「崖の上のポニョ」

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Ponyo 重箱の隅をつつくようなことから言わせてもらえば、宗介が助けた魚のポニョを、水道水を入れたバケツの中に入れるシーンで、それはないだろうと思った。あれではポニョは死んでしまう。すぐそばに海があるのだから、海水をバケツに入れればすむことなのに、どうしてこんな描写にしたのだろう。ポニョは魔法が使えるのだけれど、魚である以上はこうしたディテールがとても気になる。小さな子供はこれをまねするだろう。

冒頭の、たくさんの小さな魚やクラゲが乱舞するシーンを見て、これは手がかかってるなと思った。宮崎駿、今回のテーマはアニメーティングそのものにあったようだ。CGを使わずに手書きで通したのはかつての漫画映画の復権、アニメーティングの原点に返ることを意図したからだろう。その点に関しては不満は少しもない。

残念なのは話が小さな子供向けで、奥行きがないこと。というか、設定自体に奥行きはあるのだけれど、それを詳しく描いてはいない。フジモトやポニョのママの正体に関する言及が少ないので、どうも物足りなさを感じてしまう。「太陽の王子ホルスの大冒険」の昔から、宮崎駿の映画は常にエコロジーの視点が根底にある。海を舞台にした今回はいくらでも環境問題を入れられるはずなのだが、それをあまりやっていないのはやはり子供向けを意識したからか。一緒に見た次女は「面白かった」と言っていたから、子供には十分面白いのだろう。

子供向けの映画を大人が見て不満を述べるのは大人げない気もするけれど、「ルパン三世 カリオストロの城」や「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」などは年齢を超えて観客にアピールする傑作だった。それは面白さを突き詰めた展開やキャラクターの深い描き方やエコロジーへの明確な主張や深い寓意があったからだが、今回はそのレベルに至ってはいないのだ。

母親のキャラクターはいかにも宮崎駿らしい。「未来少年コナン」のモンスリーを思わせた。未来少年コナンのデータを見てみたら、これ2008年の設定だった。コナンの放映は1978年。それから30年後の未来を舞台にしていたわけだ。宮崎駿の映画には30年以上付き合ってきたのだなあ、とちょっと感慨深いものがある。

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このページは、hiroが2008年7月27日 10:11に書いたブログ記事です。

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