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シネマ1987online

COLD WAR あの歌、2つの心

冷戦に翻弄される男女

冷戦の最中、時代に翻弄(ほんろう)される男女の情熱的な悲恋を描く。監督・脚本は「イーダ」のパヴェウ・パヴリコフスキ。

1949年のポーランドでピアニストのヴィクトルと歌手ズーラは出会い、恋に落ちた。互いに引かれながらも、西側への亡命を望む彼と祖国を離れられない彼女。2人は何度も引き裂かれ、心は切なく求め合う。

状況説明を極端に排除した脚本は人物の情感や背景を理解する想像力を求める。時間の経過も画面の暗転で表現され、余韻はない。全編白黒の映像は光の陰影を美しく演出し繊細に揺れる心理を映し出す。民族音楽の「2つの心」は物語の重要な要素で何度も様相を変えて歌われる。ズーラがヴィクトルのピアノ伴奏で歌うジャズバージョンは魅力的だ。歌詞をフランス語に書き換えることを強く批判する場面は彼女のポーランド人としての気概を感じさせる。

ズーラを「イーダ」のヨアンナ・クーリグ、ヴィクトルをトマシュ・コットが好演。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、アカデミー賞では外国語映画賞、監督賞、撮影賞の候補となった。(2019年08月22日・杉尾久)

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