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シネマ1987online

レ・ミゼラブル

臨場感のある一級品

「パラサイト 半地下の家族」とカンヌ国際映画祭や米アカデミー賞を競って敗れたフランス映画。相手が数年に1本クラスの傑作だったのが災いしたが、もっと注目されていい良作だ。

「レ・ミゼラブル」と言っても、映画やミュージカルになった200年前のフランスを舞台にしたユーゴー原作の物語とは別物だ。時代は現代、舞台はパリ郊外のモンフェルメイユ。移民や低所得者が多く住む犯罪多発地域で少年たち、対立する複数のグループ、暴力的な取り締まりを繰り返す警察の姿を描く。ある日、サーカスからライオンの子が盗まれる事件が起こり、それが思いがけない大きな騒動に発展していく。

臨場感とスリリングな展開が一級品で、移民問題や格差問題を考えるテキストとしても秀逸。ユーゴーが現代に生きていれば、こんな物語を書いたかもしれない。(2020年4月2日・後藤)

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