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シネマ1987online

レッド プラネット

「レッド プラネット」

昨年の「ブライアン・デ・パルマと新人との力の差が出たと言えようか。

2057年、地球環境は破壊され、人類は存亡の危機を迎えていた。一縷の望みを託して人類は火星地球化計画(テラフォーミング)を進める。極冠の氷を溶かし、藻類を火星に移植、酸素を発生させたが、ある時、順調に送られていたデータが突然途絶える。その調査に出かけるのがこの映画が描くマーズ1号だ。船長のボーマン以下、乗組員は6人。マーズ1号は火星に接近した所で大規模な太陽フレア(太陽風のこと?)の直撃を受け、宇宙船の機能が停止する。着陸船で火星への脱出を図るが、自動制御できず、ボーマンが船内に残って手動で着陸船を射出する。火星に到着した乗組員のうち、最年長のシャンティラス(テレンス・スタンプ)は着陸時の衝撃で膵臓が破裂。残った4人で火星基地に向かう。しかし基地は粉々に破壊されていた。しかも同行した犬型のナビゲーションロボットのAMEE(エイミー)が着陸の衝撃で戦闘モードに変わり、乗組員たちを襲ってくる。

残り少なくなる酸素やロボットの恐怖、基地を破壊したものの正体(これはちょっとがっかり)など火星上の場面と、地球と交信しながら宇宙船修理にあたるボーマンの様子が描かれる。危機また危機という感じがしないのは演出が弱いためだろう。ロボット自体のSFXは大変良くできているが、これとの対決がクライマックスとなるのはちょっと違うような気がする。やはりここは基地を破壊したものとの対決を持ってくるのが本筋。しかし、この映画が設定した生物では役者不足である。最近、少し先の時代の宇宙をリアルに描く作品が多いけれど、こちらが宇宙SFに期待するのは壮大なスペキュレーションであり、スペクタクルなのである。大嘘を描く宇宙SF映画を見たいものだ。

キャリー・アン・モスは「マトリックス」に続いて非常にいい。主演のヴァル・キルマーの上司という感じの貫禄があり、それでもなおヴァル・キルマーと恋に落ちる女らしさもまた情感たっぷりに漂わせている。

【データ】2000年 アメリカ 1時間46分 配給:ワーナー・ブラザース
監督:アントニー・ホフマン 脚本:チャック・ファーラー ジョナサン・レムキン 原案:チャック・ファーラー 製作:マーク・カントン ブルース・バーマン ジョージ・サラレギー 製作総指揮:チャールズ・J・D・シュリッセル アンドルー・メイソン 撮影:ピーター・サシツキー 美術:オーウィン・パタソン 音楽:グレイム・レベル 衣装:キム・バレット 視覚効果監修:ジェフリー・A・オークン
出演:ヴァル・キルマー キャリー・アン・モス トム・サイズモア ベンジャミン・ブラット サイモン・ベイカー テレンス・スタンプ

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