘ですよね。なんか、結局うまくまとまるというような…。現実は、この映画のようなもんだなって思いました。ま、女性の監督だからということではなくてですね。本当に上手く真実を描いているなって…そういうところが、私の一番気に入ったところです。非常に好きな映画で、私は評価します。
林 田 私もこれはベストテンの上位に入ります。この映画の内容とか意味とかまったく知らずに、単にアフリカっていうイメージだけで見に行ったんですけど、つまり、あのドイツのユダヤ人が逃げてアフリカに来たとか、そういう歴史を全く知らなかったので、そこのところがまず驚きました。それから、この映画の中では、ユダヤ人の虐待のシーンとかは直接撮られていないけれど、見ている間、ドイツでの虐待のシーンが目に浮かんで…でも、こういう人たちもいたんだというのが驚きでしたね。あと、世界大戦最中でもアフリカが美しくきれいだったということも…。それから、やっぱり、夫婦の事ですが、この映画は、本当に女性も男性も本音をきっちりと言い合っていて、いい加減にはぐらかさず、はっきりとものをいう夫婦というところが良かったです。夫の方が、奥さんより愛情が深いということが分かって、女として、ちょっと辛い場面もありました。でも、私は、やっぱりこの女の人は偉いなと思います。自分を殺すことなく、自分に正直に生きているっていうところが、本当に大好きでした。これは、ユダヤとかドイツだとかいう以前に、夫婦の問題を取り上げたかったんだろうと思いますね。ちょっと、時間的に長いとは思いましたけど。
杉 尾 私も、林田さんがいったように、ユダヤとかそういうことではなく、家族、夫婦という部分を描いた映画だと思いました。アフリカの大自然の中で、すごく丁寧に撮ってある良質の作品だと思います。環境の全く違うアフリカの地で、とまどいながらも家族がそれぞれの形で困難を乗り越えていくところが感動的でした。あと、子供って、やっぱり柔軟でたくましいと思います。料理人オウアと女の子との間に生まれる深い絆は微笑ましくて、最後の方で別れるシーンでは涙がでました。あと、夫婦の絆。ずっと、ぎくしゃくしていた関係がどうにかかみ合ってくるあたりで、妻が夫に「私のこと愛している?」というと夫が「君が愛して良いというのなら…」と答えるんだけど、その言葉を聞いて、かたくなにドイツに帰るのを拒んでいた妻が、一緒に帰る決心をするでしょ、やはり、男性でも女性でもすがることの出来る確かな答えをいつでももとめているんだなとヒシヒシと感じました。何かの困難を、一緒に乗り越えた後の家族の絆のといのは、とっても強いものになると思いました。なんか、じっくり心に染み込んでくるような映画でした。
酒 井 歴史的に見て、やっぱり、あのドイツ人でありながらドイツで迫害されていたユダヤ人って、ああいうふうに見ると、身の置き場がないんですよね。あのアフリカの中でも、やっぱりういちゃうんですよね。そこら辺の微妙な部分を、非常に上手く描いていたと思います。ユダヤ人が逃げるまでってのはよくあるんだけど、逃げた後どうなってたんだろうというのがあって、やっぱりああやって苦労していたんだなっていうのが分かりましたね。
志 賀 田園官能ロマン乳搾りー背徳の牛舎― 「痴漢義父 息子の嫁と…」のビデオタイトル。
酒 井 「ジョゼと虎と魚たち」障害者の女性と若い男の子との触れあいがピュアで良い。
加 賀 「相棒」テレビドラマ、普段見ないけど、たまたま見たら面白かったです。
臼 井 「パッコン学園」騙されてはいけません。まじめなテニスにかける青春です。
手 塚 「キッシング ジェシカ」なんちゃってレズビアンが面白かった。
林 田 「女はみんな生きている」思わず、拍手してしまった。
杉 尾 「月のひつじ」地味な映画だけど、登場人物が皆温かで、あと、ロマンがある。