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将軍の娘 エリザベス・キャンベル

「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」

「コン・エアー」のサイモン・ウエスト監督の第2作。米陸軍基地内での殺人事件を描いたネルソン・デミルの同名ミステリーの映画化だが、演出が大ざっぱで才気が少しも感じられない。特に後半は駆け足で、ストーリーを消化するのに精一杯という感じだ。ウィリアム・ゴールドマンが名を連ねているから、脚色に問題があるわけでもないだろう。きっと編集段階で切ったのだと思う。おまけに主演のジョン・トラボルタ、マデリーン・ストウとも容色の衰えが目立ち、映画を引っ張る力に欠ける。一見大作、実は空疎というよくありがちなパターンにすっぽりはまった作品だ。

ジョージア州の陸軍マッカラム基地で、全裸の女性死体が見つかる。死体は杭に両手両足を縛られていたが、暴行の跡はなく、抵抗した様子もなかった。死んでいたのは退役間近のジョー・キャンベル将軍の娘で心理作戦部の教官エリザベス(レスリー・ステファソン)。軍犯罪捜査官のポール・ブレナー(ジョン・トラボルタ)は、友人の憲兵司令官ケント大佐(ティモシー・ハットン)から連絡を受け、捜査に乗り出す。ブレナーは将軍からFBIが捜査に乗り出す前に犯人を見つけて欲しいと要請される。時間は36時間。レイプ犯専門捜査官のサラ(マデリーン・ストウ)とともにエリザベスの近辺を洗うが、美人で優秀だったエリザベスには意外な側面があることが分かる。家の地下の隠し部屋にはベッドで男をいたぶるエリザベスの姿を撮影したビデオテープがあった。エリザベスは基地内の男に次々に声をかけ、寝ていたのだという。また士官学校時代にトップだった彼女の成績は一時期、落第すれすれまで落ちていた。ブレナーはエリザベスの上司ムーア(ジェームズ・ウッズ)から「レイプよりも恐ろしいことがあったのだ」と聞かされる。

ミステリーの映画化には緻密な演出が要求される。最近では「シックス・センス」が用意周到な演出で成功していたが、サイモン・ウエスト監督にそんな繊細さはないようだ。一つ一つの場面の造形は悪くはないが、とりあえずストーリーを消化しただけに終わっている。前半がモタモタしすぎているのだ。本筋の事件が起きる前に描かれる別の事件の描写は優秀な監督なら手短に終わらせるだろう。前半にこうした余計なエピソードがあるから、後半が単に説明するだけの描写の連続になってしまう。長いミステリーの映画化にはポイントを押さえて、演出する必要があるということをサイモン・ウエスト、分かっていない。こんな描き方では事件の真相が分かっても、「なんだ、よくある話じゃないか」という印象しか受けない。

マデリーン・ストウは好きな女優のだが、やはり40歳を超えると、ヒロインとしては苦しくなる。トラボルタは体型管理に気を付けないと、ダン・エイクロイドみたいになってしまうかもしれない。こんなに太っていては優秀な捜査官というイメージに合わないし、アクション映画の主演も無理だろう。

【データ】1999年 パラマウント映画提供 UIP配給 1時間57分 製作:メイス・ニューフェルド
 監督:サイモン・ウエスト 原作:ネルソン・デミル「将軍の娘」 脚色:ウィリアム・ゴールドマン クリストファー・バートリニ 撮影:ピーター・メンジーズ・ジュニア 音楽:カーター・バーウェル プロダクション・デザイナー:デニス・ワシントン
出演:ジョン・トラボルタ マデリーン・ストウ ジェームズ・クロムウェル ティモイシー・ハットン レスリー・ステファソン ダニエル・ヴォン・バーゲン クラレンス・ウィリアムズ3世 ジャームズ・ウッズ

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