トランスフォーマー リベンジ
前作はあまりの子供っぽさに唖然とした。今回はその反動か、主人公が大学生になったためか、子供っぽさは随分抑えられたが、下ネタがやや過剰だ。これだと前作のように夏休みのファミリー向け映画としては売りにくいだろう。マイケル・ベイの演出も相当に雑、というか大雑把である。物量を駆使したVFXとアクションは確かに凄い。だが、金属生命体の動きが立体感に乏しい場面もあったりして、見ているうちに飽きてくる。きっちりドラマを作った上でのスペクタクルじゃないと、面白さが半減してしまう。毎度のことながら、どうもベイの演出、ドラマをないがしろにしがちなのである。面白かったのは人間に変身したディセプティコンの女(イザベル・ルーカス)が突然正体を現し、長い金属の舌を主人公の首に巻き付ける場面。川尻善昭「妖獣都市」冒頭のエロティックな蜘蛛女を思わせた。巨大ロボットばかりではなく、こういうのをたくさん出して欲しかったが、そうなると、トランスフォーマーではなくなるかもしれない。前作に続いて普通の青年のシャイア・ラブーフとセクシー度を大幅にアップしたミーガン・フォックスは良かった。
前作から2年。主人公のサム・ウィトウィッキーは大学に入学し、ガールフレンドのミカエラ・ベインズ、両親とは離れて暮らすことになる。引っ越しの日、2年前の戦いで着ていた洋服からオールスパーク(金属に生命を吹き込む力を持つキューブ)の破片が落ち、それに触ったサムは記号や文字の幻覚が見えるようになる。一方、オートボットとディセプティコンの戦いは続いていた。ディセプティコンたちは太陽を破壊する兵器に必要なマトリクスの隠された場所を探していた。その地図はサムの頭の中にあり、サムを狙ってくる。オートボットのオプティマス・プライムはサムを守ろうとして破壊されてしまう。サムはオプティマスを復活させるため、マトリクスを探してエジプトに向かう。
クライマックスはエジプトのピラミッドを舞台にしたアクション。ピラミッドがガラガラと崩れていく場面や多数のロボットが入り乱れた戦いを見せ、見応えはそこそこあるのだが、それまでにも巨大ロボット同士の戦いをさんざん見せられているため、驚きはない。ロボットの戦いとドラマにもっと緊密な結びつきが欲しいところだ。と、スケールはアップしていても、前回と同じような感想になってしまう。
パンフレットによれば、マイケル・ベイは007シリーズのようにアクション専門の第2班監督を置かず、アクション場面もすべて自分で演出するそうだ。アクションに自信があるのだろう。逆に言えば、だから全体を第2班監督が演出したような出来にしかならないのだ。あり得ないことだけれど、ベイはアクション専門にして、全体をスピルバーグが演出すれば、もっと面白くなるのではないかと思う。それと、サムの愛車カマロから変身するバンブルビーが別れの場面で膨大な量の水を流す場面など、僕には不要に思える。お茶目でユーモラスなこういうシーン、お子様と女性しか喜ばない。
このカマロもそうだが、この映画、前作に続いてGMが全面協力したそうで、大いにPRになっている。ツインズが変身する小型車シボレー・ビートは韓国のGM大宇(デウ)と共同製作し、今年発売される。国有化されたGM、これでトランスフォームできるか。