スクリーン(新聞連載コラム) 

2003年8月

「ターミネーター3」 壮絶な戦いと衝撃のラスト
(2003年8月7日付)
 T2から十二年、前二作で語り残した「審判の日」までを見事に描いた傑作である。今まで謎だったスカイネットと人類の関係が明白になる。
 二〇二九年からロサンゼルスにやってきたT―X(クリスタナ・ローケン)対ジョン・コナー(ニック・スタール)とT850(アーノルド・シュワルツェネッガー)の戦いが壮絶に繰り広げられる。コナー抹殺の命を受けたT―Xが女性なのは新機軸だ。CGより肉体によるアクションを優先したせいか、本物の人間性が感じられる。
 随所に見られるユーモアと、前二作とのつながりを示す鍵の部分の描き方に「ターミネーター」シリーズへの監督のこだわりを感じる。
 監督は「ブレーキ・ダウン」「U―571」と一級の娯楽作品を手掛けたジョナサン・モストウだけにパワー全開だ。
 ラストは「猿の惑星」第一作のように衝撃的。といっても、これからが戦いの本番なのだ。(笹原)


「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」 最新のCGで海賊映画復活
(2003年8月14日付)
 久々の本格的な海賊映画である。ハリウッドの全盛期には、多くの海賊映画が製作されたが、最近は「宇宙物」が主流になって、全く作られなくなった。この作品の製作者たちはハリウッドが再び全盛期を迎えるためには海賊映画の復活が不可欠であると思ったに違いない。
 しかし、このCG(コンピューター・グラフィック)全盛期、ちゃちな海賊映画なら観客も満足しないだろうし、「時代遅れ」と批評家からはののしられるだけである。そこでこの作品は、膨大な製作費を費やし、最新のCGを駆使して二十一世紀に海賊映画をよみがえらせることに成功した。
 この作品はディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」をイメージして作られている。私たちが想像する海賊たち、海賊船、宝物、冒険、南の島々とすべて期待を裏切らない。レトロな海賊映画だが、続編が多い今年のサマームービーの中では新鮮である。(酒井)


「踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」 女性管理官の描き方に不満
(2003年8月21日付)
 五年ぶりの第二作。期待が大きかっただけに少しがっかりした。本店(警視庁)と所轄(湾岸署)の対立に目新しさがなく、「ああ、まだやってるのか」と思えてしまう。
 変化をつけようと、女性管理官を登場させたのに、何の役にもたたない。あれだけの女性を出すからには、観客は活躍を期待したと思うが、この描き方は女性から見ると残念だ。
 この女性管理官、「事件は現場で起きてるんじゃないのよっ。会議室で起きてるの」と叫ぶ。えっ、間違いじゃない? と思ったが、確かに最近の事件も戦争もコンピューターに操られ、会議室の中で起き、会議室の中で終息している。
 寂しいけれど、もう、足で捜査する人情刑事の時代は終わったのだろう。だからなのか、大掛かりなシミュレーションの場面は活気があって面白かった。主題歌がやはりかっこいい。(林田)


「ムーンライト・マイル」 深刻な題材を優しい描写で
(2003年8月28日付)
 偽りの中から安らぎは得られない。発砲事件で婚約者を失ったジョーは事件の三日前に彼女と別れていたという事実を彼女の両親に言い出せずにいる。それぞれが、彼女の死という現実を正面から受け止められずに苦しむ姿は見ていて切ないものがある。
 しかし、映画のタッチは決して暗く重たいものではない。随所に織り込まれた小さなユーモアと全身に染みわたる音楽、登場人物の優しさが伝わり、いつの間にか癒やされていくのだ。映画館を出る時、さわやかな感動とともに、もしかしたら、あなたも思わず空を仰ぎ見たくなるかもしれない。
 主人公ジョーに「遠い空の向こうに」のジェイク・ギレンホール。そのほか、ダスティン・ホフマンやスーザン・サランドン、ホリー・ハンターなどの好演がさえる。特に、偽善的な同情を決して受けようとしない母親の複雑な心情を繊細に表現したスーザンは見事だった。(杉尾)


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