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シネマ1987online

21グラム

幸福を失った人々の絶望感

薬物依存症の過去を持つ女が最愛の夫と2人の娘を事故で失う。事故を起こした男は前科者だが信仰と家族への愛を胸につつましく暮らしていた。地獄から這(は)い上がってきた彼らが支えにし守ってきた幸せを失った絶望は計り知れない。2人の慟哭に胸が苦しくなる。女はナオミ・ワッツ。男はベニチオ・デル・トロ。

ナオミの夫の心臓はショーン・ペン扮する大学教授に移植される。彼に暗い過去はないが、心臓移植なしでは生きられない宿命を背負っている。ようやく得た新しい心臓さえ彼を救えないという現実も。

作品に流れるのは強い喪失感だ。命と幸福の喪失。「それでも人生は続く」というせりふが何度か登場するが、その場面ではあまりにも無力な言葉がラストで鮮やかな意味を持つ。題名の21グラムは人が死ぬ時、その重さだけ体重が軽くなるのだという。コイン五個分の重さが何と重いことだろう。(2004年6月17日・手塚)

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