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シネマ1987online

ナラタージュ

愚かしい男女の恋愛

 島本理生の同名ベストセラー小説の映画化。「ピンクとグレー」の行定勲監督の最新作である。

 映画の配給会社に勤めている工藤泉(有村架純)は手にした懐中時計から過去を思い出す。それは忘れられない恋人、葉山(松本潤)からもらったものだった。数年前、泉は高校教師で演劇部顧問だった葉山にOB参加の公演のことで再会する。高校の卒業式の日の葉山とのある思い出を泉は心に封印して生きてきたが、葉山との再会で恋心が再燃する。2人に割って小野(坂口健太郎)という青年が、葉山への泉の恋慕を知りつつも、泉に思いを寄せてくる。

 「ナラタージュ」とは映画などでの回想形式の話法のことで、その形式で泉の過去が巧みに語られる。題意が映画に寄っているので、作中に映画のいろんな事物が出てくるのもファンにはうれしい。

 葉山には別れた妻がいて、泉と関係している間も妻のことが忘れられない。泉も葉山への思いを拭うように小野と交際し始めるが、葉山への恋情を断ち切れない。演劇部の後輩の自殺騒動が説明不足なのが傷だが、愚かしい男女の恋愛が見事に描かれる。成瀬巳喜男監督の名作「浮雲」(1955年)の現代版といえる秀作である。(2017年10月26日・小野)

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