ジュラシック・パークIII
4年ぶりの第3作。スピルバーグは「A.I.」に打ち込むため、以前からこのシリーズを作りたいと希望していたジョー・ジョンストン(「ミクロ・キッズ」「ロケッティア」「ジュマンジ」「遠い空の向こうに」)が監督を担当した。普通なら、シリーズ3作目、しかも監督交代でボルテージは落ちるところなのだが、ジョンストンにその通説は通用しない。大作らしさには少し欠けるものの手堅さでは申し分なく、襲い来る恐竜からのサバイバルと壊れた家族の再生という人間のドラマをうまく融合させたエンタテインメントに仕上げている。上映時間を1時間33分とコンパクトにまとめたのは賢明な判断で、B級映画のテイストを残した、こういうスマートな映画には好感が持てる。今夏の大作の中では一番まともな演出である。ジョンストンは映画のあるべき姿とエンタテインメントの本質をよく知っており、時折こけおどし的な演出が目に付くスピルバーグよりも洗練されている。
第2作のジェフ・ゴールドブラムに代わって、今回の主役は古生物学者のアラン・グラント(サム・ニール)。第1作以来の登場で、かつての同僚エリー(ローラ・ダーン、「遠い空の向こうに」の先生役が良かった)も最初の方で顔を見せる。命からがら脱出した体験から「二度とジュラシック・パークには行かない」と決めていたグラントだったが、恐竜化石発掘の研究費は底を突きかけ困っていた。そこへ会社社長のポール(ウィリアム・H・メイシー)とその妻アマンダ(ティア・レオーニ)から、「サイトB(ソルナ島)の上空を飛ぶからガイドしてくれ」との依頼が来る。ジュラシック・パークの周辺は立ち入り禁止で飛行も禁じられている。夫妻は金の力でコスタリカ政府から許可を取ったという。
夫妻が雇った乗務員と助手のビリー(アレッサンドロ・ニヴォラ)とともにグラントは島へ向かう。ところが、ポールはサイトBの上空にさしかかったところで、予定通りという感じで着陸を強行する。またも金持ちの道楽かと思われたが、実はポールが会社社長というのは真っ赤な嘘。8週間前に島で行方不明になった息子リック(トレヴァー・モーガン)を探すのが目的だった。夫婦仲も冷え込んで別居中。リックは妻の恋人とともにパラセーリングの途中で行方不明になったのだった。島に降り立った一行に当然のように恐竜たちが襲いかかる。飛行機は凶暴なスピノサウルスに破壊され、島からの脱出は不可能。一行は脱出の可能性を探るため、海岸を目指してジャングルを突き進む。一人また一人と犠牲者を出しながら、襲ってくる恐竜たちからどう逃げ切るかが見どころとなる。
CGの技術は4年前よりも確実に上がっており、ティラノザウルスとスピノサウルスとの戦いなどは怪獣映画ファンが喜びそうな迫力。第1作では技術的に描けず、前作でもラストにちらりとしか出せなかったプテラノドンが今回は大いに見せ場を作っている。これとおなじみのヴェロキラプトル。今まで以上に知性を持った恐竜として描かれ、人間たちを恐怖に陥れる。飛ぶことにこだわりを見せるジョンストン演出の例にもれず、プテラノドンの飛翔する描写には見応えがある。そのプテラノドンの最初の登場シーン、霧の中の橋を渡ってくる姿はまるで悪魔のようだ。飛び方やアングルは平成「ガメラ」シリーズのギャオスの影響があるのではないかと思える。
しかし、そうした技術的な部分もさることながら、ジョンストンの持ち味は演出の的確さの方にあり、無駄な描写を一切廃してユーモアと緊張感たっぷりに映画は進行していく。過不足なく描かれた1時間33分と言うべきで、これは超大作の上映時間ではないし、もう少しSFにシフトしても良かったのではとの思いも残るが、見終わって満足感は高かった。プロの仕事を見たという感じ。第4作を作るなら、またジョンストンに撮らせてほしいものだ。
【データ】2001年 アメリカ 1時間33分 配給:UIP
監督:ジョー・ジョンストン 製作:キャスリーン・ケネディ ラリー・フランコ 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ 脚本:ピーター・バックマン アレクサンダー・ペイン ジム・テイラー キャラクター原案:マイケル・クライトン 撮影:シェリー・ジョンソン プロダクション・デザイン:エド・バリュー 衣装:ベッツィー・コックス 音楽:ドン・デイヴィス 特殊効果スーパーバイザー:マイケル・ランティエリ ライブ・アクション・ダイナソー:スタン・ウィンストン・スタジオ 視覚効果スーパーバイザー:ジム・ミッチェル アニメーション&視覚効果:ILM 恐竜コンサルタント:ジャック・ホーナー
出演:サム・ニール ウィリアム・H・メイシー ティア・レオーニ アレッサンドロ・ニヴォラ トレヴァー・モーガン マイケル・ジェッター ブルース・A・ヤング ジョン・ディール ローラ・ダーン