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オーバー・フェンス

函館3部作の最終章

白岩は家庭を顧みなかったために妻から見放され、東京から生まれ故郷の函館に帰って来る。函館では職業訓練校に通いながら失業保険で生計を立てていた。訓練校とアパートの往復だけで何の楽しみもなく、漫然と毎日を過ごしていたが、同じ訓練校に通う代島に連れて行かれたキャバクラで、鳥の動きをまねて踊る若いホステス聡と出会う。白岩はどこか危うさを持つ美しい聡に引かれていく。

近年再評価が進む作家・佐藤泰志の芥川賞候補作の映画化。すでに映画化されてそれぞれ高い評価を得た「海炭市叙景」(2010年、熊切和嘉監督)、「そこのみにて光輝く」(2014年、呉美保監督)に続く「函館3部作」の最終章に当たる。

主人公の白岩をオダギリジョー、聡を蒼井優、代島を松田翔太が演じている。監督は「苦役列車」「味園ユニバース」の山下敦弘。

将来に展望もなく、毎日無気力な日々を送る主人公が聡や職業訓練校の仲間たちとの交流を通して少しずつ変わっていく。閉塞感で覆われていたこれまでの2作と違い、すがすがしさを感じさせる。

この秋、心にずっしりと響く映画を見たいと思う人に推薦したい。(2016年10月27日・酒井)

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