スクリーン(新聞連載コラム) 

2003年12月

「g@me.」 二転三転する痛快な推理劇
(2003年12月4日付)
 原作は人気作家・東野圭吾の「ゲームの名は誘拐」。この映画は、最後まで何も知らずに見ないと面白くない。携帯電話とパソコンを駆使し、不可能を可能にして作り上げる痛快サスペンス映画である。
 日々進歩し続ける携帯電話はまさに魔法の小箱。うまく操れば、アリバイなんてどうにでもなってしまう。現代の推理ドラマは携帯なしには語れない。話は二転三転、四転くらいまであって、最後に「なるほど」とうならせる。
 主人公の藤木直人は典型的美男俳優。頭脳明せきでプライド高い広告代理店のエリートクリエーターを見事に演じていた。やはり美しい男は憎めない。対する仲間由紀恵も堂々とその美しさを十分に見せて好演だった。淡々と計画を進めていく二人だったが…。ジーンと胸打つシーンもあって…。これ以上はやはり言えない。ぜひ映画館でゲームオーバーまでじっくり楽しんでほしい。(林田)


「マトリックス レボリューションズ」 既視感覚えるドームの戦い
(2003年12月11日付)
 斬新な舞台設定とデジタル技術に香港映画的ワイヤアクションを組み合わせ、熱狂的なファンを生み出した「マトリックス」の完結編。お勧めである。
 笑えるのだ、大いに笑える。題名にある“革命”はどこへやら、斬新だった舞台設定は、旧態依然たる対立の物語にすぎないと開き直っているようだし、人類存亡を賭けたドーム内の戦いのシーンは、映画好きなら既視感にとらわれること必至で、「風の谷のナウシカ」や「ガメラ2 レギオン襲来」など、さまざまな映画の題名をつぶやかずにはいられない。
 つまりこの映画、監督の映画的想像力の出自をそのまま見せているようなもので、どこか裸踊りに似ている。裸になるのにわざわざ作者が理由を付ける「キル・ビル」とはこの辺が全く違う。大人である。大いに笑って、楽しませてもらえばよろしい。(臼井)


「ファインディング・ニモ」 笑って泣けるCGのアニメ
(2003年12月18日付)
 物語のヒーローは魚の親子、心配性で頑固な父親のマーリンとその息子のニモだ。ニモは親子げんかをして人間にさらわれてしまう。物語の軸はニモを取り戻すまでの冒険だが、頑固で冗談も言えないマーリンが旅を通じて変わっていくドラマが下敷きになっているため、ユーモアと泣かせ所に説得力があり、つい笑ったり泣かされたりしてしまう。単純に子供向けの冒険アニメという感じではなくなっているあたり、「トイ・ストーリー」などのピクサーのアニメらしいと思う。
 もう一つの見所はコンピューターグラフィックス(CG)アニメーションならではの美しい海中風景、そしてスピーディーでダイナミックな動きである。奇妙なサメや深海魚、海鳥など「海の危険」は十分にスリリングだ。個人的には旅をする亀たちが海流のうずの中を群れをなして泳ぐ、優雅で楽しげな雰囲気がとても印象に残った。(野口)


「アンダーワールド」 憎み合い戦う吸血鬼と狼男
(2003年12月25日付)
 シリアスな映画である。現代に生きる吸血鬼と狼(おおかみ)男の一族は、何百年もの間憎み合い、殺しあってきた。戦いに明け暮れるセリーン(ケイト・ベッキンセール)は、ただ享楽におぼれる吸血鬼たちの中では疎まれる存在。ある日、彼女は狼男に勝つための重大な手掛かりを見つける。同時に吸血鬼の、そして自分自身のルーツにかかわる秘密を握る人物マイケル(スコット・スピードマン)の存在を知る。
 全編を通して暗く深刻なムード。激しいアクションを交えながら秘密が明かされていく。ゴシックな装飾や音楽の中でしなやかに戦うベッキンセールは繊細で美しく、見応えのあるアクションとCGは狼男という異形を十分に表現している。それだけでも見に行く価値はあるだろう。ミステリーの要素があるため語りが複雑で、途中で少し置いていかれる感じはするものの、雰囲気に浸りたい人にはお勧めである。(野口)


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