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シネマ1987online

ドリヴン

「ドリヴン」

シルベスター・スタローンが「クリフハンガー」以来8年ぶりにレニー・ハーリンと組んだカーレース映画。スタローンは製作・脚本も兼ねている。ただし、この脚本少しも面白くない。こういう映画の場合、挫折した主人公が再起をかける話に重点を置くのがポイント(「クリフハンガー」もそうだった)だが、スタローンにはそういう観点がないらしく、ここが実にいい加減である。その割に主人公と元妻の関係とか、若いレーサーとライバル、恋人の関係とかに時間を割いている。こういう部分、点景としてあれば十分。肝心のレース場面にもっと力を注ぐべきだった。事故の場面に頼るのではなく、レースの魅力を十分に伝える方向での演出が望ましかったと思う。ちょちょいのちょいとお手軽に作ったとしか思えない作品で、場面がすべて軽すぎる。レニー・ハーリン、今回は(も?)手を抜いたのに違いない。

世界各国を転戦して競うCART。今シーズンはベテランのボー・ブランデンバーグ(ティル・シュワイガー)と新人のジミー・ブライ(キップ・パルデュー)が接戦を繰り広げている。ジミーはシカゴのレースでボーの車に接触しリタイア。自信をなくしてしまう。チームのオーナー、カール・ヘンリー(バート・レイノルズ)はかつての仲間で花形レーサーだったジョー・ダント(シルベスター・スタローン)に支援を頼み、ジミーを優勝させようと計画。レース中の事故がもとで隠遁生活を送っていたダントは久しぶりにレースに復帰する。ここからダントがジミーのコーチとなって優勝に導くのかと思ったら、一応アドバイスめいたことは言うものの、ダント自身もレースに出て、競い合うのである。思えば、「ロッキー5」でもスタローンはコーチ役に徹するかと思わせて結局、自分も試合に出てしまった。あれに似た展開である。裏役に徹してしまっては主演の意味がないというわけか。しかし、このために映画は主人公が2人いるような変な感じになってしまった。加えてどちらの人物にもレースに勝たなければならないという切実さが欠けている。切実なのはむしろレース一筋に打ち込んでいるライバルのボーの方だろう。このあたりは脚本の計算違いと思う。

その上、ボーの恋人ソフィア(エステラ・ウォーレン)がボーと別れてジミーと付き合い、やはり忘れられずに再びボーの元へ帰るという、どうでもいいエピソードが加わる。ダントの元妻で今は別のレーサーと結婚しているキャシー(ジーナ・ガーション)の意地の悪さや、その夫メモ(クリスチャン・デ・ラ・フュエンテ)の人の良さなども描かれるが、こちらも本筋とはあまり関係がない。自暴自棄になったジミーとそれを追うダントが公道をレーシングカーで走り回るという場面もただ見せ物のためだけで、意味がない。こんな余計な要素を詰め込みすぎたためにレーサーの再起というテーマが完全にぼけてしまった。映画が軽い印象なのはそのためだ。こういう詰めの甘い脚本で映画を撮れば、失敗するのは目に見えている。

【データ】2001年 アメリカ 1時間57分 配給:日本ヘラルド映画 松竹
監督:レニー・ハーリン 製作総指揮:アンドリュー・スティーヴンス ドン・カーモディ ケヴィン・キング 製作:エリー・サマハ シルベスター・スタローン レニー・ハーリン 脚本:シルベスター・スタローン 音楽:BT 撮影:マウロ・フィオレ 衣装デザイン:メアリー・マクレオド
出演:シルベスター・スタローン バート・レイノルズ キップ・パルデュー ティル・シュワイガー ジーナ・ガーション エステラ・ウォーレン クリスチャン・デ・ラ・フュエンテ

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