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シッコ

米医療保険の問題点を追及

「華氏911」のマイケル・ムーア監督が米国の医療保険の問題点にメスを入れた。国民健康保険制度の充実したカナダ、イギリス、フランスを訪問し、米国の実情を「どげんかせんといかん」と奮闘するドキュメンタリー映画である。

いつもなら、この監督の眉唾(まゆつば)ものの演出や人を扇動するところが気になるのだが、今回はそういう部分は影を潜めて、テーマに対するまじめな取り組み方に驚かされた。保険に加入していながら、保険金の支払いを拒否され、人生が狂った人たちに焦点を絞って取材した点が効果的だった。

米国でまともな医療を受けられない911の戦士たちをキューバに連れて行く場面では監督がヒーローに見えてくるから不思議だ。政府は日本の医療制度に米国の市場原理を持ち込み、国民皆保険を変えようとしている。「そうならないよう早く行動を起こせ!」という監督の声が聞こえてくるようだ。(2007年10月25日・笹原)

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