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シネマ1987online

幸福な食卓

みずみずしい主人公の少女

必ず家族そろって朝の食卓を囲むこと、という決まり事のある中原家。しかし母は家を出ていって、父は父親を辞める、と言いだす。成績優秀な兄は大学進学はせず農業を始めた。主人公の少女・佐和子は相変わらず普通の中学生だ。

瀬尾まいこの同名小説が原作。小松隆志監督作。崩壊しているが、普通の日常を保っていた家族と少女の再生の物語。主人公を演じる北乃きいのみずみずしさがスクリーンにあふれている。言葉少なに演出されているのに魅力的なのは彼女の透明感が作品の雰囲気に合っているからだろう。

突然大切なものを失うこともある。でも家族がそばにいるということ、そんな当たり前のことに気付けたとき、それがどれだけ大きな力になることか。自分はいつも何かに守られ生かされている、そう気付けたとき、いつもの町も花も木も風も、何もかもがいとしく見えるはず。見終わった後に温かい余韻の残る作品だ。(2007年3月1日・手塚)

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