「涼宮ハルヒの消失」

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「涼宮ハルヒの消失」元の世界に帰るヒントはダン・シモンズの傑作「ハイペリオン」に挟まれた栞に書いてあった。「涼宮ハルヒの消失」というタイトルながら、実際には主人公の男子高校生キョンが改変された世界に放り込まれる話だ。こういうケースの場合、普通はパラレルワールドで説明することが多いが、映画は別の説明を用意している。きっちりと作ったSFという印象を持った。

2時間43分という長いアニメで、原作はどれほど長いのかと思ったら、文庫で250ページしかない。映画がこんなに長くなったのは小説の地の文を主人公のモノローグ(あるいはナレーション)として使っているからだろう。ゆったりと饒舌に進む話が急展開する場面など心地よいのだけれど、もう少し短くできたのではないか。正直に原作通りに作った映画なのだと思う。ただ、この映画化の仕方は悪くない。アニメとして驚くような技術も物語上の新機軸もないが、きちんと作ったところに好感が持てるのだ。

原作は谷川流のライトノベル。テレビシリーズを受けた映画化なので、基本的にはファン向けの作品なのだろう。涼宮ハルヒをはじめSOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)のメンバーがどんな能力を持っているかは一般観客には初めはよく分からないが、宇宙人(というか、宇宙人が作ったアンドロイド=長門有希)であったり、未来人(朝比奈みくる)であったり、超能力者(古泉一樹)であることは見ているうちに分かってくる。クリスマスを控えたある日、主人公キョンの周囲に不思議な出来事が起こる。昨日まで元気だったクラスメート谷口は風邪を引き、昨日も調子悪かったと言う。クラスの他の生徒にも風邪が蔓延していた。しかも、キョンの後ろの席にいるはずの涼宮ハルヒが消えていた。クラスのみんなはハルヒなんて知らないと言う。ハルヒ代わりにいたのはかつてキョンを殺そうとした朝倉涼子だった。古泉がいるはずの1年9組はなくなっている。SOS団が占拠していた文芸部の部室には長門がいたが、キョンのことを覚えていない。いったい何が起こっているのか。

抑揚のないセリフ回しの長門有希の立ち位置はエヴァンゲリオンの綾波レイに似ている。このほか、ハルヒやみくる、浅倉など登場する女子高生キャラは男子高校生を萌えさせるに十分なかわいらしさ。それだけではなく、ストーリーがしっかりしていることが人気の秘密なのだろう。

ちなみに原作ではヒントが挟まれていた本は「SF大長編の第1巻」とあるだけで題名はない。ハイペリオンシリーズは「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」「エンディミオンの覚醒」の全4作(文庫では全8巻)だから大長編というほどではないが、これを選んだのは脚本に協力している原作者か脚本家か。

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このページは、hiroが2010年5月14日 06:43に書いたブログ記事です。

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