スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス
アメリカでの公開直後の批評がネガティブなものばかりだったので心配したが、これなら大丈夫。あまりの幼稚さにがっかりした「ジェダイの復讐」よりも数段面白い。驚くほどスピード感のあるSFXはやはり最高水準だし、その圧倒的な量の多さは他に例を見ない。難を言えば、「シス」や「ミディクロリアン」など初めて聞く言葉が頻発することで、詳しい説明もないから意味を追うのに苦労する。それが冒頭のノリの悪さにもつながっているようだ。
いつも通りのタイトルの後、話はジェダイ騎士2人が通商連合の宇宙船に向かう場面から始まる。2人はジェダイマスターのクワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)と弟子のオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)。惑星ナブーを武力封鎖した通商連合との交渉役としてジェダイ評議会から派遣されたのである。しかし通商連合は2人の抹殺を図る。背後には暗黒面のフォースを操るシスのダース・シディアスがいるらしい。船を脱出した2人は惑星ナブーでグンガン族のジャージャー・ビンクスとクイーン・アミダラ(ナタリー・ポートマン)を救い、通商連合の追っ手から逃れるために惑星タトゥーインへ向かう。そこで奴隷のアナキン・スカイウォーカー(ジェイク・ロイド)と出会うのだ。ガン・ジンはアナキンの素質を見抜き、ジェダイ騎士に育てようと決意する。
ガン=ジンらが逃亡に使う船にはR2-D2と同タイプのロボット3体がいる。宇宙船が敵の攻撃で被弾すると、R2は外に出て、修理に当たる。ああ、これはダグラス・トランブル「サイレント・ランニング」ではありませんか。R2はあの映画に登場するロボットと酷似しているが、もともとはこういう用途に使われていたのですね。
さて、話が面白くなるのはタトゥーインに舞台が移ってからだ。敵ながらあっぱれというほどかっこいいダース・モール(レイ・パーク=今回最大の儲け役なのに、ビリングはキャストの16番目。パンフレットでも紹介されていない。かわいそうに)とのライトセイバーでの対決、迫力満点のポッド・レース(これはジェットコースター感覚)など見せ場が連続する。クライマックスは通商連合のバトルドロイド軍団とグンガン族との戦い、再びダース・モールとの対決、連合の宇宙船を攻撃するアナキンをはじめとしたナブー軍の3場面が交互に描かれ、スクリーンから目が離せない。
ユアン・マクレガーのルークに似たコスチュームから、僕は今回の主役はオビ=ワン・ケノービなのではないかと思っていたが、あまり活躍の場がなかった。ルーカスは「エピソード2」で本当の活躍をさせる−と明言している。しかし、それはどうだろう。旧3部作が結局のところ、ルークの話であったように、新3部作はアナキンの話に収斂していくような気がする。エピソード2は成長したジェダイ騎士のアナキン、エピソード3ではダース・ベイダーとなるアナキンの姿が描かれるはずである。
旧3部作との比較で言えば、今回の話にはルークとレイア、ベン、チューバッカに相当する役はあっても、ハン・ソロ役が見あたらない。そこが少し残念。脚本全体をもう少しすっきり整理する必要もあっただろう。僕は思うのだが、黒沢明の晩年がそうであったように、ルーカスにはしっかりした脚本家が付いた方がいい。「帝国の逆襲」のリイ・ブラケットのような人が理想的なんですけどね。
「シス」についてパンフレットには「ジェダイの教えに反し、フォースの暗黒面に身を投じた狂信者集団」とある。シスは2000年前に生まれたそうで、ジェダイとの戦いで滅んだのだそうだ。この話の前段があるわけだが、そんなことはいっさいこの映画では描かれない。「エピソード1」が描いたのは、官僚的で機能しなくなった元老院をはじめ徐々にほころびつつある銀河共和国の姿。今後、話は共和国の崩壊、帝国の誕生、反乱軍の蜂起へとつながっていくのだろう。そしてジェダイ評議会にいながら、ほとんど見せ場がなかったメイス・ウインドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)にも今後、活躍の場が与えられるはずである。
しかし、このペースで大丈夫なのか。なにせ、C-3POがまだあの状態ですからね。2002年まで待ちきれない思いだ。
【データ】1999年 アメリカ 2時間12分49秒 ルーカス・フィルム作品 20世紀フォックス配給
監督・脚本 ジョージ・ルーカス 撮影:デヴィッド・タッターソル 音楽 ジョン・ウィリアムス
出演:リーアム・ニーソン ユアン・マクレガー ナタリー・ポートマン ジェイク・ロイド テレンス・スタンプ ベルニラ・アウグスト