シャンハイ・ヌーン
もしかしたら「M:I-2」のアクションと比べてみると、ジャッキーの独自性は、はっきりすると思う。
ストーリーは「レッド・サン」の昔からある“イースト・ミーツ・ウエスト”のパターン。1881年、中国のペペ姫(ルーシー・リュー)がアメリカ人に騙され、西部に連れ去られる。犯人は身代金に金貨10万枚を要求。紫禁城で働き、ペペ姫誘拐の現場を見たチョン・ウェン(ジャッキー・チェン)は姫救出に選ばれた3人の近衛兵とともに志願して西部へ旅立つ。途中、チョンたちが乗った列車を強盗一味が襲う。同行した叔父を一味から殺されたチョンは闘いを挑むが、列車をやむを得ず切り離し、仲間からはぐれてしまう。一味のボス、ロイ・オバノン(オーウェン・ウィルソン)はまだ若く少々まぬけなところがあり、悪党一味から見放されて、首まで埋められることに。曲折を経てチョンとロイは酒場で再会、救出作戦を聞いたロイは金貨目当てに協力することにする。
タイトルは上海(Shanghai)と映画「真昼の決闘」(High Noon、1952年)をかけたものだが、チョンは紫禁城(北京)で働いていたのだから、語呂合わせにもなっていない。チョン・ウェンをジョン・ウェインと聞き間違えたり、過去の西部劇を“引用”したりのギャグにも、あまりセンスがない。脚本はこんな具合で、余計なエピソードも目立ち、映画の緊密性を欠く結果になった。それでも見ていられるのはジャッキーの体技があるからで、列車での強盗一味との戦い、インディアンとの戦い、誘拐一味との対決など盛り沢山。蹄鉄をロープに結びつけて自在に操る場面などは、ジャッキーにしかできないことだろう。
パンフレットに引用されたアメリカでの批評は「めくるめく大胆なアクションが次々と繰り出され、ジャッキーの華麗な技とスピードは、とうてい言葉では言い表せない」など絶賛ばかり。過去のジャッキー映画を観ていないと、そういうことになる。監督は初登板のトム・ダイだが、脚本も含めてジャッキーの意見がかなり採り入れられているのではないかと思う。ジャッキー映画の欠点が脚本にあることは毎回感じることで、監督・脚本家をしっかりした人材に頼めばさらに映画としての完成度は増すと思う。その意味では製作予定に挙がっているレニー・ハーリン監督、ヒュー・グラント共演の“Nosebleed”にちょっと期待できそうだ。
【データ】2000年 アメリカ映画 1時間51分 タッチストーン・ピクチャーズ スパイグラス・エンタテインメント提供 配給:東宝東和
監督:トム・ダイ 製作総指揮:ジャッキー・チェン ウィリー・チェン ソロン・ソー 製作:ロジャー・バーンバウム ゲイリー・バーバー ジョナサン・グリッマン 脚本:アルフレッド・ガフ マイルズ・ミラー 撮影:ダン・ミンゲル 美術:ピーター・J・ハンプトン 音楽:ランディ・エデルマン 衣装:ジョセフ・ポロ
出演:ジャッキー・チェン オーウェン・ウィルソン ルーシー・リュウ ブランドン・メリル ロジャー・ユーアン ザンダー・バークレイ ユー・ロングァン ハイ・チュイヤー エリック・チェン・チーチェン ウォルトン・ゴギンズ P・エイドリアン・ドーヴァル ラファエル・バエズ ステーシー・グラント ケイト・ルイベン ジェイソン・コネリー ヘンリー・オー