レヴェナント 蘇えりし者
19世紀のアメリカ西部を舞台にした復讐劇。と言うよりは熊に襲われて瀕死の重傷を負い、厳寒の荒野に置き去りにされた主人公の過酷な自然の中でのサバイバル劇がメインになる。リチャード・ハリス主演、リチャード・C・サラフィアン監督の「荒野に生きる」(1971年)を彷彿させる内容だと思ったら、同じ実話を基にしていた。つまりリメイクだが、元の映画がそれほど知られていないためか、リメイクをアピールしてはいない。原案としてクレジットされているのは2002年に出版されたマイケル・パンクの小説なので製作者にリメイクの意識もなかったのだろう。同じ話とはいっても冒頭の先住民襲撃の場面から映像の迫力がただ事ではなく、「荒野に生きる」をはるかに凌駕した出来栄えである。
1823年、毛皮ハンターの一団のガイド役として主人公のヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は息子のホーク(フォレスト・グッドラック)とともにミズーリ川沿いの荒野にいた。そこにさらわれた娘を捜す先住民のアリカラ族が襲撃してくる。飛び交う矢と銃撃で多くの男たちが倒れるが、グラスたち10人ほどが船で辛くも川に逃れる。このまま川を下るのは危険と判断したグラスの提案で一団は山沿いの道を選択。しかし、見張りに出たグラスは巨大な熊に襲われる。喉を食い破られ、体中に深い傷を負ったグラスの命が長くないとして隊長のヘンリー(ドーナル・グリーソン)はグラスの死を見届け、埋葬するよう命じた。ホークと友人のブリジャー(ウィル・ポールター)、金目当てのジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)がそれに応じ、荒野に残った。グラスの生命力は予想以上で、業を煮やしたフィッツジェラルドはグラスを殺そうとする。それを止めたホークをフィッツジェラルドはグラスの目の前で刺し殺し、グラスを穴の中に埋めてブリジャーとともに逃げ出す。
グラスは穴から這い出し、フィッツジェラルドへの復讐を誓う。生きるためにヘラジカの骨をすすり、草の根をかじり、生魚にかぶりつく。傷を消毒するために銃の火薬で喉を焼く。強い復讐心が生きる原動力になったのは想像に難くない。
残虐なシーンは多いが、映画は格調高い。それを支えるのがエマニュエル・ルベツキの撮影で、雄大な自然と人間の格闘をリアルなタッチで切り取っている。3年連続のアカデミー撮影賞受賞も当然と思える素晴らしさだ。坂本龍一もシーンに的確で印象的なスコアを提供し、格調を高めている。坂本龍一にはもっと映画音楽を担当してほしい。
巨大な熊の凶暴さはそこら辺のホラーを蹴散らす怖さ。CGであるにしても、この迫力は大したものだ。監督のアレハンドロ・G・イニャリトゥはほとんど息抜きのない緊張感あふれる映画に仕上げている。「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に続く2年連続のアカデミー監督賞も納得できる。
死地から帰還した男の復讐と言えば、冒険小説では定番の設定で、そういう話が好きな人には必見の映画と言える。