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シネマ1987online

戦火の馬

話術にうまさ 反戦描く秀作

「ジョーズ」でサメ、「E・T」で異星人。スティーブン・スピルバーグは生き物を題材にするとさえる。今回の新作では「馬」である。

第1次世界大戦前夜のイギリス。農家の少年アルバート(ジェレミー・アーバイン)は1頭の子馬に魅せられる。父親が馬を競りで手に入れたので喜ぶが、サラブレッドの血を引くこの馬ジョーイは農耕には不向きだった。アルバートは懸命に農耕馬として育て上げる。そんな折、大戦がぼっ発、ジョーイは軍馬として徴用される。少年と愛馬との惜別が訪れる。

名作「運命の饗宴」のえんび服のように、「馬」が人から人へと巡っていく話術がうまい。人々は戦争といかに相対したか。戦争が個人からどんなに大事なものを奪い去っていくのかも合わせて描かれていく。

前作「タンタンの冒険」から一転、CGに頼らない泰西名画のような絵づくりも素晴らしい。「馬」を軸にした反戦映画の秀作だ。(2012年4月5日・小野)

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