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シネマ1987online

長江 愛の詩

見事な撮影 叙情高める

亡き父の後を継ぎ、小さな貨物船の船長をしているガオ・チュン(チン・ハオ)は、ある日船内で「長江図」という亡父の手書きの詩集を見つける。詩集に導かれるようにして上海から長江をさかのぼる旅に出たガオは、行く先々の街でアン・ルー(シン・ジーレイ)という謎の女性と何度も出会う。奇妙にも詩集に地名が記されている場所で出会いと別れを繰り返し、そのたびに若返っていく彼女は何者なのか。

2016年ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作。上海や南京、三峡ダム、上流の渓谷など揚子江沿岸の情景をとらえた名手リー・ピンビンによる撮影が実に素晴らしい。実景描写からはセミドキュメンタリー・タッチと言える作品だが、見事な撮影が詩集と謎の女性にまつわる内容の本作を「叙情詩」にまで高めている。

川をさかのぼる映画と言えば、フランシス・コッポラの「地獄の黙示録」を思い出す。本作もさかのぼりを深読みすれば、いくらでもできそうだが、長江の風景をただ見詰めているだけでいいのではないか。近代化しつつある国の変容と、一方で変わらない姿、悠久の歴史や大切な個人の記憶などが次第に心に染み入ってくる。ヤン・チャオ監督による詩情ある逸品だ。(2018年07月12日・小野)

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