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スパイキッズ

「スパイキッズ」

マッド・サイエンティストの組織に誘拐された元スパイの両親を2人の子どもが救出しようと、大人顔負けの活躍をする。ファミリー映画ということは分かっていたが、やはりこの程度の出来ではまずいのではないか。ロバート・ロドリゲス(「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「パラサイト」)はファミリー映画の可能性を信じていないのだと思う。子どもが見ても大人が見ても面白い映画というのは確かに難しいが、「子どもの理解力はこんなもの」と低く見積もって作った映画が面白くなるわけがない。とりあえず子どもを主人公にして子どもが喜びそうなキャラクターを登場させて子どもが分かる範囲内のストーリーを設定してと、足し算で作っていった映画なのである。作りが雑なうえに、心がこもっていない。SFXや俳優に一応合格のものをそろえても、映画製作の基本が間違っているからダメなのである。

敵対していた2人のスパイ(アントニオ・バンデラスとカーラ・グギノ)が結婚するエピソードを描く冒頭はスピーディーでスペクタクルな良い出来なのだが、そこから始まるメインのストーリーがいきなりファンタジーである。マッド・サイエンティストのフループ(アラン・カミング)が作った子ども型ロボット“スパイキッズ”を完成させるために、バンデラスがスパイ時代に作り、秘かに持っていた“第三の脳”を狙う。バンデラスとグギノは誘拐され、2人の子どもカルメン(アレクサ・ヴェガ)とジュニ(ダリル・サバラ)にも魔の手が迫る。2人は秘密兵器を駆使して危機を切り抜け、両親の救出作戦を展開することになる。

フループが作る親指型のロボット“サム・サム”や機械で人間が変換された怪物キャラクターは、いかにもお子さま向け(でも気持ち悪い)の造型。フループのいる城も同様。キャストは豪華で、ロドリゲスとは縁のあるジョージ・クルーニーがゲスト的に出演しているほか、「ターミネーター2」のロバート・パトリック、テレビ版「スーパーマン」のロイス・レイン役テリ・ハッチャーも出ている(ハッチャーはあまりといえばあまりの格好になる。アメリカで人気が落ちたのだろうか)。SFXも水準的な出来と言える。なのに肝心の子役に魅力がない。というか子どものキャラクターが少しも描き込まれていない。両親は元スパイであることを子どもに隠しており、2人の子どもは父親を気弱なダメ親父と思っている。この設定をもう少し生かして、映画の核にすれば良かったのにと思う。ドラマ部分が希薄でエモーションが持続せず、単なる見せ物を並べただけで終わっている。

昨年のアメリカの興行収益を見ると、大ヒットしたのは「ハリー・ポッターと賢者の石」や「モンスターズ・インク」など子どもも動員できる映画。このあたりの事情は日本もアメリカも変わらない。早くも撮影が始まったという第2作“Spy Kids 2 : The Island of Lost Dreams”では第1作の不満を払拭する映画になっていることを望む。

【データ】2001年 アメリカ 1時間28分 配給:アスミック・エース
監督:ロバート・ロドリゲス 製作総指揮:ボブ・ワインスタイン ハーヴィ・ワインスタイン ケアリー・グラナット 製作:エリザベス・エイヴェラン ロバート・ロドリゲス 脚本:ロバート・ロドリゲス 撮影:ギレルモ・ナヴァロ 音楽:ダニー・エルフマン 衣装デザイン:デボラ・イヴァートン
出演:アントニオ・バンデラス カーラ・グギノ アレクサ・ヴェガ ダリル・サバラ アラン・カミング トニー・シャルーブ ロバート・パトリック ジョージ・クルーニー テリ・ハッチャー チーチ・マリン ダニー・トレホ マイク・ジャッジ

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