シネマ(新聞連載コラム)

2004年8月

「シュレック2」 せりふ楽しく子供も大満足
(2004年8月5日付)

簡単に言えば、「何事も見かけで判断してはいけない」というお話だが、今回はもう少し突っ込んで「ありのままに」といったところだろうか。

テンポが良くせりふも楽しい。前作からのキャラクターは特に脇役がパワーアップして活躍。新キャラでは長靴をはいた猫がとてもかわいい。映画好きの方なら、ちりばめられた数々のパロディーやハリウッド映画界のファッションチェックおばさまにうれしくなるはず。日本語吹き替え版でも、きっと子供たちと一緒に大満足できる。ただ、前作をおさらいして見た方がより楽しめる。

字幕版は主演のマイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアス、エディ・マーフィに加え、アントニオ・バンデラス、ジュリー・アンドリュース、ルパート・エヴェレット、ジョン・クリースなど素晴らしい俳優が顔をそろえている。日本語版を見る方は声を聞きながら「これは誰?」と考えてみるのも良いのでは。(手塚)



「カレンダー・ガールズ」 中高年女性の美しいヌード
(2004年8月12日付)

英国の片田舎。美しい風景も魅力の一つだが、何と言っても、中高年女性の美しいヌードがこの映画の最大のポイント。同世代の私としては息をのみ、目を見張り、感動の涙をひと滴。元気を与えられる作品で、実話を基にしている。

お堅い婦人連盟では毎年製作するカレンダーの写真を何にするかで今年ももめていた。会員のクリスは退屈な会議にうんざり。彼女の友人アニーはそのころ、愛する夫を白血病で亡くしていた。アニーを元気づけるため、彼女の夫が入院していた病院に寄付をしようと、ヘレンはある計画を思いつく。それは自分たちがヌードになってカレンダーを作るという前代未聞のアイデアだった。

平気で脱ぐのではない。お互い少しずつ励まし合って出来上がったカレンダーはとにかく美しい! この後の物語はぜひ映画館で。「まだ私たちだって…」ときっと日本の婦人連盟も…。無理かな? (林田)



「サンダーバード」 有名な人形劇実写で映画化
(2004年8月19日付)

一九六五年に制作された人形劇があまりにも有名で数年に一度、テレビで再放送されている。従ってほとんどの世代がこのサンダーバードに親近感を持っている。そのイメージを損なうことなく、実写でどう表現されるか不安だったが、少なくとも僕は及第点をつけて良い出来だと思う。

この作品、原作(人形劇)を忠実に再現している。特にサンダーバードのメカや基地(トレーシー・アイランド)は素晴らしい。残念なのはファミリームービーの要素が強すぎて、大人の鑑賞に堪えられる出来ではないこと。俳優では敵役のフッドを演じるベン・キングズレーの存在感が圧倒的でその他は影が薄い。

テレビ版を見た一九六〇年代には「二十一世紀になるとこのような国際救助隊が組織されて世界中がもっと助け合うようになる」と思っていたが、今もこの世から争いごとは消えず、唯一サンダーバードの実写版が作られるだけとは寂しい気がする。(酒井)



「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」 メリハリ付けマンネリ回避
(2004年8月26日付)

おなじみハリー・ポッターシリーズの第三作。今夏公開の映画の中で最も興行収益をあげている。監督がクリス・コロンバスからアルフォンソ・キュアロンに代わったためか、前二作に比べて上映時間が短くなり、スピーディーな出来となった。半面、原作の多くの部分が省略されており、原作を読んで映画を見たファンには少々不評である。

前作は一作目の焼き直し的な部分が多く、早くもマンネリ化が指摘されていたが、製作者はその点を考慮して映画にメリハリを付けるよう心掛けたようだ。それはある程度成功しているように思えるが、このシリーズが長続きするためには幾つかの課題が残る。

まず、主演のダニエル・ラドクリフは大きくなりすぎてポッター役として限界に来ていると思う。また、原作が長すぎて映画には収まりきれない。いっそのことオリジナルなストーリーにした方がファンも喜ぶのではないだろうか。(酒井)



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