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ロード・オブ・ザ・リング

「ロード・オブ・ザ・リング」パンフレット

J・R・R・トールキンの長編ファンタジーの名作をハリー・ポッターと賢者の石」にも登場した北欧の怪物トロルが出てくるが、ずっと凶暴である。これが象徴するように「ハリー・ポッター」が子ども向けのファンタジーであるなら、こちらは大人向け、男性向けの力強い話なのである。フロドとサム(ショーン・アスティン)がモルドールにたどり着くところで終わるラストを見て、一刻も早く続きを見たい気持ちになった。

SFオンラインの映画評によると、ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」のアビヌス軍団と人間の戦いのようにスケールの大きなSFXである。指輪は人間より小さな種族ホビットのビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)の手によって、中つ国のホビット庄(シャイア)に持ち帰られる。バギンズは111歳の誕生日に再び旅に出ることを決意。魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)に命じられ、指輪を養子のフロドに託す。ガンダルフはサウロンが再び勢力を盛り返し、指輪を手に入れようと画策していることを知る。指輪がサウロンの手に渡ったら、世界は暗黒。フロドは指輪を破壊するため、モルドールの火の山まで行くことになる。

ジャクソンの演出はスピーディーで、特にブラック・ライダーとの戦い→エルフの王女アルウェンの疾走→無数のオーク(ゴブリン)が攻めてくる洞窟→終盤の戦いへと至る描写はどれも完成度が高い。普通の映画のクライマックスが何個も入っている感じ。トロルのほかに大きな触手を持つ怪物や火の鞭を操るバルログなども登場するが、SFXだけが前面に出るのではなく、物語の補強としての使い方に好感を持つ。SFXを担当したのはジャクソンの故郷ニュージーランドのWETA社。ハリウッドと比べても遜色ない出来栄えだ。撮影の舞台となったニュージーランドの風景も魅力的である。

主演のイライジャ・ウッド(「パラサイト」)をはじめ出演者は若い俳優が多いが、善と悪の魔法使いを演じるイアン・マッケランとクリストファー・リーがさすがの貫禄を見せ、映画の格を上げている。この2人の役柄は「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービとダースベイダーを思わせる。というより「スター・ウォーズ」の方がこの物語に影響を受けているのだろう。「指輪物語」の原作は「旅の仲間」(文庫で4巻)「二つの塔」(3巻)「王の帰還」(2巻)の3部作。「スター・ウォーズ」シリーズとは違って、毎年公開の予定なので、そんなに待たなくても良いのは大きな利点。スプラッターに笑いを散りばめた「ブレインデッド」のタッチを僕は嫌いではないが、あの映画の監督がこういう立派な映画を撮るとは思わなかった。1961年生まれのジャクソンは「指輪物語」の熱烈なファンという。原作を知り尽くしたファンでなければ作れない映画なのだなと思う。

【データ】2001年 アメリカ=ニュージーランド 2時間58分 配給:日本ヘラルド 松竹
監督:ピーター・ジャクソン 製作総指揮:マーク・オーデスキー ボブ・ワインスタイン ハーヴィー・ワインスタイン 原作:J・R・R・トールキン 脚本:フランク・ウォルシュ フィリッパ・ボウエン ピーター・ジャクソン 撮影:アンドリュー・レスニー 音楽:ハワード・ショア 美術:グラント・メイジャー 衣装:ナイラ・ディクソン リチャード・テイラー
出演(かっこ内は日本語吹き替え版):イライジャ・ウッド(浪川大輔) イアン・マッケラン(有川博) リヴ・タイラー(坪井木の実) ヴィゴ・モーテンセン(大塚芳忠) ショーン・アスティン(谷田真吾) ケイト・ブランシェット(塩田朋子) ジョン・リス・デイヴィス(内海賢二) ビリー・ボイド(飯泉征貴) ドミニク・モナハン(村治学) オーランド・ブルーム(平川大輔) クリストファー・リー(家弓家正) ヒューゴ・ウィービング(菅生隆之) ショーン・ビーン(小山力也) イアン・ホルム(山野史人) アンディ・サーキス  サラ・ベイカー

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